サロゲート(2009年アメリカ)

Surrogates

VSI社が開発し、独占販売する“サロゲート”と呼ばれる、
身代わりロボットに依存する社会が形成された近未来を舞台に、社会を人間たちの手に戻すために、
抵抗する勢力が、“サロゲート”を攻撃することによって、オペレーターである人間までも殺害することができる、
武器を手にしたことから、“サロゲート”を使用する刑事が武器の行方を追う姿を描いたSFサスペンス。

監督は97年に『ブレーキ・ダウン』を製作して、予想外の高い評価を得た、
ジョナサン・モストウで00年の『U−571』のときといい、彼の監督作はつい期待をしてしまいます。

もはやハリウッドでもその勢いを失いかけてきたブルース・ウィリス主演作であり、
尚且つディズニー資本に頼った企画ということもあり、正直言って、僕は本作を観る前から、
そこまで大きく期待はしていなかったのですが、その甲斐あってか(?)、予想していたよりは面白かったです。

編集でかなりカットしたのか、上映時間が珍しくも、1時間30分を切るという短さなので、
実にアッサリと観ることができるのですが、全体的な分量不足は際立っているかもしれません。

しかしながら、それはあくまでボリューム的な物足りなさにしかすぎず、
決して映画の価値を大きく損ねるような致命傷ではなく、内容的な面白さで十分にカバーできる程度。
逆に本作の場合は、尺の短さを利用して、映画を前半からスピード感もって描いており、
作り手もかなり工夫を凝らしたような印象を受け、それなりによく考えられていることに感心しましたね。

ただ、どうやら製作サイドが期待していたような興行収入は叩き出せなかったらしく、
おそらく『アバター』が全世界的な大ヒットを飛ばした直後だったせいか、ああいったSF映画とまともに比較され、
いろいろな意味合いで物足りなさを感じられてしまったのかもしれませんね。こうなると本作に分(ぶ)はないです。

これだけネットが普及した現代社会に於いては、
本作で描かれた身代わりロボットが活躍する時代が、あながち現実離れしたようにも見えないあたりが怖くて、
例えば出会い系サイトなんか、見ず知らずの初対面の相手がやって来るわけで、昔からよくある話しですが、
実はプロフィールに書かれていた内容とは全然違う人物だったなんてことは、よくある話しだと思う。

「20代、最近、松坂 桃李に似ているとよく言われます!」なんて強気なこと書いていても、
実は10は年をサバ読んだハゲかかって、軽くメタボなオッサンだったということだってあるだろうし、
つまりは仮想現実の世界で身代わりな人格を作っているなんてことはよくある話しだろう。

この映画は、仮想現実が現実世界に置き換わったような話しで、
ジェームズ・クロムウェル演じる“サロゲート”を当初、開発した意図とは異なって、
人間たちが“サロゲート”に依存する社会を形成するようになってしまった弊害を描いているわけですね。
現実にこの“サロゲート”が開発・販売されれば、確かにこういう未来を迎えてしまうかもしれませんね。
でも、個人的には“サロゲート”に代わりに現実を生きてもらっても、嫌なことを身代わりになってもらう分には
良いだろうけど、その他の出来事を体験できないというのは、この上なく虚しさを感じてしまうでしょうね。

何せ自分でやって、自分で見て聞いて、自分で味わうという、
生きているからこそできる、人生の醍醐味を奪われてしまうわけですから、そりゃ勿体ないですよね。
(まぁ・・・僕自身も凄〜くモノグサな人間なので、何でも身代わりを立てたくなる気持ちも分かるのですがね。。。)

外出せずに身代わりロボットを遠隔操作することによって人生を謳歌するなんて、
確かに楽は楽でしょうが、なんか現実世界までゲーム感覚になってしまって、生きている実感ゼロですね(苦笑)。

さすがはジョナサン・モストウの演出なだけあってか、アクション・シーンはなかなかの迫力です。
特に僕は映画の中盤にあった、主人公の“サロゲート”が抵抗勢力である人間をヘリで追跡して、
凄まじい威力を持った銃で攻撃にあって、完全にコントロールを失って、“サロゲート”がいない地区へ墜落する
シーンは凄まじい迫力で、結構、生々しい描写だったことに驚きましたね。あれはホントに凄かったと思います。

それだけでなく、オーストラリア出身の女優さんであるラダ・ミッチェル演じる、
女性捜査官が実は悪党に乗っ取られていて、主人公が彼女を市街地で追い回すシーンも、
なかなか悪くないチェイス・シーンになっていて、このシークエンスで彼女が見せる超人的な動きも見物(笑)。

おそらくラダ・ミッチェル自身、あんなシーンを初めて演じたのでしょうが、
ジョナサン・モストウも半ばヤケになったかのように、彼女にああいう“何でもアリ”みたいなアクションを
演じさせるという力技に出るというのも、なんだか面白くって、映画を盛り上げるためには手段を選ばない感じだ。
(あんなピョンピョン飛び跳ねて、行き交う車を次から次へと飛び移れる能力が羨ましい・・・)

ちなみに主人公の妻役を演じたのはロザムンド・パイクで、
彼女は02年の『007/ダイ・アナザー・デイ』でボンドガールにも抜擢された女優さんで、
実はブルース・ウィリスよりも20歳以上、年下なのですが、何故かそこまでの年の差は感じませんでしたね。
但し、彼女はそれだけ期待される女優さんなのに本作でのこういった扱いは、あまりに可哀想だと思いますけどね。
(キャラクター設定やメイクのせいか実年齢よりもかなり上に見えた上に、出番が妙に少ない・・・)

ただ、もうブルース・ウィリスはこの手のアクション映画の主役を張り続けるには限界でしょ?

正直、この映画でもあまり激しいアクション・シーンには挑んでいないのですが、
それでも“サロゲート”の設定で人間を走って追跡するシーンがあって、結構、長いシーンだったのですが、
別に全てが年齢で説明がつくなんて言いませんが、やはり体力的にそうとうキツいシーンだったでしょうね。

やっぱりイメージって、スターダムを駆け上がるにあたって大切なんですね。
ブルース・ウィリスって、僕は別に芝居が下手な役者だという捉えは無かったのですが、
シリアスな映画やコメディ映画に出演しても褒められることが少なくって、チョット可哀想なんですよね。
おそらく僕が大好きな『ダイ・ハード』で演じたジョン・マクレーン刑事の残像と、今尚、闘っているのでしょう。
そういう意味では、50歳を過ぎてまでも本作のような映画の主役を演じるなんて、役者としては不遇なのかも。

まぁ・・・いろいろとありますが...
映画の序盤でブルース・ウィリスの“サロゲート”の髪形が不自然なのは、誰も触れないであげてください(笑)。

(上映時間88分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ジョナサン・モストウ
製作 デビッド・ホバーマン
    トッド・リーバーマン
    マックス・ハンデルマン
原作 ロバート・ウェンディティ
    フレッド・ウェルデル
脚本 マイケル・フェリス
    ジョン・ブランカトー
撮影 オリバー・ウッド
編集 ケビン・スティット
音楽 リチャード・マービン
出演 ブルース・ウィリス
    ラダ・ミッチェル
    ロザムンド・パイク
    ボリス・コジョー
    ジェームズ・フランシス・ギンティ
    ビング・レイムス
    ジェームズ・クロムウェル
    ジャック・ノーズワーシー