エクスペンダブルズ(2010年アメリカ)

The Expendables

こういうのを観ると、やっぱりスタローンはビジネスマンだなぁと思う。

スタローン自身が監督して好き放題に撮れたのだろうけど、
スタローンのお友達であるアクション映画のスターを総動員して、筋肉マッチョなアクション映画好きな人が
観たいであろう要素をかき集めまくって、スゴい贅沢な映画に仕上げましたね。これは夢の企画と言っていいと思う。

シュワちゃんとスタローンの同一シーンの共演というだけでもスゴい企画ですが、
00年代にアクション・スターになったジェイソン・ステイサム、アジア系アクション・スターのジェット・リー、
そして『ロッキー4/炎の友情』でドラゴ役でスタローンとやり合ったドルフ・ラングレンをヤク中のトラブルメーカーとして、
00年の『追撃者』で対決したミッキー・ローク、94年の『スペシャリスト』で共演したエリック・ロバーツも出演している。

これらはほぼスタローンの人脈が為したワザと言っていいと思うのですが、
この他にもスティーブン・セガールや、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ウェズリー・スナイプスにもカメオ出演の
オファーがあったようですが、諸事情によって実現しなかったようで、ホントにオールスター映画にしたかったのでしょう。

ただ、これが90年代であれば超ド級のスター映画として世界的にも大ヒットしたでしょうが、
さすがに実現したのが2010年でしたから、ほぼB級映画のような扱いを受けてしまったように思いますね。
まぁ・・・商業的にはヒットしましたけど、2010年という時期だったからこそ、実現した企画だったのでしょう。

スゴく面白い映画かと言われると、少々微妙なところではありますが(苦笑)、
とにかくみんな鍛え上げた肉体を強調するファッションで、昔流に言う“ヤンチャ”なところがあって、
美女にモテモテ、腕っぷしは超一流、ドライビング・テクニックも体幹も素晴らしいというアクション・スターを体現している。
これはスタローンが自分で演じ続けたいアクション・スターとしての実像を追求し続けている証拠なのかもしれません。

これをカッコいいと感じるかは人それぞれだけど、スタローン自身の憧れではあるのでしょうね。

そして、アクション・シーンの見せ場をジェイソン・ステイサム、ジェット・リーと
まるでスタローンと交代しながら展開するように、順番に作っていくのが印象的でまるで契約で決まっているかのようだ。
ここまでいくと様式美というか、感覚的には“お子様ランチ”のような映画に近いですね。おいしいところだけって感じ。

その中では、命からがら飛行機を操縦して逃げるスタローンとジェイソン・ステイサムが、
再び港湾地区を襲撃しに行くシーンは見応え十分。操縦席から床下を介して、銃が装備されている飛行機の先端に
行くという荒唐無稽なシーンではありますが、そこから始まる破天荒なアクションはなかなか面白かった。
こういうことが出来るのも、やっぱりスタローンが自分でシナリオを書いて、自分で監督したからかもしれません。

ちなみに本作の原題は、日本語に直訳すると「消耗品」ということになるようです。
これって、スタローンなりに皮肉が込められているような気がして、スタローン自身のようなスターのことを
意味しているのか、それまではプロダクションの介入が激しくて、好き放題に映画を作ることができない、
クリエーターとしての苦悩を「消耗品」という言葉に集約しているのかもしれません。そして、肉体を酷使します。
相変わらずスタローンも撮影当時60歳を超えているとは思えないほどに、若々しくアクションをこなします。

さすがにミッキー・ロークは一緒になってアクションには参加しませんし、
シュワちゃんもブルース・ウィリスもチョイ役なので、1シーンに登場するだけでアッサリ退場してしまいます。
つまり、本作はスタローンが自分のやりたいことだけを凝縮して、仲のいい仲間たちと一緒に撮った企画ということです。

若いときなら考えも違って、スタローンも多様な意見を尊重するところはあったかもしれないし、
例えばCGやVFXを使ったアクション・シーンを交えたかもしれませんが、逆に年老いたことで吹っ切れたというか、
自分のやりたいように価値観を共有できる人とのみ一緒に仕事すると、開き直った部分があるのかもしれませんね。

よっぽど楽しかったのか、本作がそこそこヒットしたせいもあってか、
本作は第3作まで製作されましたし、その続編でもヴァン・ダムやチャック・ノリスら往年のアクション・スターを集めました。
(本作が大変だったのか、さすがに第2作以降は自らメガホンを取ることはありませんでしたが・・・)

凄く単純な映画であって、複雑なストーリーや人間模様など皆無ではありますが、
個人的にはこの手のタイプの映画には、余計なヒネりはいらないと思うし、この程度の物語で十分だとは思う。

