メラニーは行く!(2002年アメリカ)

Sweet Home Alabama

どこら辺がどう、『メラニーは行く!』だったのかは分かりませんが...(苦笑)
アメリカ南部の田舎町でおおらかに育てられ、若気の至りで結婚した女性が結婚生活を捨ててニューヨークへ行き、
ファッション・デザイナーとして活躍しニューヨーク市長の御曹司からプロポーズされ、実は離婚が成立していないため、
夫になんとかして離婚届へサインしてもらおうと、故郷へ帰るエピソードを描いたユル〜い感覚のラブ・コメディ。

01年の『キューティー・ブロンド』でハリウッドを代表するマネーメイキング・スターとして、
一気にブレイクしたリース・ウィザースプーンがラブコメの女王を目指したかのように、次なる作品に出演したわけです。

監督は98年に『エバー・アフター』、99年に『アンナと王様』と規模の大きな映画を立て続けに撮った
アンディ・テナントで本作もその勢いが期待されたのでしょうけど、この手のラブコメはあまり上手くないようで、
これは色々と噛み合わずに、全米では大ヒットした割りには日本では拡大公開されたものの、不評に終わってしまった。

まぁ、それは中身的にも日本人の感性には合わないのかもしれません。
リース・ウィザースプーン演じるヒロインが性格的に、なかなか日本人に素直に受け入れられるのは難しいだろう。
ワガママと言えばワガママに見えるし、北部の象徴でもある大都会ニューヨークでバリバリ働くキャリア・ウーマンが
古臭い習慣の残るアメリカ南部へ帰ってきて、“都会風”を吹かせる姿はさすがに好感を持たれることはないと思います。

何気にこの映画自体が、どことなく政治的に民主党を揶揄したかったのか、なんなのか分かりませんが...
少し作り手の政治的意図が込められているような気がしたのも、個人的には気になったところでもありましたね。
(まぁ・・・南北戦争を再現する“南部連盟”を描くくらいですから、そういう内容になるのは仕方ないでしょうけど)

そして、同じ結末に落ち着くとしても...やっぱりこの映画のラストの描き方は、お世辞にも上手いとは言えない。

結婚式に至って、正気を取り戻したかの如く考え直す姿を描いていますけど、これはまるで説得力が無い。
離婚届の不備に気づいて、ようやっと考え直しているかのように見えてしまう時点で、この映画は成立していない。
ヒロインの気が変わったということなのでしょうけど、それにしてもあまりにイージー過ぎる展開で映画をダメにしている。
僕はこのラストさえ、もう少し上手く描けていれば、この映画の“肩を持っても”良かったと思っていたけど、これはダメ。

この映画のラストの違和感いっぱいの結婚式を見て、編集し直さないアンディ・テナントの考えが理解し難い。
まぁ、それまでの展開も褒められたものではなかったけど、それを更に上回る勢いでラストが映画をダメにしてしまう。
これではさすがにヒロインを演じるリース・ウィザースプーンも可哀想だなぁと思ってしまう。それくらいこのラストは酷い。

劇中、幾度となくレイナード・スキナード≠フ Sweet Home Alabama(スウィート・ホーム・アラバマ)を
使っていて、この曲が如何にアメリカ南部にとって特別な名曲であるかを悟らされるわけですが、この感覚も台無しだ。
ラストにもう一度、この曲を流して上手く映画をキメた気になったのかもしれないけど、それではカバーし切れていない。

ヒロインの夫が未練タラタラなわけですが、こんな自分勝手にしか見えないキャラのヒロインに
何故にそこまで惚れていたのか説明されていないし、自分も同じことをされそうだなぁと感じないのかな?と心配になる。

それから、この映画が致命的にダメだったのは、ヒロインと婚約するニューヨーク市長の御曹司が
ここまでイイ男で物分かりが良過ぎる...というか、お人好しに描いてフラれて映画が終わるというのは印象が悪い。
仮にどうしても婚約者をお人好しに描きたいのであれば、ヒロインだってもっとお人好しに描いて欲しいのですよね。
そうじゃないと、この映画のラストに誰も救われないわけで、まったくもって応援したくなる終わり方じゃないですよね。

ヒロインにここまで否定的な印象を持ってしまうラブコメというのは、映画として成立しているとは言い難いと思います。
この辺をアンディ・テナントはもっと気にして映画を撮らなきゃいけないし、全体のバランスを意識して編集して欲しい。

そりゃ、キャンディス・バーゲン演じるニューヨーク市長から嫌味なことを言われれば腹もたつでしょうが、
一方で随分と自分勝手な理由で一方的に婚約破棄となるわけだから、そりゃ・・・それなりの責めは受けるでしょう。
にも関わらず、ムカついたからと言って、ヒロインもブン殴ってしまうというラストもお世辞にも爽快とは言えないですね。

でも、この自分勝手さに喜ぶアメリカ南部の市民性を揶揄しているとも解釈できなくはなくって、
北部と南部の対立という構図自体、映画のテーマとしては古臭い感じがしてましたが、どちらかを揶揄してる気がして、
なんとも素直な気持ちでコメディ映画として観るのは難しいですね。もっと気持ち良く観れる内容にして欲しかったなぁ。

