アベンジャーズ(1998年アメリカ)

The Avengers

かつてイギリスで人気TVシリーズであった『おしゃれマル秘探偵』の映画化。

英国諜報部員スティードと気象学者エマ・ピールの活躍を描くアクションなのですが、
おそらく公開当時、本作は商業的成功を収めることができていれば、シリーズ化される予定だったのだろう。

が、結果的に本作は大ヒットには至らず、それどころか散々な酷評で終わってしまいました。
あんまり僕も酷いことは言いたくありませんが、確かに本作はお世辞にも褒められない内容だ。
あまりに映画的ではない展開に、思わず呆気にとられてしまうぐらいで、かなり破天荒な作品です。
監督のジェレマイア・チェチックが当初から、こんなビジョンで思い描いていたなら仕方ありませんが、
あくまで僕の勝手な予想ですが、映画製作以前に彼が思い描いていた内容とは、
かなりかけ離れた内容になってしまったのではないかと思いますね。

スティードとエマ・ピールが倒そうとするのは、
気象を自由自在に操って、世界各国を脅そうとする気象学者サー・オーガスト・デ・ウインター。
そんなオーガストを演じるのは、何と名優ショ−ン・コネリーなのですが、これがまた上手くいっていない。
困ったことに、彼もまるで個性の感じられない存在で、別に彼でなくともいいような扱いしか受けていません。

僕は『おしゃれマル秘探偵』のことは分かりませんが、
そこまでしてまで映画化するニーズや意味があったのか、正直言って、微妙なとこだと思う。
かなり大掛かりなセット撮影や視覚効果を使っていますし、キャスティングにもお金がかかっているだろう。
しかしながら、それらが全てフイになってしまっていると言っても過言ではありません。

映画の上映時間がかなりタイトに引き締められているのは救いの要素にはなっていますが、
それでもかなりトンチンカンな構成が目立ってしまい、映画が無駄に長く感じられる部分があるのは確かだ。

スタイリッシュなアクション映画という意味では、レイフ・ファインズをキャスティングできたのは正解ですが、
一方で彼はこういった人気キャラクターを演じるには、正直言って地味過ぎる俳優だと思う。
特に本作はユマ・サーマンの相手役ということもあってか、更に彼の存在感が前へ出てきませんね。
おそらくもっと他に適任な俳優がいたと思います(...それでも映画の出来は変わらなかったとは思うが...)。

残念ながら本作はゴールデン・ラズベリー賞でも大量ノミネートという不名誉な記録を作ってしまい、
文字通り、散々な結果で終わってしまいますが、何一つ褒めるところが無い映画というわけではない。

実際、僕はごく凡庸な映像表現ではありますが、エマ・ピールがオーガストの屋敷に監禁され、
下れども下れども、同じ地点に戻ってしまうトリック・アートのような階段のシーンは面白かった。
ベタな表現技法ではありますが、こういったトッリキーな表現は悪くないし、まずまず悪くないひらめきだと思う。

それからエマ・ピールを演じたユマ・サーマンは相変わらずキレイですね。
スティードの屋敷でスティードと剣術を訓練するシーンでは、妙にセクシーな感じでしたね(笑)。
かつて彼女は意外にも本作のようなコミカルな側面をあまり見せてこなかったため、
エマ・ピールのような個性の強いキャラを演じたというのは、かなり大きな収穫かもしれません。

ただ、映画の目指す方向性が悪過ぎましたね。
ショーン・コネリーを出演させたり、英国諜報部員という設定にこだわったり、
様々な秘密兵器を繰り出したりして、あたかも『007』シリーズを意識したかのような作りですが、
映画の中で披露した小ネタの多くが、イマイチな発想しか出てこなかったのは致命的だ。

例えば映画の後半で川を歩きながら渡るスティードとエマを映したシーンや、
クライマックスのピンチから2人が脱出するシーンで、球体を使うのは『007/私が愛したスパイ』が元ネタ。
何故に『007/私が愛したスパイ』を今更、劇場公開から20年以上経って再現するのか、理解に苦しむなぁ。

というわけで、数多くの映画ファンからブーイングを喰らったのも、何となく理由が分かる気がします。

本来的にはスパイ映画としての面白さを表現しなければならなかったのに、
この映画が成し遂げた功績と言えば、文字通りスタイリッシュな映画に仕上げたという程度。
それだけでスパイ映画は成立しえず、スリリングな側面を全く強調せずノーテンキにし過ぎましたね。
それゆえ、映画は最後の最後までオシャレというキーワードだけで終わってしまい、
映画的な盛り上がりに欠けたまま、クライマックスに突入してしまいましたね。

しかもこの映画の理解し難いところは、映画的なセオリーを完全に無視してしまっているところですね。
少なくともベタなストーリー展開で見せるならば、観客にそれなりに「ここからロマンスいくぞー」とか、
「さぁここで笑ってくれ!」と振ってくるケースが多いのですが、この映画はそういった前振りもない。

こういった点もひっくるめて、この映画は全てにおいて非映画的なんですね。
そんな非映画的なところが、全てにおいて悪い面で貢献してしまった気がしますね。

まぁもうシリーズ化されることはないと思いますが、
製作当時は作り手たちも本作をシリーズ化させる気だっただろうと考えると、なんだかフクザツですね(苦笑)。。。

(上映時間89分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 ジェレマイア・チェチック
製作 ジェリー・ワイントローブ
脚本 ドン・マクファーソン
撮影 ロジャー・プラット
音楽 ジョエル・マクニーリー
出演 レイフ・ファインズ
    ユマ・サーマン
    ショーン・コネリー
    フィオナ・ショウ
    ジム・ブロードベント
    パトリック・マクニー

1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演男優賞(レイフ・ファインズ) ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(ユマ・サーマン) ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(ジェレマイア・チェチック) ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(ショーン・コネリー) ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(ドン・マクファーソン) ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞(レイフ・ファインズ、ユマ・サーマン) ノミネート
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・リメーク・続編賞 受賞
1998年度ゴールデン・ラズベリー賞主題歌賞 ノミネート