ただ、欲を言えば悪役はもうチョットと強い存在であって欲しかった。
てっきりスタローン演じる主人公の近くに敵に内通するスパイがいるのかと思いきや、そうとも言い切れず、
悪党は主人公らの情報を正確に把握し切れてはいないので、スタローンが自らの人脈を使いに使って、
選りすぐりのアクション・スターを大挙して集めたというのに、肝心かなめの悪党どもがハッキリ言って弱い。

いや、弱過ぎる・・・。これで倒し甲斐の無い悪党にしかすぎず、どうにも映画が盛り上がらない。
やっぱり悪党にも、超ド級のビッグネームが欲しかったなぁ。エリック・ロバーツはただ小ズルそうというだけですからね。
屈強なマッチョか、トンデモない悪知恵のはたらく大胆な悪党だったり、もっと主人公を苦しめる手強い相手にして欲しい。

まぁ、観る前から結末が分かる映画ではあるので(笑)、
だからこそ尚更のこと、悪党に散々苦しめられながら、圧倒的不利な状況に置かれながらも、
なんとかして、その苦境を脱して悪党を成敗しに行くという、まるでロッキーのような不屈の精神を見せて欲しい(笑)。
スタローンも年齢を重ねたので、そういう役を演じ続けるのは、私たちが想像している以上にキツいのかもしれませんが。

ストーリーの下地にあるものは、スタローンがかつて出演した映画の焼き直しのようなものだ。
ハッキリ言って、目新しいものはなく、どこか既視感がある。演じるのも同じくスタローンなので、尚更のこと。
ある意味ではセルフ・パロディですけど、唯一違うのは、大勢の仲間たちと和気あいあいとやっているということだ。
しかも、今のようなポリティカル・コレクトネスの時代には賛否がありそうなシーンが、あったりするのもスタローンっぽい。

例えば、ジェイソン・ステイサム演じる傭兵リーの恋人が、長期間リーが留守にする寂しさから
新たな恋人を家に入れているのですが、その女性に暴力をふるっていることを悟ったリーが男のところへ
乗り込んで行って、女性の目の前で男の仲間もろともボコボコにやっつけてしまうという暴力沙汰を起こしても、
この女性はリーのバイクに乗って去って行く。普通だったら、「もう(暴力は)やめてよ!」と激怒してもおかしくない。

それを文字通り、「目には目を。歯には歯を」と言わんばかりの実力行使に出て、
まるで私刑を肯定するかのように描いてしまうあたりは、スタローン流のファンタジーという気がします。

スタローンとシュワちゃんの本格共演は『大脱出』で実現したのですが、
せっかくの機会なのでブルース・ウィリスとも本格的な共演が観たかったなぁ。本作もカメオ出演ですしね。
(シュワちゃん、スタローン、ブルース・ウィリスと言ったら、僕が映画好きになった頃の3大アクション・スターでした)

スタローンは本作のプロモーションで来日した際のインタビューで、
本作は『七人の侍』を参考にしているとコメントしていたようですが、これは僕はリップサービスだと思います。
スピルバーグが映画を撮影する前は、必ず彼が敬愛する『アラビアのロレンス』を観ると言っているのと、
ほぼ同じレヴェルの発言であり、参考にしてもらえるのは嬉しいですが、そこまで似ているコンセプトではありません。

これはスタローンの人徳を象徴する映画ですね。普通はこんなに集まらないですよ。
いくら全盛期を過ぎたアクション。スターばかりとは言え、ギャラだけでも大変なことになる企画ですからね。

個人的にはミッキー・ロークにも闘って欲しかったなぁ。勿論、“猫パンチ”で(笑)。

(上映時間103分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

日本公開時[R−15+]

監督 シルベスター・スタローン
製作 アヴィ・ラーナー
   ジョン・トンプソン
   ケビン・キング・テンプルトン
原案 デビッド・キャラハム
脚本 シルベスター・スタローン
   デビッド・キャラハム
撮影 ジェフリー・キンボール
編集 ケン・ブラックウェル
   ポール・ハーブ
音楽 ブライアン・タイラー
出演 シルベスター・スタローン
   ジェイソン・ステイサム
   ジェット・リー
   ミッキー・ローク
   ドルフ・ラングレン
   エリック・ロバーツ
   ランディ・クートゥア
   スティーブ・オースティン
   デビッド・ザヤス
   ジゼル・イティエ
   カリスマ・カーペンター
   ゲイリー・ダニエルズ
   ブルース・ウィリス
   アーノルド・シュワルツェネッガー

2010年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(シルベスター・スタローン) ノミネート