特攻野郎Aチーム THE MOVIE(2010年アメリカ)

The A - Team

83年からの人気TVシリーズの現代版映画化。

日本でも大々的に拡大劇場公開されて、大きく宣伝されていたのですが、
個人的には結果から言うと、この映画はそこまで楽しませてくれなかったかなぁ。
もう少しエンターテイメントとして面白そうと期待していたのですが、どこか上手くいっている感じがしなかった。

往年のTVシリーズのファンからすると、これは楽しい内容なのかなぁ?
なんか、この企画のノリがよく分からなくって、最後の最後まで僕だけノレなかったのかもしれません。

主演のリーアム・ニーソンが、本作の頃はアクション映画をメインに活躍する、
中年タフガイのアイコンのような扱いになっていたせいか、本作の注目度も高かったのですが、
僕の中ではリーアム・ニーソンって、もう少し器用な役者さんだと思っていて、本作のようなスピンオフというか、
TVシリーズの映画化という企画の主演というだけでは、チョット勿体ないというか、物足りない仕事に見える。

ノー天気で破天荒なアクション映画という位置づけですから、
CG満載のヘリコプターを使った非現実なシーン演出があっても、別にいいのですが、
テンポの良さと、雑になってしまうことは紙一重というのを地でいったような映画になっていて、
僕には一つ一つのシーンのつながりが、上手くいっておらず、結果として雑な映画という印象が強く残った。

アクション・シーン一つ一つもそこまでスリリングとは言えず、
ド派手な演出があってそれなりに盛り上げてはくれるけど、良い意味での緊張感が希薄である。
やはり、いつ主人王たちがやられてもおかしくはないという緊張感が、僅かながらでも必要ということでしょう。

別にリーアム・ニーソンが悪いわけではありませんが、
やはり彼のような役者が主役を張る作品なわけですから、こんな軽〜い映画ではチョットねぇ・・・という感じです。

おそらくTVシリーズが人気を得たのは、主要人物のキャラクターが魅力的だったからだと思うんです。
それが中心的存在である“ハンニバル”を演じたリーアム・ニーソン自身が、キャラクターを磨かれず、
絶大な信頼を得るキャプテンシーを感じさせるほどではなく、どうしても本作だけで彼の魅力を語るのは
無理があり過ぎた感じだ。当時、売れ始めていたブラッドリー・クーパー演じる“フェイス”にしても中途半端だ。

僕はこの映画は、きっと、オリジナル・ストーリーを第1作としていたら成功したと思う。
どうやらTVシリーズと同様のストーリーとしたようで、だから映画版なんだと言われればそれまでですが、
キャラクターが面白いはずの企画なのに、この映画の枠の中だけで“ハンニバル”の強さや魅力を表現し、
それを慕う下っ端たちのコミカルな魅力を出すといっても、作り手にとってはあまりに無理難題だったと思います。

なんせ、“ハンニバル”は絶大な信頼を得ているという設定ですからね。
映画の冒頭にもありますが、言うこときかせるために、相手の腕を撃つという荒業に出ても、
“ハンニバル”であることに気付くと、相手がひれ伏すくらいのネーム・バリューなのですから、
レンジャー部隊のリーダーとして君臨する実力者として描かなければならないわけで、それは相当なものですね。

映画の冒頭、単独行動に出て身柄を拘束された“フェイス”を救出するエピソードは
映画の出だしからエンジン全開な感じで、なかなか面白かったのですが、後が続きませんでしたねぇ。
きっと、主要人物の魅力を分かっていれば、この映画のノリというのが、この上なく楽しいものだったのでしょう。

ガソリンを湿らされたマットに包められ、火がついた状態で坂道を転がるという
シチュエーションは面白かったので、あの“フェイス”のキャラはもっと光らせることはできましたね。

それから、バラカスがマードックのクレイジーなヘリコプターの操縦のおかげで、
一気に飛行機恐怖症になり、服役中に非暴力の重要性を学んだということも描かれていて、
すっかり平穏になったバラカスを見かねて、“ハンニバル”がチーム・メンバーとして奮起させるために、
「ガンジー曰く、臆病と暴力のどちらかを選ばなければならない。オレはむしろ暴力を薦める」と言われ、
バラカスが奮起して、ニヤリとするというコンプライアンス無視な展開が、この映画の醍醐味なのですね。

