セイブ・ザ・ワールド(2003年アメリカ)

The In-laws

79年にピーター・フォークとアラン・アーキンの顔合わせで映画化された、
『おかしなおかしな大作戦』をマイケル・ダグラスとアルバート・ブルックスの共演でリメーク。

まずまずお金をかけて製作された作品だと思うのですが、
いざ観てみると、何故、全米で大ゴケし、日本でもアッサリと足早に劇場公開が終了したのか、
その理由がよく分かったような気がしました。コメディ映画として、ひじょうに中途半端なのです。

そりゃ、この映画にはこの映画なりの楽しみ方があって、
これはこれで面白味があることは認めますが、いずれにしてもこのタイプの映画は日本ではウケません。
事実、アメリカでもウケなかったということは、少なくとも売れ線の映画ではないということ。

個人的には、この映画、もっとアナログな感じで描いた方が良かったと思う。
中途半端にアクション・シーンにもCG使ったりして、見た目をド派手にしたことが逆効果。
本来的にはオリジナルでは、主演コンビの掛け合いを中心に映画を構成していただけに、
中途半端にアクション・シーンに力を入れてしまったことが、逆に主演コンビの掛け合いを相殺しています。
おそらくプロダクションにとっては、当然の選択だったのだろうとは思いますが、
本来的にオリジナルが持っていた良さを、もっと的確に判断できていれば、映画は大きく変わっていたはずです。

結果的にせっかくマイケル・ダグラスとアルバート・ブルックスの共演だったのに、
ジャン=ピエールを怪演したデビッド・スーシェが一番目立ったというのは、何だかフクザツですね(苦笑)。
(ちなみにこのデビッド・スーシェ、TVシリーズ『名探偵ポワロ』でポワロを演じておりました)

主人公スティーブの元妻ジュディとして出演していたキャンディス・バーゲンも、
思い切ったことを言えば、別に彼女でなくとも演じられそうなチョイ役扱いで、チョット残念でしたね。

もうチョット、この辺は...作り手がしっかりと制御しなければなりません。
オリジナルが持っていた映画の良さと、キャスティングの機能的な活用というキーワードが、
ほぼ完全に抜け落ちてしまったような感じで、残念ながらこれではアイデアに依存した映画と言わざるをえない。

確かに本作はリメーク作ですから、それなりにリメークすることの意味を持たせるべきだと思うし、
オリジナルのコピーをする必要はないと思うけど、オリジナルの良さを完全否定してしまうような作りだと、
オリジナルに対する敬意や敬愛を感じさせるリメークにはならないと思うんですよね。

この手の映画は、追いつ追われつの関係が映画を楽しくさせるための定石だと思うのですが、
CIAを名乗るニセのエージェント疑惑がかけられるスティーブに対し、彼が企む取引や取引相手を狙う
FBI捜査官の描写があまりにいい加減で、さすがにこれでは映画の興を削いでしまいますね。
あくまでコメディ映画ですから、あまり細かい部分にはツッコミたくありませんが、
それでもエレベーターのボタンでFBIがドタバタ騒動起こしたり、女装写真で手足を出せなくなったりと、
もう少しシナリオの段階で安直な発想を練り直して欲しかったですね。これでは、まるでFBIはおバ●さんです。

これをチープな笑いのセンスと解釈するか、スベったギャグと解釈するかによっても、
また大きく評価の分かれるところではありますが、僕にはどうしても後者としか思えない(苦笑)。

もう、こうなってくるとデビッド・スーシェとキスシーンまでやらされた(笑)、
花嫁の父ジェリーを演じたアルバート・ブルックスのドライなユーモアを活かしたギャグの数々も、
恐ろしく空振りしまくるから、ハッキリ言ってしまえば、アルバート・ブルックスは一番の犠牲者かもしれない(笑)。
(まぁ彼の場合は、これが元々の芸風でもあるから、一概に犠牲者とも言い難いかもしれないけど・・・)

そんな中で、主演のマイケル・ダグラスだけが一人楽しそうにしているのも不思議。
彼のコミカルな芝居と言われれば、89年の『ローズ家の戦争』を思い出すけど、
本作はもっとコテコテのコメディ演技が求められるので、彼にとってはハードルが高かったかもしれません(笑)。
なんとなく観ていて、彼だけが終始、異様に高いテンションで芝居しているような気がしてなりませんでした。

まぁ良いところを観れば、
ポール・マッカートニー&ウィングス≠フ『Live And Let Die』(007/死ぬのは奴らだ)を
映画の冒頭のアクション・シーンで再び採用し、スパイ映画の雰囲気を吹き込んだのは嬉しい。
確かに前述したように、中途半端にド派手にしたアクション・シーンが映画の面白さを削いでるけど、
一方で音楽の使い方に関しては、ベタだけど悪くはなかったと思う。
(まぁ選曲はマイケル・ダグラスの趣味による影響が強かったかもしれないけど...)

たいへん申し訳ない言い方だけど、
もうチョット、撮影現場での創意工夫が欲しかったところだし、オリジナルの研究も徹底して欲しかった。

たぶんに改善点が容易に散見される内容なだけに、
もうチョットどうにかならなかったものかと思えて仕方がありません。
キャスティング自体は悪くないし、映画を撮る土台はしっかりとあるだけに、チョット勿体ないことをしています。

映画自体はコンパクトでモタモタする部分が皆無なだけに、
演出面でのチグハグさが解消されれば、そこそこの快作になっていた可能性はあります。
うーーーん...勿体ないなぁ〜。。。

(上映時間97分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 アンドリュー・フレミング
製作 ビル・ガーバー
    エリー・サマハ
    ジョエル・サイモン
    ビル・トッドマンJr
脚本 ナット・モ−ルディン
    エド・ソロモン
撮影 アレクサンダー・グラジンスキー
音楽 クラウス・バデルト
    ジョン・パウエル
    ジェームズ・S・レヴィン
出演 マイケル・ダグラス
    アルバート・ブルックス
    ロビン・タニー
    ライアン・レイノルズ
    キャンディス・バーゲン
    マリア・リコッサ
    リンゼイ・スローン
    デビッド・スーシェ