マイアミ・ガイズ/俺たちはギャングだ(2000年アメリカ)

The Crew

リチャード・ドレイファス、バート・レイノルズ、ダン・ヘダヤ、シーモア・カッセルという、
ベテラン俳優が勢揃いしたコメディ映画ですが、なんだか微妙な出来で、やはり全米で“コケて”しまった作品でしたね。

まぁ・・・つまらないとは言わないけど、この映画にはコレといった特徴がない。
せっかくのベテラン俳優の勢揃いとは言え、ダン・ヘダヤとシーモア・カッセルはどちらかと言えば、
映画で主役を務めることよりも、バイプレイヤーとしての活躍が目立った役者さんたちで、
映画のギャグ自体もそうと言えばそうなのですが、どれもこれも中途半端に映ってしまったのは事実。

映画の冒頭にある、4人の老人の若き日のギャング時代を演じた、
役者たちはよく似た雰囲気を持った役者を集めていて、これは良かったのですが、
映画は肝心かなめの彼らの“作戦”を描いたエピソードが、あまり盛り上がらない。これは致命的でしたね。

リチャード・ドレイファスは好きな役者だし、ツラい困難を乗り越えてきてハリウッドで生き残っただけに、
こうしてベテランの域に差し掛かっても頑張っている姿は嬉しいのだけれども、もう少しキレのあるコメディ映画の方が
似合っていると思うし、本作はあまりに主人公4人の老人に動きが無さ過ぎて、見せ場が全く作れなかった。

これはバート・レイノルズにしても同様。彼もまた、持ち味が生きたとは言い難い印象ですね。
晩年のバート・レイノルズは腕っぷしの強さを誇示する役柄よりも、少々変わった年寄りを演じさせた方が
彼には合っていたと思う。それが気性の荒い年寄りというのは、あまりに想像通り過ぎて、面白味に欠けるのかな。
映画自体はコメディなので、バート・レイノルズにも意外性あるキャラクターを演じさせた方が面白かったかと思います。

そのせいか、僕の中では4人のベテラン俳優たちよりも、
例えばリチャード・ドレイファス演じるボビーの娘であるオリビアを演じたキャリー=アン・モスや、
ストリッパーのフェリスを演じたジェニファー・ティリーといった女優陣の方が光るものを感じましたね。

彼女たちの出番が少なく、彼女たちも見どころがあんまり無かったものだから、
4人の老人たちよりも「彼女たちを見せてくれ〜」という方が、僕の正直な感想だったかも。。。

そういう意味では、何故にボビーがオリビアを見てピンと来て、おそらく探偵か誰かに調べさせ、
オリビアが自分の娘だと確信してからのエピソードを膨らませて描かなかったのか、全く不思議なのですよね。
ほぼ定番化された流れになるとは言え、あまりにアッサリと描かれ過ぎていて、まったくもって不可解。
普通に考えたら、オリビアの立場からしても、信じ難いと困惑するでしょうし、ボビーのことを純粋な気持ちで
見ることができるかが甚だ疑問であり、お約束ではありますが、ボビーに抵抗する気持ちが生まれるでしょう。

本作はコメディ映画なのですから、そういった設定を利用することがセオリーと思っていたのだけれども、
それらを全く利用するどころか、膨らませもせずに結果的に映画も盛り上がらないでは、作り手がこの映画で
何を表現したくて、何を観客に見てもらいたかったのかが、最後の最後までよく分からない映画になってしまった。

ハリー・ソネンフェルドがプロデューサーとして加わっているので、
映画はコメディ路線になることは分かるのですが、もっとドタバタした喜劇にした方が良かったように思います。
別にド派手なギャグはいらないのですが、例えるならジャック・レモンとウォルター・マッソーが作り上げてきた、
小気味よいテンポの会話で織り成すコミカルさなど、映画のテンポを上げるような工夫は欲しかったですね。

そう、この映画は上映時間が短いことが特徴的で、
アッという間に終わると言っても過言ではないくらい経済的な映画と言えると思うのですが、
その割りにテンポが悪い。特に映画の中盤に差し掛かると、そのテンポの悪さが余計に際立つ。
これは老人たちをメインに描いた映画とは言え、彼らの言葉の応酬にスピード感が無いせいだと思う。

これは早口で喋るとか、反応を早く速くするとか、そういったことではなく、
本来的には作り手が撮り方、編集などで工夫して、言葉の応酬にスピード感を持たせることはできるはずなのです。