こうして、コミカルな部分は問題ないと思うのですが、
いかんせん本作はコミカルさとアクションの両立、そしてキャラクターの確立ですね。

日本でもこのTVシリーズは人気があったようで、地上波でも放送されていたので、
気難しいジョージ・ペパード演じる“ハンニバル”が繰り出す、奇想天外な作戦を楽しんだ人も多いでしょう。
本作でもそんな“ハンニバル”のスマートさはしっかり描かれていますので、ここは往年のファンも安心していい。

でも、やっぱり“フェイス”なんですね。演じたブラッドリー・クーパーはブレイク寸前の魅力ありますし、
作り手も引き立たせようとしているのは分かるんだけれども、どうにも中途半端さが拭えない。
どうせなら、ジェシカ・ビール演じる元恋人との攻防も、もっと火花散るくらいバチバチやってもいいし、
良い意味で映画を荒らして欲しかったですね。ここも往年のTVシリーズ通りなのでかもしれませんが、物足りない。

そこに、リドリー・スコットとトニー・スコットが出資したくらいですから、
スタイリッシュかつスピード感満点アクション・シーンが連続するのですが、この相性がどうも微妙なんだぁ。

一つ一つのシーンのつながりが雑なせいか、
個人的にはクライマックスのアクション・シーンはかなり不完全燃焼な印象で、もっと破天荒にやって欲しかった。
パトリック・ウィルソン演じるCIA捜査官リンチの正体についても、後からとって付けたような感じでイマイチだ。

そして、この映画のこの終わり方なのであれば、それは勿論、続編があるのだろうと
思っていたのですが、本作が製作されてから10年以上経ってますが、まだ続編は製作されていません。
ずっと本作は映画化が噂されていたとのことですが、この1回だけなら映画化した意義がよく分かりませんね。
当初はシリーズ化を予定していたのかもしれませんが、キャストの多忙さや収益性がネックになったのか、
どういう理由なのかは分かりませんが、シリーズ化とはなりませんでしたね。そうなだけに、このラストが余計に虚しい。

個人的には、こういう企画はもう飽和状態なのではないかと思っています。
勿論、僕自身も好きだったTVシリーズが映画化されれば、嬉しく観るとは思うのですが、
一方で映画化する意義がない企画というのは、やはり苦しく、その場限りの内容になりがちですね。

日本でもヒットしTVドラマは何本も映画化されていますが、
日本の場合はスピンオフ企画のように番外編や、TVシリーズの続編のような感じで映画化されています。
勿論、ヒットはするのですが、単純に映画の出来として考えると、今一つなものが多い印象はあります。
それはTVドラマでのヒット(高視聴率)を受けての映画化という、そもそもの問題があるからでしょう。
つまり、映画というメディアで表現したいという、作り手の意思よりも企画の意見力が勝っているからです。

一番、僕がどうなのかなぁ?と疑問に思うのは、TVで十分な内容を映画化しているように感じられることです。

まぁ・・・本作がそれと一緒だなんては言いませんけど、
もう一つ、映画化して積み上がるものがないというのは、なんだか映画好きとしては寂しいですね。
ちなみに本作、しっかりとエンド・クレジットの最後まで観ることをオススメします。

(上映時間118分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 ジョー・カーナハン
製作 リドリー・スコット
   トニー・スコット
   ジュールズ・ダリー
   スティーブン・J・キャネル
   アレックス・ヤング
   イアイン・スミス
   スパイク・セルディン
脚本 ジョー・カーナハン
   ブライアン・ブルーム
   スキップ・ウッズ
撮影 マウロ・フィオーレ
編集 ロジャー・バートン
   ジム・メイ
音楽 アラン・シルベストリ
出演 リーアム・ニーソン
   ブラッドリー・クーパー
   クイントン・“ランペイジ”・ジャクソン
   ジェシカ・ビール
   シャールト・コプリー
   パトリック・ウィルソン
   ジェラルド・マクレイニー
   ヘンリー・ツェーニー