夢の降る街(1991年アメリカ)

The Butcher's Wife

人気絶頂にあったデミ・ムーアが主演したラブ・ロマンス。

どうやら公開当時、あまり日本をはじめ世界各国でも商業的成功を収められなかったらしいのですが、
まぁそれでも僕はこの映画をまんざら嫌いにもなれそうもないかなぁ(苦笑)。
確かにこの映画でのデミ・ムーアはそんなに悪くない。ブロンドなのも、案外、似合ってたかも(笑)。

確かに凄く面白い映画とは言い難いし、映画としての粗(あら)を指摘し始めたらキリがない。
しかしながら、これはこれで実に可愛らしい映画だと思いますね。愛着を感じさせる一本です。

幼い頃から予知能力がある女性が大人になって、
たまたま彼女が暮らす島に流れ着いた肉屋の中年男性を双眼鏡の視野に入れ、
「彼こそがアタシの運命の相手」と一目惚れ、すぐに結婚してニューヨークへ戻り、肉屋を手伝い始める。
突然、肉屋の主人の生活にやって来た美しく若い女性を見て周囲は驚くが、
すぐに彼女は持ち前の予知能力を発揮し出し、近所の住人たちはすっかり彼女に魅了されてしまう。
そんな光景を見て次第に不安に感じ始めた主人は、隣家の精神科医に相談に行く・・・。

まぁありがちな話しではありますが、コンパクトに上手くまとまっており、ひじょうに観易いですね。
デミ・ムーアも楽しそうにヒロインを演じており、かつてないほどにチャーミングだ。
ハッキリ言って、本作の後の彼女には魅力を感じないと言ってもいいが、この映画での彼女は別格だ。

デミ・ムーアって、コメディエンヌになるというほど器用な女優さんだとは思わないんだけれども、
これでコメディ演技ができれば、もっと大成していたかもしれませんね。本来的には芝居は上手いだけに。

確かに本作は既に分かりきったストーリー展開であることは否めないし、
ご都合主義の恋愛エピソードの数々が積み重なり、輪をかけるようにコメディ・パートも空振り。
しかしこの映画は素材としては、凄く魅力的なものだったと思うし、この映画を観る限りでは、
確かに観客に「ヒロインに不思議な魅力があるのだろう」と思わせられるだけの説得力はあると思います。

そういう意味では彼女の相手役となった精神科医を演じたジェフ・ダニエルズや、
肉屋の主人を演じたジョージ・ズンザはチョット弱いかなぁ。
典型的な主演女優のインパクトに力負けした男優たちって感じがしますねぇ。。。
(まぁ・・・その方が最近の女性陣の強さを象徴しているようだけど...)

映画全体として、画面の作り方はオーソドックスだが、基本的には悪くないと思う。
ヒロインが暮らす島でのシーンのロケーションは好みが分かれるところだとは思うが、
僕は決して悪いものではないと思う。けど・・・肉屋でのシーンなんかは顕著に出てるんだけれども、
一部、シーン演出の空気が味気ないというか、サッパリし過ぎているところはありますね。
恋愛をメインテーマとしては、恋愛劇の舞台となる、或いは物語のメイン舞台となる場所でのシーン演出が、
あまりにアッサリし過ぎているというのは、映画のムードを盛り上げるという意味で、大きなハンデとなります。

こういうところで大きなハンデを背負ってしまうというのは、
映画として力負けしてしまう直接的原因になってしまっているような気がしますね。

さすがにデミ・ムーアの魅力だけで映画を支えてしまおうという発想には無理があります。
やはりこの映画のノリに乗れないという人には、本作はデミ・ムーアの魅力に依存している作品という
印象を強く与えてられてしまうのでしょうね。これは僕も何となくではありますが、分かる気がします。

ただ、それでもできるだけ寛容的には観てあげたいと思う。
それだけ本作の作り手たちの作品に対する愛着を感じさせる内容ではありますからね。
決して製作サイドの意図としては、デミ・ムーアの魅力のみに依存しようとしたわけではないと思いますね。
(まぁ確かに当時、デミ・ムーアは一番ノッていた時期ですけど・・・)

映画のオチとしては納得できるのですが、映画のクライマックスはもっと丁寧に描いて欲しかったかな。
唐突かつ順序を踏まずに、いきなりクライマックスに突入する暴走状態だから、戸惑いが生じ易いラストです。
やはり映画も“詰め”が肝心です。クライマックスでインパクトを付けるのも、大きな手段と言えます。

原題がThe Butcher's Wife=i=肉屋の妻)とかなり大胆なタイトルが付いていますが、
もうチョット可愛らしい原題にしても良かったのでは、と思いますね。なんかあまりにストレート過ぎます(笑)。

映画の尺の長さ自体は丁度いいぐらいだと思いますね。
これ以上長かったら、映画が完全にダレてしまったでしょう。ダレてしまうと、立て直すのはキツいですからねぇ。
もう少しコメディ・パートがしっかりとしていれば、映画は引き締まったと思うのですが、それは厳しい注文かなぁ。

僕は肉屋の主人が羨ましいですね。
だって、いくら予知能力が人間離れしているとは言えど、若い姉ちゃんがいきなりボートに飛び乗ってきて、
抱きついてキスしてくれた挙句、すぐに結婚してくれるんですよ。
僕もそんな島があるんだったら教えて欲しいですよ。今すぐにでも行きますから(笑)。

そんな想いにさせてくれる、いろんな意味でハッピーな映画だ。

(上映時間104分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 テリー・ヒューズ
製作 ウォーリス・ニキータ
    ロレン・ロイド
脚本 エズラ・リトワック
    マージョリー・シュワルツ
撮影 フランク・タイディ
音楽 マイケル・ゴア
出演 デミ・ムーア
    ジェフ・ダニエルズ
    ジョージ・ズンザ
    メアリー・スティーンバーゲン
    フランシス・マクドーマンド
    マーガレット・コリン
    マックス・パーリック