ドリーム・チーム(1989年アメリカ)

The Dream Team

確かに凄く出来が良いってわけじゃありませんが...
比較的、良心的な作りで、そこそこ楽しめる要素のあるコメディ映画と言っていいと思います。

映画はニューヨーク郊外の精神病院に入院する4人の患者たちが、
ワイツマン医師のグループに入り、ワイツマンが野球観戦に連れて行くことから動き始めます。

急にトイレを催した患者のためにビルの裏手口に行った際にワイツマンが、
警察官殺害事件に巻き込まれ、意識不明の重体に陥ってしまったがために、
バスに残っていた患者たちは数時間、放置されてしまい、夜になっても戻ってこないことから、
患者たちは夜のニューヨークの市街地へと繰り出し、リーダー格のビリーは恋人に会いに行きます。

ところが、いつしか警察官殺害事件の犯人として指名手配され、
その事実を知った彼らは、自ら真犯人を突き止めようと動き始めるのですが、
警察官殺害事件の真犯人が記憶を取り戻しそうなワイツマンを暗殺しようと接近してきます・・・。

あまりヒットした作品ではありませんが、
80年代はこの手のコメディ映画が多かったせいか、ヒット作も少なくはなく、
本作のような比較的、規模の小さなコメディ映画でも、しっかりと日本で劇場公開されています。

おりしも主演のマイケル・キートンは、
『ビートルジュース』や『バッドマン』など話題作への出演が相次いでいた頃の出演作であり、
おそらく日本でもそこそこの扱いを受けての公開だったのでしょうが、その中では比較的、地味な作品だ。
とは言え、コメディ映画としては最低限の役割をキッチリ果たした作品であり、安定感はありますね。

但し、この映画の大きな難点はこのマイケル・キートン演じるビリーの役柄で、
精神科に入院している虚言癖のある患者とは言え、少々、鋭過ぎる気がする。
精神的にも肉体的にもツラい診療を受けているはずで、その影響があってもおかしくはないのですが、
精神的な疾患を抱えているとの前提にしては、あまりに鋭過ぎる点で、若干、説得力に欠けることは否めない。

もっとも、この映画で特に良かったのは、
精神科医気取りのヘンリーを演じたクリストファー・ロイドだろう。

お馴染み、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのドク役で知られる役者なのですが、
常に医師のように白衣を着用し、チームに所属するメンバーを一人一人、回診するかのように誘い集め、
チームのメンバーを部屋に案内するものの、気の短いビリーが彼の官僚的な振る舞いに苛立ちを覚える。

てっきり、ここまで堅物な医者がチームの破天荒な患者たちに手を焼く映画なのかと思いきや、
実はヘンリー自身もチームのメンバーの一人で、つまり入院患者だったというギャグも面白い。

それと、もう一人、会社経営である程度の実績を上げた中年男を演じたピーター・ボイルで、
映画の冒頭から、何かと脱ぎたがるのが面白かったが、その衝動を抑えられず、
ここぞとばかり大勢の前で“救世主”のフリして全裸になろうとしたシーンが、悪ノリ調で面白かったですね。

ピーター・ボイルって、晩年は01年の『チョコレート』で差別主義者を演じたりして、
シリアスな芝居でも強烈な印象を残していましたが、こういうコメディ映画でも活躍できる、
実に器用な役者ですね。本作でも、名バイプレイヤーぶりをいかんなく発揮しております。
やはり、こういう脇役キャラが活躍できる環境にある映画ってのは、良いですね。

監督は『プライベート・ベンジャミン』のハワード・ジーフ。
派手さはありませんが、独特なユーモアを交えて、実に堅実な映画作りのように感じます。

しかし、この映画の押し負けてしまうのは、この冒険の無さが問題なのかもしれません。
欲を言えば、もう少し派手な部分があっても、いい映画かなぁとは思いましたねぇ。
せっかく丁寧に作られた良い映画なのですが、これといった決め手に欠ける作品というのは、少し勿体ない。
(やはり、もう少しドッカン!と派手に笑わせてくれるシーンがあっても良かったかなぁ〜)

確かに部分的にはヘンリーがしばらく会っていなかった妻子に会いに行くエピソードなど、
心惹かれるシーンはあるけれども、コメディ的なシーンに爆発力が無かったのは、寂しいかなぁ。

まぁこれがハワード・ジーフの良心と言えば、それまでなのだけれども・・・
全体的にコミカルなシーンが続くために、そのコミカルなシーンにも起伏を作って、
この映画の名シーンと呼べるシーンを作って欲しかったと思いますね。
本作には残念ながら、ここぞ!と呼べるほどのシーンが存在しておらず、これは寂しいなぁと感じるのです。

それと、もう一点ですね。
いつも面倒ばかり持ち込むビリーに、何故、そこまでガールフレンドが我慢できるのか、
そりゃあレストランで質(たち)の悪い男たちに絡まれてるのを助けたとは言え、
警察に殺人事件の犯人として逮捕されても、彼らを助けようとする、その気持ちに至ったのか、
やや不明瞭な形で描かれているのも、この映画の納得性に弱みを作る原因となっているかな。

まぁこの辺まで、キッチリ、ケアできればハワード・ジーフはもっと評価されたのだろうけど、
実に惜しいところまで頑張った作品と思えるだけに、実に勿体ないと感じます。

まぁ・・・こういうのを空っぽな映画と評する人もいるのだろうけれども、
僕は決して、本作を空っぽな映画だとは思わないし、気軽に楽しめるコメディ映画だと思いますよ。
如何にも80年代の空気を捉えた映画ではありますが、今となってはこういう空気が懐かしい。

(上映時間112分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ハワード・ジーフ
製作 クリストファー・W・ナイト
脚本 ジョン・コノリー
    デビッド・ルーカ
撮影 アダム・ホレンダー
音楽 デビッド・マクヒュー
出演 マイケル・キートン
    クリストファー・ロイド
    ピーター・ボイル
    スティーブン・ファースト
    デニス・ボウトシカリス
    ロレイン・ブラッコ
    フィリップ・ボスコ
    ミロ・オーシャ
    マイケル・レンベック