デイ・アフター・トゥモロー(2004年アメリカ)

The Day After Tomorrow

少々、極端なシチュエーションを描いたパニック映画ではあるのですが、これは面白かったですね。
『インディペンデンス・デイ』のローランド・エメリッヒが異常気象に見舞われて、アメリカの壊滅を描きます。

本作で描かれるのは、地球温暖化によって氷河期が到来するという、逆説的な現象でした。
要するに地球温暖化によって南極の氷河が溶かされることによって、世界の海水の塩分濃度が薄まることで
それまで均衡を保ってきた気候バランスが崩れ、超巨大なハリケーンが誕生したり、大量に低気圧が発生するなどして、
世界各地で異常気象となり、北半球では突如として寒冷な空気が流れ込み、猛烈な風雪と超低温で人々は大量死。

あまりに急激な気候変動に、時の科学者たちもシミュレーションが追いつかなくなり、
目の前に訪れようとしているリスクに対して、合衆国政府への提言が遅れ、ホワイトハウスからも信じてもらえず、
結果としてニューヨークをはじめとする大都市は、アッという間に氷や雪で覆われた廃墟へと変貌してしまいます。

そんな急激な気候変動を早めに察知していた主人公は、息子がニューヨークに取り残されていることを知り、
驚いたことに仲間を連れてとは言え、僅か3名で氷雪に覆われたニューヨークへ息子を助けに行くという奇想天外さ。

しかも、アメリカはおろか、地球存亡の危機に瀕した事態であるにも関わらず、一人の気象学者が
家族愛とは言え、自らの息子を救出するためだけに仲間を引き連れて、ニューヨークを目指すという展開自体が
今の時代なら否定されそうなものだけど、まぁ・・・これは映画だからいいや、ということでオヤジさんの冒険になります。
この辺はさすがは、ローランド・エメリッヒ。壮大なスケールで見せてくれて、映画は終始、テンションが高いのが好印象。

如何にもハリウッド的な内容の映画ではあるので、賛否が分かれ易いタイプの映画ではありますが、
僕はこれはこれでハリウッドのプロダクションの得意な分野で頑張った、良質なエンターテイメントだと思いました。
少なくとも、これを現実世界に当てはめて鑑賞してしまってはいけません。いろいろと、“限界突破”した内容なのだから。

僕は攻撃的でラディカルな姿勢の環境保護活動には賛同できないというのが本音ではあるけど、
とは言え、地球温暖化はじめとした地球環境問題には真剣に取り組まなければならないことだと思っています。
そこに経済性や合理性も大事だけれども、あまりにそれらを優先させ過ぎると一向に環境問題の解決はないでしょう。
だからと言って、今の文明を否定するようなこともしたくはないし、そのバランス感覚はとても大事なのだろうと思う。

映画のラストの副大統領の改心と、いつもは南米からの移民に悩まされていたアメリカだったのに、
今度はメキシコにアメリカ国民が密入国したり、寛大に受け入れてもらったことに感謝とか、少々政治色が強過ぎる
メッセージは一旦置いておいて...それでも、本作でローランド・エメリッヒが描いたことも、備えは必要なことでしょう。

世界各地で紛争やら戦争やら、なんだか平和とは程遠い国際情勢ですから尚更のこと、
不測の事態・想定外というのは起こり得ます。これは災害も正しく当てはまり、全てのことを想定内にはできないけど、
想定外の事態に見舞われたときに、私たちはどうするのか、ということは決めておかなければならないのでしょうね。

勿論、想定外の事態にならないことが一番ですが、やっぱり物事に「絶対」はありませんから。
よく簡単に「絶対安全だ」なんて言う人もいますが、限りなくそれに近づける努力はできても、達成はしません。
何故なら、「絶対安全だ」なんて状態は定義できないから。なので、最近はリスク・マネジメントの考えになってます。
だから、「そんなことは起きないはずだ」ではなく、「起きたときにこうする」という備えが大事な時代になっているのです。
特に日本人は、東日本大震災をリアルタイムで見た人が多いですから、備えをすることの重要性は実感しています。

だからこそ、何にしても安全対策と緊急事態発生時の対応手順というのは、スゴく重要なことなんですね。

話しは本編に戻しますが・・・映画の冒頭の棚氷が崩れ落ちるシーンにしても、
マンハッタンに津波が押し寄せるシーンにしても、いずれもローランド・エメリッヒが得意とするダイナミックな映像で、
臨場感たっぷりの迫力と言っていいし、これだけのスケールで映画を撮れるハリウッドはホントにスゴいと思う。

これは皮肉でもなんでもなく、素直な僕の本音。通俗的なこと言っちゃいますが、映像も嘘クサくないですし。
2004年当時に、こういった災害シーンをこれだけの生々しさで表現できたのは、ハリウッドのスタジオくらいでしたね。

現実にそうですけど、地球で起こっている現象を宇宙ステーションから俯瞰的に見ているという構図も面白い。
気象予報の難しさはありますけど、最も壮大なスケールで地球を見続けることができるのは、確かに宇宙のみですね。
現実に多くの気象データは宇宙から採られていますが、こういった観点からも宇宙開発はこれからも必要なのでしょう。
日本の宇宙事業も注目されていますけど、やはりアメリカやロシアといった大国の先進性には及ばないですからね。
気象データも防衛に関するデータも、もっと言えば諜報活動にも使われているのでしょうから、とても重要な技術ですね。

