ザ・インタープリター(2005年アメリカ)

The Interpreter

国連を舞台にしたアフリカ某国大統領の暗殺計画を知り、
命を狙われた女性通訳と彼女を警護することになったシークレット・サービスの駆け引きを、
ショーン・ペン、ニコール・キッドマンの2大スター初顔合わせで描いたサスペンス・アクション。

監督は残念ながら本作が遺作となってしまったシドニー・ポラック。

オリジナル劇場予告編を観る限りでは、なかなかエキサイティングな内容で面白そうだったんですけどね、
率直に感想を言わせてもらうと、映画の出来としてはかなり残念な結果となってしまいましたね。

DVDに収録されていた“もう一つのエンディング”に至っては、もっと酷い。
かなり辛らつな意見を言って申し訳ないけど、これは本編で採用しなくて良かったですね。
ただ、本編のエンディングもお世辞にも上手くまとめたとは言い難いですね。
シドニー・ポラックの映画としては異例なぐらい、ド派手な爆発シーンがあってビックリなのですが、
それ以外で強いて良かったのは、ニコール・キッドマン演じるシルヴィアがオートバイに乗って出掛けるのを、
市街地で追い回すシーンぐらいでしょうか。残りはあまり緊張感が持続しませんでしたね。

浮気した妻を交通事故で失い、
飲んだくれた毎日を送っていたシークレット・サービスを演じたショーン・ペンは好演ですが、
さすがに映画の出来がこうも芳しくないと、スクリーンの中で光り輝きませんね。

まぁ今まで通訳をメインに描いた映画って、ありそうで無かったので、
そういった意味では価値があったのかもしれませんね。もっと盛り上げて欲しかったけど。。。

それにしてもニコール・キッドマンの美貌にはビックリですねぇ〜。
ハッキリ言って、それだけでも観る価値があります(笑)。撮影当時、38歳とは正直言って、驚き。
おそらく生活管理もキチッとしてるんでしょうね...と、どうでもいいコトばっかり考えてしまいます(笑)。
でも、ホントに良い女優さんになってきましたねぇ。オスカーを獲ってから、更に磨きがかかってきています。

それにしても本作がシドニー・ポラックの遺作になってしまうとは、悲しいなぁ。
従来の映画界では国連内部をロケして撮影を敢行したことがなかったのにも関わらず、
突如として本作の撮影では、国連内部でのロケ撮影が許可されるという画期的な機会だっただけに、
シドニー・ポラックも色々と描きたかったことがあったはずだと思うんですよね。
かつて75年に『コンドル』というサスペンス映画の秀作を発表しているだけに、実績はありますからねぇ。

それにしても、映画の冒頭が凄い。
マトボの子供たちが廃墟となったスタジアムでライフルを持って襲撃しに来る。
これはいろんな意味で、よく話題にならなかったものだなぁと感心させられましたね。

映画はこのマトボの悲惨な政情を叩き台にあげているのですが、
ニコール・キッドマン演じるシルヴィアがマトボでゲリラに加わっていたという設定には無理を感じる。
これはハッキリ言って、致命的なミステイクでしたね。もっと、説得力のある設定にして欲しかったものです。
(シルヴィアが写っていた写真の数々は、まるで合成写真のようでした...)

まぁ最近のシドニー・ポラックの仕事となれば、余計な要素を盛り込んで、
映画をブチ壊す傾向が見られることがあったので本作もそれはそれで心配だったのですが(笑)、
映画の後半でシルヴィアとケラーのロマンスに転じるのかと思いきや、2人のロマンスには触れませんでした。
いや、これは正解でしたね。これで2人のロマンスまで描いていたら、完全に欲張った映画になっていました。
往々にして、様々な要素を取り込むなど、ジャンル的に欲張った映画というのは良かった例がありません。

この2人にロマンスの香りが生まれなかったのは、ケラーが妻を失ったばかりで、
ロマンスにまで発展するという展開にはかなり大きな無理があることを案じてのことだと思いますが、
失意の日々を送っているにしても、ケラーの...というか、ショーン・ペンの風貌があまりにキツい(苦笑)。
多少の役作りもあるでしょうが、なんか『ミスティック・リバー』あたりから、かなり老け込んできましたね。
ニコール・キッドマンとのツーショットは、さすがに調和するシルエットとは言い難いですね。
(別に美男である必要はないけど、チョット老け込みすぎた過剰な役作りだと思う・・・)

どの道、アクション映画としては弱い映画であることは明瞭でしたから、
もっとサスペンスで押すべきでしたね。中途半端に政治的なニュアンスも含め過ぎたと思います。

映画を構成する力という意味では、シドニー・ポラックは経験豊富なディレクターでしたから、
画面そのものに緊張感を持たせて、全体的な一貫性を持たせてサスペンスに徹して欲しかったですね。
少なくともシドニー・ポラックはそれだけのビジョンを持って、映画を撮れただけの力はあるだけに惜しいですね。

ナンダカンダ言って、僕はシドニー・ポラックの監督作の多くは観ている。
さすがにデビュー間もない頃のニューシネマ時代の監督作は観てない方が多いけど、
近年は映像作家としては、すっかり低迷していたとは言え、何かしらの期待は抱かせるディレクターでした。

まだ、あと2、3本は映画を撮って欲しかっただけに、彼の急逝が惜しまれます。

(上映時間128分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 シドニー・ポラック
製作 ティム・ビーヴァン
    エリック・フェルナー
    ケビン・ミッシャー
原案 マーチン・スティルマン
    ブライアン・ウォード
脚本 チャールズ・ランドルフ
    スコット・フランク
    スティーブン・ザイリアン
撮影 ダリウス・コンジ
編集 ウィリアム・スタインカンプ
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ニコール・キッドマン
    ショーン・ペン
    キャサリン・キーナー
    イェスパー・クリステンセン
    イヴァン・アタル
    アール・キャメロン
    ジョージ・ハリス
    マイケル・ライト