小さなギャグはポンポン出てくるが、映画にスピード感が希薄なせいか、どうにもノレない。
終いには、ジェレミー・ピヴェン演じる刑事が何を持ったかキャリー=アン・モスの足の指を舐め始めるのですが、
これがまるで突拍子もないシーンで、これを作り手が本気でギャグとして描いているのか、不思議でならない。
言い過ぎかもしれませんが、ここまで暴走するギャグとなると、ただただ不快なだけと言われても仕方ありません。

そのせいか元恋人である、この2人の復縁を期待するような内容にもならないのですよね。。。

なんか、この“滑り具合”というか、作り手の感覚のズレが、気になるんだなぁ。
まぁ・・・そう思っているのは、僕だけかもしれませんが、要するにヒットしなかった理由がよく分かるということです。

タイトルにあるギャングと言っても、堅気になって、すっかり隠居生活を送っている老人です。
気の短さや、金遣いの荒さなど、その“片鱗”は見えますが、それでも年とったせいもあってか、
腕っぷしは衰えていることは否めませんし、老後の生活を続けるために、随分とセコいことを計画し実行します。

ギャングを気取って死体を借りて、殺人事件を装い、事件現場とされたホテルの資産価値を落として、
自分たちはそのままホテル暮らしを続けようという魂胆なのですが、その借りた死体がホントにギャングの
親玉だったというから、ホントに親玉を殺されたと激怒したギャングから追われるという皮肉なストーリーです。

このストーリー、あらすじだけを聞いたらスゴく面白そうなのに、映画の出来は何故こうなんだろうか・・・。
監督のマイケル・ディナーはあまり聞かない名の監督ですが、本作での仕事ぶりは評価されなかったのでしょうね。
商業的な失敗作という烙印を押されてしまったので、プロダクションも簡単に次の仕事を任せられなくなったのかも。
(おそらく本作、キャスティングにはそこそこな金額の予算を投じたと思いますし・・・)

ひょっとしたら、死に化粧のシーンなんかは、奇抜な表情の死に化粧をして“遊んで”いるのを
ギャグとして表現したのかもしれませんが、こういうのも全て、ことごとく悪い意味で“滑って”いるようにしか見ない。
この辺を見ると、バリー・ソネンフェルド以外のコメディに長けたプロデューサーがいれば良かったのに・・・と思える。

しかし、かつてギャングだったことを武勇伝的に語って、余生を生きる人もいるのだろうけど、
この映画で描かれたように、完全に隠居生活を送って余生を過ごすという、元ギャングの爺さんたちも
アメリカには大勢いるのでしょうね。人間誰だって年はとりますし、みんながみんな死ぬまでギャングというわけでもなく、
キレイに堅気になれた人もいれば、修羅場をくぐって堅気になった人もいるでしょう。皆、さまざまな境遇でしょう。

こうして、元ギャングが4人も“群れて”隠居生活を送るというのは、
そうそう滅多にないことだとも思いますが、短気な年寄りがバーガーキングでアルバイトしているというのは面白い。

最近は日本でもシニア世代のアルバイトというのも増えていて、
エイジフレンドリーなどといったキャッチコピーがでるくらい、高齢者でも就労できる職場環境を作ることがテーマで、
某世界的大手バンバーガー・チェーンのレジなんかで、80代の高齢者がアルバイトしている店舗が話題になりました。

そういう意味では、本作のチョットした、こういったエピソードも当時のアメリカでは
普通のことだったのかもしれませんが、日本人的な感覚からすれば、先進的なことだったのかもしれません。

とまぁ・・・いろいろと言いたいことがある映画ではあるのですが、
同窓会のようなノリで作ったコメディとして、広い心で観ると、楽しめる要素はある作品なのかもしれません。
僕自身は期待していた映画と違いましたが、リチャード・ドレイファスらのファンには、それで十分なのかもしれません。

ただねぇ・・・描き方によっては、もっと面白くなった映画だと思うんですよ。そうなだけに、勿体ない。

(上映時間87分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 マイケル・ディナー
製作 バリー・ソネンフェルド
   バリー・ジョセフソン
脚本 バリー・ファナロ
撮影 ファン・ルイス・アンシア
美術 ピーター・ラーキン
音楽 スティーブ・バーテック
出演 リチャード・ドレイファス
   バート・レイノルズ
   ダン・ヘダヤ
   シーモア・カッセル
   キャリー=アン・モス
   ジェニファー・ティリー
   レイニー・カザン
   ジェレミー・ピヴェン