自然災害とは言いますけど、遠回しに人災であるというように描かれているのが本作の特徴ではありますけど、
ローランド・エメリッヒの作家性も少々あざとい部分があるのですが、これはこれで彼の特徴ということなのでしょうね。

低気圧の“目”に入って、10秒間で1℃ずつ気温が低下していくという強烈な気温降下に見舞われ、
ニューヨークのビルが上層階から次々と凍結していくというCGが使われていますけど、これはかなり極端な現象だ。
現実にこんなことがあれば、例え建物の中に居たって、暖炉に大きな火を焚いていたって即刻凍死するでしょうね。

僕は屋外の自然環境でも−20℃ほどしか体感したことがないし、10秒間で1℃ずつコンスタントに降下するなんて、
想像を絶する低温ですから、この映画で描かれる世界はよく分かりませんけど、動かない方が得策だとは思います。
動けばエネルギーを使っちゃうし、街のインフラは機能不全でしょうから、動いたところで絶望的なことに変わりない。

まぁ、そんな世界に息子を助けに行こうと気象学者が車と歩きで乗り込んで行くという発想がスゴいですけどね、
この辺の家族愛がメインになってくるところがハリウッド映画ですかね。主演のデニス・クエイドも久しぶりに大活躍。
そんなデニク・クエイド演じる気象学者に協力する、極地で気象観測するイギリス人気象学者をイアン・ホルムが
演じているのですが、彼もまた絶望的な状況に苛まれてしまっているのですが、顛末が曖昧になっているのは残念。

極端なシチュエーションを描いている映画なだけに、どこも絶望的な状況ではあるから
想像できる顛末かとは思うのですが、それぞれのキャラクターにはしっかりと役割を持たせて欲しかったけど、
このイギリス人気象学者の役割がハッキリとする前に、ニューヨークのパニックがメインになってしまうので中途半端。

僕は気象学を学んだわけではありませんが、この映画で描かれた異常気象のメカニズムは
あり得ないとは言えない理屈なだけに、この映画で描かれたことがあながち絵空事とは言えないとも感じましたね。
前述したように人災というニュアンスも含められていますけど、人間の生命活動だけが原因とは言えない原理で
過去に周期的な地球の気候変動によって、氷河期などのようにそれまでの環境が激変したこともあるわけですから。

どんなことが理由としても、その変動を緩和する動きはとらなきゃいけないし、リスクへの備えも必要だろう。
しかし、本作で描かれたほどの極端かつ急速な変動がもし起こってしまったら、私たちはどうしたらいいのでしょう?

ローランド・エメリッヒの謎な日本びいきなところが、本作の中では不思議な日本の市街地(居酒屋街)で、
巨大な雹が降ってくるというシーンが序盤にありますけど、あんなのは雹というか巨大な氷の塊ですからねぇ。
あれが自然現象として降ってくるというのは、凶器が降ってくるのと同じことで、屋外に居たら死んでしまいますからね。

あのヘンテコな日本の描写は、ローランド・エメリッヒの監督作品ではもう十八番のようなシーンですね(苦笑)。
『ブラック・レイン』の雰囲気を更にエスカレートさせたような感じで、21世紀に何やってんだ!と怒る人もいるだろう。
これは正直、無くとも本編を楽しむのにまったく影響がないシーンなので、カットしても良かったと思うんだけどなぁ・・・。

仮にこんな自然災害が来たら、そりゃ人類存亡の危機になることは間違いないでしょう。
僕は大学時代に「21世紀は環境の世紀です」と講義で聞いた記憶がありますが、エスカレートするとこうなるぞ、
というメッセージを込めて、臨場感あるパニック描写で上手い具合にエンターテイメントに昇華させたと思いますね。
あまりにメッセージ性が強くシリアスな内容になると、映画が悪い意味で重たくなり過ぎるけど、丁度良い塩梅でした。
そういう意味では、自分で原作を書いただけあってローランド・エメリッヒが監督するのは、丁度良い企画だったのかも。

個人的には映画館で観ておけば良かったかも・・・と思える作品でしたね。視聴環境は整えた方がいいです。
まぁ、当時は僕も就職活動やら教育実習やらがあったんで、そんなことができる余裕は無かったんだけれども。。。

(上映時間123分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ローランド・エメリッヒ
製作 ローランド・エメリッヒ
   マーク・ゴードン
原作 ローランド・エメリッヒ
脚本 ローランド・エメリッヒ
   ジェフリー・マックナノフ
撮影 ウエリ・スタイガー
編集 デビッド・ブレナー
音楽 ハラルド・クローサー
出演 デニス・クエイド
   ジェイク・ギレンホール
   イアン・ホルム
   エミー・ロッサム
   ジェイ・O・サンダース
   アージェイ・スミス
   セーラ・ウォード
   タムリン・トミタ

2004年度イギリス・アカデミー賞特殊視覚効果賞 受賞