ソードフィッシュ(2001年アメリカ)

Swordfish

ジョン・トラボルタが冒頭から、
やれ「最近のハリウッド映画はくだらない」だの「リアリズムが欠如してる」だの、
「ポイントはミスディレクション(錯覚)なんだ」と豪語していた映画で、そこそこヒットした作品なのですが、
やはり僕には、どう観ても、この映画が優れたアクション映画だったとは思えないですね。

当時、大流行りだった、マシンガン撮影を使ったアクション・シーンの撮影なんかは、
さすがにジョエル・シルバーのプロダクションなだけあって、効果的に使えているとは思いますが、
二転三転するストーリー展開や、ラストのドンデン返しに至っては、少しお粗末なものだと感じました。

元来、僕にとっては、そんなストーリー上の動きはどうでもいいのですが、
それでもジョン・トラボルタに観客に誇示するかのように、豪語していたため、
僕も「ストーリー展開も“売り”にしたい映画なんだろう」と勝手に思っていたのですが、
あまりに平凡なトリックに、観客の思い込みを利用した映画というのは、驚くほどのものでもないと感じましたね。

大体、大のアル・パチーノ好きとして言わせてもらいますが(笑)...
確かに75年の『狼たちの午後』は僕も傑作だと思うし、シドニー・ルメットの最高傑作と言っても、
亡くなった今となっては過言ではないかもしれませんが、あの映画でアル・パチーノが演じたソニーには、
まるで計画性が無く、後先のことを考えずに銀行に押し入って、結果的に人質を取ってしまい、
警察隊に包囲されるという展開が良いのに、それを否定しちゃ意味が無いと思うのですがね。。。

それに「アル・パチーノの出演作は傑作ばかりだ。『ゴッドファーザー』と『スカーフェイス』を除いてな」...
とのセリフには、思わず「そぉーかぁ!?」と画面に向かって、叫びたくなりましたよ(笑)。
いやいや、そんなこと言ったら、『ボビー・デアフィールド』の方がキツい出来だろ...と(笑)。
(いや、『ボビー・デアフィールド』もそれなりに良い映画なんだけどね・・・)

まぁ・・・映画とは関係ない部分に憤慨はしましたが(笑)、
さすがはジョエル・シルバーのプロダクションなだけあって、当時はまだ元気な映画が撮れましたね。
これは明らかに『マトリックス』効果でしょう。この映画の大きな武器の一つにはなっています。

とは言え、個人的にはどちらかと言えば、ボスの恋人ジンジャーとして登場してきた、
ハル・ベリーがお色気ムンムンで、映画全編にわたって出演している方に僕の集中がいってしまい(笑)、
ヌード姿で雑誌を読むという、あまりに無意味なサービス・シーンに、作り手の策にハマってしまいました(笑)。
(結局、そんなのにツラれたのかよぉ・・・と思うと、あまりに悲しい男の性だが...)

もうこの辺が、本作の作り手が開き直ってしまったことを象徴してますね。
「そりゃ、世の中の男たちが観たいものと言ったら、派手なアクションと女の子だろう!!」と。

監督は『60セカンズ』のドミニク・セナで、あまり強い印象を残す映画は撮れていないように思うのですが、
今回も『60セカンズ』のジェリー・ブラッカイマーに続いて、ジョエル・シルバーという大きなバックに恵まれ、
規模の大きなアクション映画を手掛けており、これからはこういう路線で頑張っていくんでしょうね。

但し、本作は約8年間、映画を撮ることができず低迷していたようで、
09年の『ホワイトアウト』で復活しましたが、やはりこの手の路線で闘い続けるのは難しいのでしょうね。
今になって思うに、00年代は映画界が受難の時代だったと思うわけで、90年代後半にハリウッドでも、
それまでには無かったタイプの映画が登場し、新進気鋭の映像作家が数多く輩出されるものの、
その多くが00年代に入って、一気に低迷してしまった感じで、もっともらしいムーブメントも起きませんでした。
それを考えると、ハリウッドもアイデア不足で、魅力的な企画すら少なくなってしまったのでしょうね。

でも、こういったアイデア不足を象徴するのは、僕には本作のような映画にしか見えないんですよね。
本作なんかは色々と思わせぶりな台詞を残して、ストーリー上でこねくり回したような映画なのですが、
こういう勝負に陥ってしまうと、映画の本質を見失い、先の見えた勝負になってしまう気がするんですよね。
あまりに行き過ぎた競争になってしまうと、そうとうにヒネったお話しでなければ、ウケなくなってしまい、
映画らしさ、或いは映画だからできる興奮を、観客に伝えられなくなってしまうのではないかと心配なのです。

ちなみに犯罪組織にスカウトされる、天才的ハッカーにはヒュー・ジャックマンが演じています。
オーストラリア出身の彼は当時、00年の『X−メン』で幸運なデビューを飾ったためか、
ハリウッドでも注目される存在でしたが、今や数多くのヒット作を抱えるトップ・スターになりましたね。
実は僕、本作が鳴り物入りで公開され劇場公開される直前に試写会で観ているのですが、
確かにこの映画で初めて観た、ヒュー・ジャックマンは一際、異彩を放っているように感じましたね。

まぁ映画の中盤でFBIから逃げるためにと、断崖絶壁に近い崖を敢えて飛び降り、
転げ落ちながら逃走するシーンでは、ほとんど傷を負わずに下に辿り着くという不死身さには、
思わず笑ってしまいましたが、やはり体を張ったアクション・シーンが似合うタフガイなスターですね。

そうそう、そういえば思い出したのですが...
初見時、「9・11」の直後だったから多少、世界全体が過敏だったのですが、
この映画の冒頭にある、銀行正面の市街地で爆弾を身に付けられた人質が表に出てきて、
SWATが人質を保護しようとするシーンで、あまりにショッキングな描写があるのですが、
これって今になって考えれば、よく当時、許容されましたよね。これも一種のテロの描写なのに。

一部では、そういった論調もあったようではありますが、
観ようによっては、若干、当時の世相には不謹慎さがあるのは否めないので、
よく無事に劇場公開にこぎ着けられたものだなぁと、思わず感心してしまいます。

個人的にはもっとハッカーの手口を描いても良かったなぁとは思いますね。
1分間で国防省のアクセス制限をかけられたサイトに入り込めるだけのテクニックがあるわけで、
これは世界を揺るがすことのできる能力なだけに、もっとキッチリ描いても良かったと思いますね。
(しかも、このときの主人公には肉体的、かつ精神的にプレッシャーがかけられていた・・・)

この映画はもう少しスピード感があると面白くなったかなぁ。
映画の中盤で派手なカー・チェイスもあるのですが、全体的にスピード感には欠けていたように思います。
これはジョン・トラボルタが主演というハンデのせいもありますが(笑)、映画のテンションを上げ切れなかった、
大きな要因であり、残念ながらクライマックスの攻防ではそれらを取り返すことができませんでしたね。

(上映時間99分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ドミニク・セナ
製作 ジョナサン・D・クレイトン
    ジョエル・シルバー
    ポール・ウィンズ
脚本 スキップ・ウッズ
撮影 ポール・キャメロン
音楽 クリストファー・ヤング
    ポール・オークンフォールド
出演 ジョン・トラボルタ
    ヒュー・ジャックマン
    ハル・ベリー
    ドン・チードル
    ヴィニー・ジョーンズ
    カムリン・グライムス
    サム・シェパード
    ルドルフ・マーティン