エクソシスト(1973年アメリカ)

The Exorcist

ウィリアム・ピーター・ブラッティ原作の人気小説を映画化したオカルト・ショッカーの金字塔。

『フレンチ・コネクション』でいきなりオスカーを獲ってしまったウィリアム・フリードキンが
彼の特徴であるドキュメンタリー・タッチのスタイルを取り入れ、映像化困難と思われていた企画を
見事なまでに具現化させることに成功しました。大袈裟な言い方かもしれませんが、これは革命的な映画です。

製作当初、ウィリアム・フリードキンがどう考えていたかまでは分かりませんが、
この映画はあくまで「映画はエンターテイメントである」と前提した上で、
映画にアトラクション性を持たせ成立させた最初の映画であると言っていいと思います。

そんなアトラクション性を象徴するのは、悪魔に取りつかれた12歳の少女リーガンが
悪魔に肉体を支配され、ベッドの上でドンドン、ドンドンと突き上げられ、跳ね上がるシーンに出ていますね。

本作に対するウィリアム・フリードキンの意気込みはそうとうなものだったと予想できますが、
今の映画界のような多額の資金や、高い技術力を約束されていたわけではなく、
作り手たちの工夫が必要不可欠な時代だった中で、映画にこれだけのアトラクション性が生きていることは、
特筆に値する事実であると言っていいと思いますね。これだけでも本作は十分に価値があります。

あくまでホラー映画であることから、ショック描写にも余念がないのですが、
その中でも本作は光の使い方が絶妙に上手いですね。暗がりの中でのアップショットや、
唐突に挿入される悪魔のイメージ・カットなど、今の映画界では使い古された手法の多くが、
この映画で初めてスタンダードとなったと言っても過言ではありません。
本作以前のホラー映画と見比べてみれば、その差は歴然であり、本作の優位性が分かりますね。

ホントに凄いですね、この時代のウィリアム・フリードキンは。
70年代の彼の仕事だけに限定すれば、彼は真の天才だったと思いますね。

まぁ何本か続編が製作されており、各々、それらが魅力的なことは認めますが、
あくまで『エクソシスト』は本作で完結していると考えたいですね。続編はあくまで番外編にしかすぎません。
と言うのも、続編の多くが悪魔との対決がメインになっているんですよね。
言わば、これってアクション映画的な発想であり、何本も続編が出てしまうと魅力が落ちますね。

あくまで本作の目的って、「如何に観客をビックリさせるか?」ってことだったと思うんですよね。

そういう意味で本作は70年代ジェットコースター・ムービーだったと思うんです。
ウィリアム・フリードキンって、当時は映像作家としてパイオニア的存在だったと思いますね。
だからこそ、80年代以降の彼の創作活動の低迷が残念でなりませんね。。。

ちなみに00年に『エクソシスト/ディレクターズ・カット版』として未公開シーンを約15分追加して、
リバイバル上映され全世界的にヒットとなりましたが、この未公開シーンに関しては、
映画の宣伝文句で「製作当時、あまりに怖すぎるとしてカットしたシーンを追加した」と煽ってましたけど、
オリジナルと見比べてみれば、この宣伝が如何に適当なことを言っていたか実感できます。

何故、一連の未公開シーンが編集段階でカットになったかって...
それは明らかに無駄だからなのです。話題となった、“スパイダー・ウォーク”もインパクトは絶大ですが、
明らかに無くとも、映画の本筋に影響を与えない無駄なシーン演出であったかが分かると思います。

それに付随して、『エクソシスト/ディレクターズ・カット版』が日本で公開される直前、
何故かウィリアム・フリードキンの注文が入ったとして、劇場公開が無期限延期になりましたが、
これもおそらく最初から予定されていたパフォーマンス的なものだったとしか思えません。
確かにそういう不可解な行動をとってもウィリアム・フリードキンという人は何ら不思議はありませんが(笑)、
そういうところで話題性を持たせようという、マーケット・リサーチだったのではないでしょうか。

オリジナルは劇場公開されるや否や、世界各国で話題となり大ヒットとなりました。
今となってはオカルト・ホラーの名作の一つに数えられておりますが、
公開当時はアカデミー賞の最有力候補だったそうで、授賞式当日に『スティング』に敗れた時は、
受賞を有力視されていただけあって、スタッフ一同が愕然としたそうです。

まぁそう確信させるぐらい、本作はひじょうに良く出来ていますね。
僕も仮に製作当時にリアルタイムでこの映画を観ていたら、文字通り、度肝を抜かされていただろうと思います。

リーガンを演じたリンダ・ブレアがベッドの上でトンデモないことになるだけで凄い映画なのに、
これだけのジェットコースター・ムービーが今から30年以上も前に誕生していたという事実にも驚かされます。
『フレンチ・コネクション』、本作と手がけていたウィリアム・フリードキンが80年代以降、
一気に低迷してしまうとは、一体、当時は何人予想していたことでしょう?

どうでもいい話しなんだけど、メリン神父を演じたマックス・フォン・シドーって、まだ生きてるんだぁ(09年現在)。
本作撮影当時43歳という実年齢だった割りには、映画の冒頭のイラクでのシーンをはじめに、
本作ではかなりの老け役に挑戦したということなんですね。本作でのメリン神父はかなりの高齢に見えます。

とっても主演のエレン・バースティンと実年齢が3歳しか違わないなんて、思えませんね(苦笑)。

(上映時間117分)

私の採点★★★★★★★★★★〜10点

監督 ウィリアム・フリードキン
製作 ウィリアム・ピーター・ブラッティ
原作 ウィリアム・ピーター・ブラッティ
脚本 ウィリアム・ピーター・ブラッティ
撮影 オーウェン・ロイズマン
編集 ノーマン・ゲイ
    エヴァン・ロットマン
音楽 マイク・オールドフィールド
    ジャック・ニッチェ
出演 エレン・バースティン
    リンダ・ブレア
    マックス・フォン・シドー
    リー・J・コッブ
    ジェイソン・ミラー
    キティ・ウィン
    ジャック・マッゴーラン
    ウィリアム・オマリー

1973年度アカデミー作品賞 ノミネート
1973年度アカデミー主演女優賞(エレン・バースティン) ノミネート
1973年度アカデミー助演男優賞(ジェイソン・ミラー) ノミネート
1973年度アカデミー助演女優賞(リンダ・ブレア) ノミネート
1973年度アカデミー監督賞(ウィリアム・フリードキン) ノミネート
1973年度アカデミー脚色賞(ウィリアム・ピーター・ブラッティ) 受賞
1973年度アカデミー撮影賞(オーウェン・ロイズマン) ノミネート
1973年度アカデミー美術監督・装置賞 ノミネート
1973年度アカデミー音響賞 受賞
1973年度アカデミー編集賞 ノミネート
1973年度ゴールデン・グローブ賞作品賞<ドラマ部門> 受賞
1973年度ゴールデン・グローブ賞助演女優賞(リンダ・ブレア) 受賞
1973年度ゴールデン・グローブ賞監督賞(ウィリアム・フリードキン) 受賞
1973年度ゴールデン・グローブ賞脚本賞(ウィリアム・ピーター・ブラッティ) 受賞