ギター弾きの恋(1999年アメリカ)

Sweet And Lowdown

サマンサ・モートンって、カワイイですね〜(笑)。

もう個人的な意見のみで語りきっちゃいますけど、この映画は彼女に尽きます。
おそらくハッティ役に彼女をキャスティングしていなければ、僕はここまでこの映画に夢中になれなかっただろう。

映画は、ウディ・アレンの壮大なホラ話し。
確かに主人公が常に意識していたジャンゴ・ラインハルトは実在のジャズ・ギターリストだが、
主人公のエメット・レイはあくまで架空の人物。モデルとなる人物もおりません。

本作のウディ・アレンの上手いところは、ジャズへの造詣が深い自分までもがコメンテーターとして出演し、
複数の音楽評論家やジャズ・ミュージシャンにコメンテーターとして出演させ、インタビューしたこと。
あたかもエメットが実在の人物で、同時に伝説のミュージシャンであるかのような錯覚をもたらします。

そう、ある意味で本作でもウディ・アレンのスタイルって踏襲されていて、
全くありもしない壮大なホラ話しを、あたかも実話であるかのように、協力者を作って、
細部にわたってエピソードを作り、大真面目に語ってしまうなんて、実にユーモラスな映画と言えます。

まぁサマンサ・モートンの映画と言いながらも、
本作の主人公エメット・レイを演じたショーン・ペンのあまりに切ない芝居が印象的ですね。

ベタな感想ではありますが、映画のクライマックスで彼がギターを壊しながら、
「オレが間違ってたよ!」と泣き叫ぶシーンが、痛切に観客の心に迫るものがあると思います。
そう、あたかも伝記ドラマであるように見せますが、本作は立派な失恋映画なのですよね。
そういう意味では、世の男たちにも是非、観て頂きたい素敵な一本なんですけどね。。。

結局、この映画は彼が映画の中盤で言う、この台詞に集約されていると思います。
「オレは数多くの美女と付き合って、別れてきたが、未練は一切残さない」

確かにこの言葉は、エメット自身、真実の言葉であったのかもしれない。
性格的には強がりな典型でしたが、この言葉がウソであったなどという論拠はどこにもない。
しかしながら、口がきけないことを知って、散々、拒否して辛らつな言葉もハッティにかけてきましたが、
彼女との恋愛はエメットが手にした、数少ない運命の恋だったのでしょうね。
だからこそ、あのラストシーンが痛切に心に響くわけで、映画をより力強いものにしています。

それと、演じたショーン・ペンはさぞかし大変だったでしょうが、
録音されている演奏は吹き替えとは言え、ワンカットでエメットの凄腕を表現する、
ギターの演奏シーンも素晴らしいですね。独特な仕草や、体の動きまで実に凝っている。

この映画を通して感じたのは、“食べる”シーンの素晴らしさである。
食は生物の本能の一つとも言えますが、とにかくこの映画で目立つのは食事のシーンである。
サマンサ・モートン演じるハッティは幼い頃に出した高熱のせいで、言葉が発せられない女性である。
そんな彼女がこの上なくチャーミングに映るのは、豊かな感情表現のおかげなのですが、
特にその中でも彼女が食べ物を頬張るシーンが突出して、素晴らしく映っている。

この良さにウディ・アレンも気づいていたのか、何度も何度も登場してきます。
食事がデートの場面でよく使われるだけあって、相手とのひと時を楽しむのに絶好の場というわけですね。

自信過剰なエメットですが、彼は「オレは世界で二番目のギターリストだ」と公言します。
彼の中でのNo.1はベルギー出身のジャズ・ギターリスト、ジャンゴ・ラインハルト。
彼は主にヨーロッパ各地でジプシー生活をして、その名声を世界的に高めていきます。
1953年に43歳という若さ他界してしまいますが、今尚、根強い人気を誇るミュージシャンです。

この映画、惜しいのはジャンゴが最後にカメラに映ってしまうことなんですよね。
あくまで個人的な嗜好にしかすぎませんが、彼は映さない方が良かったと思います。
これは別にジャンゴを演じた役者の問題というわけではなく、誰であっても映らない方が良かったということ。

個人的には映画の最後でジャンゴを映すという選択をしたウディ・アレンが意外でしたね。
いつもの彼なら映さずに語るだけに留め、ジャンゴが届かない存在であることを強調していただろうに・・・。

よくこの映画はフェデリコ・フェリーニの『道』と比較されるのですが、
僕は『道』を本質的な恋愛映画と思って観たことがないので、あまり本作との共通項が感じられないかな。
前述したように、本作は立派な失恋映画なわけで、もっと後向きな映画であるような気がします。

ですから、いつもウディ・アレン映画なら、
「相変わらずバっカバカしい映画だなぁ〜」とニヤニヤするには丁度良いのですが、
本作は後悔だとか、うぬぼれるとか、悲観的な感情を楽しめる人には最高にオススメできる作品です(笑)。

いや、ホントにサマンサ・モートンがカワイイですわ(←この映画観ちゃったら、こればっか)。

(上映時間95分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ウディ・アレン
製作 ジーン・ドゥーマニアン
脚本 ウディ・アレン
撮影 フェイ・チャオ
音楽 ディック・ハイマン
出演 ショーン・ペン
    サマンサ・モートン
    ユマ・サーマン
    ウディ・アレン
    グレッチェン・モル
    アンソニー・ラパグリア
    ブライアン・マーキンソン

1999年度アカデミー主演男優賞(ショーン・ペン) ノミネート
1999年度アカデミー助演女優賞(サマンサ・モートン) ノミネート