インターンシップ(2013年アメリカ)

The Internship

倒産した会社でセールスマンとして働いていた2人の中年男性が
起死回生とばかりに、Googleのインターンシップとして働き、周囲の大学生と一緒になって
限られたGoogleの正社員の枠を勝ち取ろうとする姿を描いた、ヒューマン・コメディ。

監督はコメディ映画を中心に活動しているショーン・レヴィですが、
確かにヴィンス・ヴォーンが主導的に動いていた企画であり、Googleが実在の企業であるからこそ、
描きづらかっただろうとは推測されますが、映画の出来としては今一つな仕上がりで、
着想点の面白さも考慮すると、何故、日本劇場未公開作だったのか疑問ではありましたが、
本編を観てみると、その扱いの悪さも、なんとなくではありますが、納得できる部分がある作品ですね。

Googleが実際にどんな会社なのか、その内情まで知らないので、
あまり偉そうなことは言えませんが、一つ感じるのは、Googleという会社のコマーシャリズム。
これはチョットあざといなぁと感じるぐらい強いインパクトを持っていて、作り手ももっと考えて欲しかったぐらい。

せっかく、映画化するという意味では、良い企画だったと思えるのですが、
どうにもGoogleの広告宣伝の要素が強く入っている視点な気がして、僕は純粋な気持ちで映画を観れない。

そら、勿論、Googleをここまでクローズアップしているのですから、
多少なりとも、広告宣伝の要素が入ることは明白だとは思うんですが、それらがあまりに露骨過ぎる。
それが“グーグリネス”と呼ばれる、Googleのユニークな会社思想だと感じているのですが、
個人的には“グーグリネス”の存在自体は良いけれども、映画の軸には持ってきて欲しくはなかった。
これって、Googleという企業の大きな理念であり特長なんだけれども、あまりに“グーグリネス”を強調し過ぎると、
しつこく「Googleは他の企業とは違うんですよ。単に技術立社ではなく、人と情報をつなぐんですよ」と
主張しているようで、それはそれで正しいのかもしれないけど、Googleの宣伝のようで少しあざとく感じる。

おりしも、遅れて日本で大人気アプリのインスタグラムの話題など、
日本では2014年に日本語アカウントが発行されたので、本作では先取りして語られている。

個人的に本作では、インターンシップというテーマに注力して欲しかった。
これでは本作の正しいタイトルはGoogleだ。インターンシップそのものに言及した内容とは言い難い。
そもそもインターンシップそのものは、多くの企業で導入されている制度なので、日本でも馴染み深いでしょう。
それがどちらかと言えば、Googleの広告宣伝映画のようになってしまっていることが残念でなりません。

ヴィンス・ヴォーン自身、主演だけではなく、本作自体のプロデュース、及び脚本の執筆まで行っており、
一体どこまでGoogleに関係があるのか、よく分かりませんが、今回の企画自体のスポンサーのようですので、
こういう内容になってしまうこと自体は、仕方がないことなのかもしれないが、ここはどうにかして欲しかった。

今はどこの企業でも、多かれ少なかれ“多様性(ダイバーシティ)”を重要視する時代です。
だからこそ本作のGoogleで描かれた“グーグリネス”自体も、別に特殊なことではないと思うのですが、
殊更、強調して描くあたりが、企業アピール以外の何物とも思えないのは、僕がひねくれ者だからでしょうか?(笑)

それと、もう一つ気になるのは、全体的に詰め込み過ぎた内容になってしまったこと。
そのせいか、やたら足早にエピソードが過ぎ去っていく割りに、映画が冗長な印象を残してしまう。
ここは映画全体を通して、どこか上手くいっていないからこそ、陥ってしまった落とし穴かもしれません。
2時間ジャストの尺の長さであったにも関わらず、それ以上の長さがあるように感じられてしまうかもしれません。

