メラニーは行く!(2002年アメリカ)

Sweet Home Alabama

01年の『キューティー・ブロンド』の大ヒットで、
ハリウッドでマネーメイキング・スターの仲間入りを果たしたリース・ウィザースプーンを
ヒロインに据えて、ニューヨークで活躍するファッション・デザイナーの恋愛を描いたロマンチック・コメディ。

原題を見れば分かる通り、アメリカ南部のアラバマ州を舞台にした作品で、
劇中でもレイナード・スキナードの Sweet Home Alabama(スウィート・ホーム・アラバマ)を
使ってはいるのですが、別にこの曲でなくともいいような内容ではあって、あくまでアメリカ南部を
象徴する曲であれば何でも良かったと言えば、それは否定できないかもしれません。

さすがにリース・ウィザースプーンの勢いに任せたような映画であり、
映画の企画自体、彼女がブレイクしたことに乗じたって感じで、残念なのは中身が疎かなこと。

得てして、この手の映画って、作り手のセンスが必要だと思うんだけれども、
本作を撮ったアンディ・テナントも99年の『アンナと王様』で評価された映像作家なので、
別に本作が初めて大きな企画だったというわけではないにしろ、完全に企画先行の映画になってしまいましたね。

この頃のリース・ウィザースプーンって、ハリウッドではホントに売れていて、
当時は“ラブコメの女王”として地位を確立していて、ギャラも高額化していた頃の出演作だったので、
ひょっとしたら本作も、彼女へのギャラで製作費の大半が費やされてしまったのではないでしょうか。

そもそも、この映画、原作はどうなっているのか知りませんが...
このストーリー自体が、恋愛映画としてかなりキツい。。。

どういうことかと言うと、特に映画の後半になるとメチャクチャになってしまう。
個人的にはヒロインが2人の男を前にして、どう立ち振る舞っていくのか注目していたのですが、
特にニューヨークでプロポーズを受けた、ニューヨーク市長の息子が果てしなく懐が深い(笑)。

一体、そんな彼に、フィアンセとしてどこが不満なのかと聞きたくなるキャラクターで、
彼に対する不満があったかどうかはともかく、ヒロインが下す決断の描き方がとても重要だったはずなんです。

ラブコメなだけあって、物語の結末は観客の多くが予想する通りになるはずなんです。
その予想を裏切るとなると、さすがにハードルが高くって、かなりの力技を使わないと無理ですからねぇ。
でも、予想通りの結末で構わないんです。観客の多くも、そういった結末を期待しているのですから。

だからこそ、こういう映画って、それまでのアプローチが難しい。
このアプローチで失敗すると、映画はガタガタと大きな音を立てて、崩れてしまいます。
ラブコメが映画として失敗するときは、往々にしてこのパターンなんですね。
そうなってしまうと、映画の納得性なんて生まれてこないし、観終わった後に妙な違和感を覚えてしまいます。

結果として、本作の場合はその失敗に見事にハマってしまっていて、
個人的にはこの違和感は、作り手が脚本の段階で気づいて、修正しないといけないレヴェルだと思う。

映画の後半は、見事に違和感だらけの映画になってしまっていて、
ヒロインの成り行きにまったく納得性が無く、映画のエンディングには思わず首をひねりたくなる。
そこを無理矢理、力技で乗り切ろうとするのですが、映画にそこまでの力強さはなく、
結果として残った印象は、「なんか...メチャクチャな映画だったなぁ・・・」ということだけ(苦笑)。

さすがにアンディ・テナント、これではダメでしょ・・・とツッコミの一つでも入れたくなる出来ですね。

こういう言い方は好きじゃないけど、
思わずリース・ウィザースプーンをラブコメに出演させるという企画だけが先行した映画って感じで、
あまりに中身が無さ過ぎますね。リース・ウィザースプーンのファンのためだけにある映画という印象です。

名子役、ダコタ・ファニングがヒロインの幼少時代という設定で
少しだけ出演しているのですが、この出演も無理矢理な感じで、面影がまるでゼロ(笑)。

色々と工夫したけど、上手くいかなかった映画という感じでもなく、
ただの企画先行型の中身が無い映画という印象ばかりが残ってしまったせいか、
どうにも僕は本作のことを良く言うことはできませんね。こういう映画は感心しません。

結局、リース・ウィザースプーンのブレイクも短時間で終わってしまい、
彼女自身もキャリアを意識してか、自らプロダクションを立ち上げたり、演技派女優に転身して、
05年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』でオスカーを獲得したりと、“ラブコメの女王”として、
ハリウッドで君臨する時間は、そう長く続くことはありませんでした。これは必然かもしれません。

やはり、こういう映画でヒロインに共感性を全く生むことができなかったことが痛いですね。
かなり自己中心的に動いているように見えてしまったせいか、おそらく女性からも共感は得づらいと思います。

しかし、敢えてこの映画を擁護するなら、
「故郷は大切にしよう!」というメッセージを、アメリカ南部の独特な暖かさをクロスオーヴァーさせて、
恋愛劇に調和させながら描いたあたりは良いと思う。特に欧米ではありそうで、無かったタイプの映画だ。
(少し言い過ぎかもしれませんが、05年の『エリザベスタウン』も似た傾向の映画でしたね・・・)

あと、どうでもいいけど・・・
日本の映画配給会社も、半ば本作はヒットが望めないと勝手に思っていたのか、
半分ヤッツケ仕事みたいな邦題を付けるのは、いい加減、やめて欲しい(笑)。
いくらねんでも、この邦題は映画の中身を完全に無視したタイトルで、あまりに酷い・・・(苦笑)。

世界的な興行収入はそこそこ良かったようですが、
日本では劇場公開時、そこまで大きな話題とならずに劇場公開が終了してしまいました。

まぁ・・・邦題によってヒットしていたなんては思わないけど、
この邦題では、全く違う内容の映画を想像してしまいますよね。なんか、悪い意味で足を引っ張った気がします。

(上映時間108分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 アンディ・テナント
製作 ストークリー・チャフィン
    ニール・H・モリッツ
原作 ダグラス・エボック
脚本 C・ジェイ・コックス
編集 アンドリュー・ダン
撮影 トロイ・タカキ
    トレイシー・ワドモア=スミス
音楽 ジョージ・フェントン
出演 リース・ウィザースプーン
    ジョシュ・ルーカス
    パトリック・デンプシー
    キャンディス・バーゲン
    メアリー・ケイ・プレイス
    フレッド・ウォード
    ジーン・スマート
    イーサン・エンブリー
    メラニー・リンスキー
    ダコタ・ファニング