ドア・イン・ザ・フロア(2004年アメリカ)

The Door In The Floor

うーーーーーん...何度観ても、やっぱりよく分からない(苦笑)。

映画はよくあるタイプのお話しではあるのですが、
内容的には70年の『おもいでの夏』を思い出させるような感じで、年上女性との恋を描きます。

裕福な家庭に育ち、幼い頃から作家を志す青年エディが学校の夏休みを利用して、
海辺の町に暮らす児童文学作家テッドのアシスタントとしてアルバイトを始めるところから映画が始まります。
4歳の娘ルースを育てているものの、2人の成人直前だった息子を交通事故で失った過去がある、
テッドと彼の妻マリアンは未だにその心の傷が癒えず、ついに彼らは夏の間、別居に踏み切っていた。

原作はジョン・アービングで、如何にも彼が書きそうな題材ではありますが、
本作で最も大きな話題となったのは、女優グレッチェン・モルの実生活での旦那である、
トッド・ウィリアムズが監督デビューしたことで、劇場公開時は称賛されていました。

けど、正直言って、僕はこの映画の良さってイマイチよく分からないし、
この映画でのトッド・ウィリアムズの演出って、そこまで良かったかなぁ?(苦笑)

映画の着眼点としても、過去にありふれた内容だったし、
目覚しい展開やシーン演出があるわけでもなく、個人的には表層的な内容に映ったのが気になりましたね。
正直言って、もっと彼らの愛憎に肉薄できたはずだし、どことなく散漫な映画に仕上がってしまった気がします。

どことなく映画全編で、何とも言えない喪失感を感じさせるのですが、
あまりに感情の起伏が少ない内容で、もっと複雑に絡み合ったはずである感情を描くべきだったと思いますね。

特にエディがマリアンに淡い恋心を抱いて、マリアンも失った息子に重ね合わせるという展開なんかは、
もっと慎重に描いて欲しかったですね。この映画の流れはあまりに性急過ぎた印象がどうしても残ってしまって、
エディがマリアンの下着を見て欲情するなんて、あまりに露骨な行動に出過ぎていて、説得力がない。

そりゃ思春期って、そんなもんですよ(笑)。
でも、エディはあくまで裕福な家庭に育った、真面目な青年で女性は未経験。
それがアルバイトで初めて滞在した家で、いきなりそんな露骨に“ボロ”を出すわけがないでしょ(笑)。
それにマリアンにしても、いくらエディの“若気の至り”だったとは言え、初めて部屋に上げた青年が、
いきなり自分の下着を見て、彼がパンツを下ろしているのを目撃して、平静を装っていられるのだろうか?

それで「私、むしろ嬉しいのよ。こっち来て、笑って終わらせましょう」なんて、
正直言って、あまりに現実離れした発言なような気がしてならないんですよねぇ。
個人的にはこのシーンで、あまりこの映画の世界観にのめり込めないなぁと悟ったんですよね。

一方では、テッドもコメントしていたように、
マリアンが最初からエディに、失った息子を重ね合わせる可能性があることを分かっていたかもしれない。
が、それだったらテッドが事前にエディのことを知っていなければいけないし、本編ではそのような触れ込みはなく、
自堕落でいろんなことに無頓着な振る舞いだったテッドが、そんな計画的に企てたとは思えない。

全てはテッドの打算的な、後付けの言い訳ではないかと勘ぐってしまうんですよねぇ。

まぁ・・・そんなテッドだからこそ、マリアンとの夫婦関係も上手くいかないのですが、
確かにマリアンはマリアンで、簡単にルースの育児放棄をしたり、エディとの肉体関係に対して、
あまりに無用心だったりして、彼女の考えや行動にも共感性はあまりに乏しいかな。

こういう部分がある時点で、トッド・ウィリアムズの演出能力の高さって、
この映画ではフルに表現できていないように思うんですよね。一つ一つの人間描写に、まだ課題があるように思う。

そして、もう一つ、この映画で上手く使い切れていない気がするのは、
トム・クルーズのかつての妻だった、ミミ・ロジャース演じるミセス・ヴォーンの存在で、
ヘアヌードになってまでの久しぶりの活躍だったのですが、彼女の存在意義が僕にはよく分からなかった。
テッドも息子の喪失によって、私生活で混迷を極めていることを象徴させるのに一役かったと言えば、
それは否定できませんが、さすがにこれだけでは彼女の扱いがあまりに悪い印象しか残りませんね。

結局、この映画から分かったことは物語の良さというより、
マリアンを演じたキム・ベイシンガーが50歳を越えても尚、美貌を保っているということでしたね(苦笑)。
但し、キム・ベイシンガーにしてもミミ・ロジャースのような大胆なシーンを演じたわけでもなく、
どことなく彼女が映画の中で“浮いた”ような存在になっているような印象を受けたのが、気になりましたねぇ。

いやいや、ホントにこの映画のキム・ベイシンガーの美貌は驚異的なんですよ(笑)。
女優さんの年齢を論じるのは失礼極まりない話しですが、だって、撮影当時、51歳ですよォ!?(笑)
ミセス・ヴォーンを演じたミミ・ロジャースが彼女より、2歳年下ということを知って、尚、驚きでしたよ。
(いや、ミミ・ロジャースだって若く見えるんですよ。勘違いなきように)

あくまでジェフ・ブリッジスも、エディを演じたジョン・フォスターも、
ヘアヌードになったミミ・ロジャースも、新人監督トッド・ウィリアムズをフォローしようと、
とてもよく頑張った映画だと思う。勿論、その他のキャストもですが。役者には比較的、恵まれています。
但し、やっぱりその環境にトッド・ウィリアムズの演出力が、まだ付いて行けていないかなぁ。

まぁ『おもいでの夏』などが好きな人にはオススメしたい作品ですが、
やっぱり恋愛映画、或いはヒューマン・ドラマとして考えると、そう質の高い作品ではありません。

トッド・ウィリアムズにはこれからの活躍に期待したいですね。

(上映時間110分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

日本公開時[R―15]

監督 トッド・ウィリアムズ
製作 アン・ケリー
    マイケル・コレント
    テッド・ホープ
原作 ジョン・アービング
脚本 トッド・ウィリアムズ
撮影 テリー・ステイシー
美術 テレーズ・デプレス
衣装 エリック・ダマン
編集 アフォンソ・ゴンサルヴェス
音楽 マーセロ・サーヴォス
出演 ジェフ・ブリッジス
    キム・ベイシンガー
    ジョン・フォスター
    ミミ・ロジャース
    エル・ファニング
    ビシュー・フィリップス
    ラリー・パイン

2004年度インディペンデント・スピリット賞主演男優賞(ジェフ・ブリッジス) ノミネート
2004年度インディペンデント・スピリット賞脚本賞(トッド・ウィリアムズ) ノミネート