そういう意味では、オーウェン・ウィルソンの喜劇役者としての持ち味が生きた映画かと聞かれると、そこは疑問かな。
勿論、彼だけの問題ではないと思うのですが、本来の魅力がある作品というには語弊があるかもしれません。

映画の中盤で、インターンたちにプログラム上のバグを見つけるように課題が出たとき、
チーム分けされたインターンたちが次々と課題に取り組む中で、ヴィンス・ヴォーンとオーウェン・ウィルソンが
次から次へと訳の分からないことを言い出して、明らかに課題への答えとは遠い方向へ勝手な推測を始め、
彼らと同じチームのインターンの若者たちも、「邪魔しないで!」と憤慨するシーンは何故か可笑しかった。

ああいう、シュールなギャグをかます方が、オーウェン・ウィルソンらしいという気がしますね。
本音を言えば、ああいうテンポの良いシーンをもっと数多く観たかったですね。映画が生き生きとしてきます。
ところが本作はテンポの良さが長続きしない。だからこそ、映画全体がどことなく冗長なものに感じられたのでしょう。

それと、オーウェン・ウィルソン演じるニックがGoogleの女性社員をクドこうとしますが、
このエピソードもハッキリ言って、悪い意味で中途半端。映画を盛り上げる術にもなっていないし、
せっかくレストラン・ディナーに誘ったシーンを描いても、最終的に特に大きな意味を持たせられていない。
こういう部分が結果として、無駄なものになってしまっていて、映画を最後まで引き締めることができなかったですね。

監督のショーン・レヴィは00年代からコメディ映画を中心に創作活動を展開してますが、
キャリアの長さの割りに、手掛けた作品数は多いけれども、まだ決定的なヒット作は生み出せていない印象ですね。

本作を観ていて、凄く気になったのはタイトルにもなっているインターンシップの在り方ですね。
まぁ娯楽映画だし、細部にこだわる必要はないのだけれども、昨今、日本でも定着しつつある、
インターンシップ制度って、あくまで大学卒業や大学院修了を前に、自らの職業選択のために短期就職をして、
仕事とは何かについて考える時間が与えられる制度という捉えをしていたのですが、本作で描かれた、
Googleのインターンシップ制度は、あくまで正社員雇用を勝ち取るための課題そのものであり、
これって、ほぼ入社試験と同じことであることが、僕の中ではずっと気になって仕方がなかった。

本場アメリカのインターンシップ制度の実情までは分かりませんが、
もし本作で描かれたことが現実であるとしたら、かなり厳しい現実ではありますね。
日本企業で採用しているインターンシップ制度の在り方とは、大きく異なる感覚ではあると思います。

但し、この辺りはヴィンス・ヴォーンらの脚色もあるのかもしれません。
「結局、チームの結束力を高めるためには、“飲みにケーション”しかないよね」と言わんばかりの描写もあり、
思いのほか古臭いというか、日本的なニュアンスもある作品ではあるので、どこまでアメリカの企業の現実が
反映された映画なのかまでは分かりません。そういう意味で、本作に説得力は無かったのかもしれません。
本来的には、それが現実ではないにしろ、観客にこれが現実であると納得させられる力があるべきだと思うからです。

あまり強くオススメはできませんが、IT企業のリクルートに興味がある人なら、観て損はないかもしれませんね。

(上映時間119分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 ショーン・レヴィ
製作 ヴィンス・ヴォーン
   ショーン・レヴィ
原案 ヴィンス・ヴォーン
脚本 ヴィンス・ヴォーン
   ジャレッド・スターン
撮影 ジョナサン・ブラウン
編集 ディーン・ジマーマン
音楽 クリストフ・ベック
出演 ヴィンス・ヴォーン
   オーウェン・ウィルソン
   ローズ・バーン
   マックス・ミンゲラ
   ディラン・オブライエン
   ティア・シルカー
   アーシフ・マンドウィ
   ジョン・グッドマン
   ウィル・フェレル