『キューティー・ブロンド』シリーズでは超ポジティヴ・シンキングな強い女性像を体現した
リース・ウィザースプーンですが、本作ではどちらかと言えばポジティヴ・シンキングではあるけれども、
チョット痛々しい失敗をするも気にしないキャラクターというほどでもなく、失敗しては結構落ち込んでいる様子を見せる。
それでも反省していないのか、我を押し通すように行動するヒロインを応援できるかが、この映画を楽しむ分かれ道。

いくらおおらかに育てられたとは言え、ティーン時代はそこそこ悪い埃が出てくる過去のある女性で
にわかにニューヨークのファッション業界で成功を収めたという設定が疑わしいけど(笑)、この我の強さが良い方向に
機能することもあるのかもしれない。まぁ、それくらいじゃないとアメリカの社会では成り上がっていけないのでしょう。

丁度、『I am Sam/アイ・アム・サム』で話題になっていた頃でしたからホットな話題でしたけど、
映画の冒頭にヒロインの幼少期として出演していたのはダコタ・ファニングで、ほぼ1シーンのみの出演でしたけど、
これは印象に強く残る扱いでしたね。コンプライアンスにうるさくなった現代では、微妙なシーンではありましたけど。。。

いずれにしても、どんなにそれ以外は良かったとしても、ヒロインの描き方に関してはまるで賛同できない作品でした。
観ていて元気になるラブコメというのは、ナンダカンダ言いながらも、ヒロインを最後は応援したくなるくらいじゃないと、
映画は魅力的なものにならないし、それはヒットするラブコメの最低条件。本作の作り手は、そう思ってなかったのかも。

それどころか、フラれてしまうはずの婚約者に同情の気持ちしか湧かない作品になってしまったのは大失敗。
最悪、編集段階でこのバランスの悪さは気づいて欲しかったけど、もっと言えば...脚本の段階で修正して欲しかった。

ひょっとして本作はリース・ウィザースプーン主演でラブコメを撮るという企画だけが先行してしまったのかな?
もっとラブコメで定評があるディレクターが撮っていたら、映画の出来は大きく変わっていたのかもしれず残念ですね。
それでも全米で1億ドルを超える興行収入があり、大ヒット作となったという結果からすると、アメリカではウケるのかな。
でも、この内容は観る人によっては賛否がありそうですし、この南部の描き方は賛否が分かれそうではありますけどね。

どうでもいい話しではありますけど...この邦題はどうにかして欲しかったなぁ(苦笑)。
日本の配給会社もよくこれで納得したなぁと感心したけど、まるで最初からヒットが期待されていなかったみたいだ。
この半ば中身を無視されたような邦題が付けられていて、前述したとおり、最後まで意図がよく分からなかった。
(まぁ・・・ひょっとすると“ゴーイング・マイ・ウェイ”に生きるヒロインを表現したかったのかもしれないけど)

それにしても...パトリック・デンプシー演じるニューヨーク市長の御曹司がお人好し過ぎて、泣けてくる(笑)。
いや、彼の場合は優し過ぎたのかもしれない。幼い頃から裕福な家庭に育ったという設定が、ここで利いている。
普通なら同じ立場になったら、素直に本心を告白したと自負するヒロインの話しを、冷静になんか聞けないだろう。

それどころか感情的になったり、思いっ切りぶつかってしまったって何ら不思議ではない状況なのですよね。
そのはずが彼はまるで胸をキュンキュンさせたかのように、ヒロインの告白に感動してしまっているなんて驚きだ(笑)。

リース・ウィザースプーンもラブコメの女王みたくなるのかなぁと当時は思っていたのですが、
何本か出演はしましたけど、あまりその座は長続きしなかったですね。出演作品にあまり恵まれなかったというか、
正直、作品の“選球眼”がイマイチだったというか...結局は『キューティー・ブロンド』のヒットが大きかったのでしょう。
05年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』でオスカー女優となってからは、むしろ低迷してしまいましたしね・・・。

そういう意味では、『キューティー・ブロンド』という彼女の代名詞となるヒット作の後であった、
本作のような出演作が大事だったと思うのです。彼女の出演作が立て続けに高評価とはならなかったのは残念。
(なんせ当時、本作の商業的成功は彼女の名前だけで成し遂げてしまったようなもの・・・と酷評されてましたから)

いずれにしても、この出来はキビしい・・・。否定的な声が目立ってしまうのは、仕方ない気がします・・・。

(上映時間108分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 アンディ・テナント
製作 ストークリー・チャフィン
   ニール・H・モリッツ
原作 ダグラス・エボック
脚本 C・ジェイ・コックス
編集 アンドリュー・ダン
撮影 トロイ・タカキ
   トレイシー・ワドモア=スミス
音楽 ジョージ・フェントン
出演 リース・ウィザースプーン
   ジョシュ・ルーカス
   パトリック・デンプシー
   キャンディス・バーゲン
   メアリー・ケイ・プレイス
   フレッド・ウォード
   ジーン・スマート
   イーサン・エンブリー
   メラニー・リンスキー
   ダコタ・ファニング