SUPER 8/スーパーエイト(2011年アメリカ)
Super 8
これは『未知との遭遇』と『グーニーズ』を足して2で割ったような映画ですね。
最近はハリウッドのヒットメーカーの一人として数えられるようになった、
J・J・エイブラムスが憧れのスティーブン・スピルバーグと初めてダッグを組み、
スピルバーグの映画会社アンブリンの資金協力を得て実現したキッズ・ムービーです。
物語の舞台は1979年で、映像からもどことなく古臭さを感じます。
映画のストーリーの骨格としては、ホントに『未知との遭遇』と『グーニーズ』を足して2で割ったところに、
若干、エイリアンの要素を加味したような内容となっており、どこか懐かしい雰囲気のある映画です。
子供たちが趣味で、ホラー映画を製作していたところ、
深夜の駅でたまたま遭遇した列車脱線事故をキッカケに、彼らが暮らす町で連続的に発生する、
不可解な事件の真相に、実は米軍が関与しており、知られざる大きな秘密があったという物語で、
子供たちが秘密を探りながら、無意識的に真相に近づいていくアドベンチャー性については、
まんま『グーニーズ』という感じで、アドベンチャーの感覚が好きな人なら、そこそこ楽しめる内容でしょう。
映画は1979年のスリーマイル島での原発事故後の物語なのですが、
映画の冒頭に映る、“ゼロ災”を示す掲示板の日数が「1日目」に変えるシーンが良いですね。
僕もモノづくりの事業所に勤めるだけに、こういうさり気ない演出が何とも気になります。
でも、僕が観る前に思っていたほど、J・J・エイブラムスって、冒険しない映像作家ですね。
本作なんかは良く言えば、堅実な作りで好感が持てるんだけど、これは悪く言えば、
無難な内容に終始したような感じで、もっと映画の中で遊び心があっても良かったかもしれませんね。
子供たちのグループの中で、唯一のヒロインを演じたエル・ファニングって子は、
『I am Sam/アイ・アム・サム』のダコタ・ファニングの実の妹さんなんですね。
04年の『ドア・イン・ザ・フロア』では幼い子供でしたが、もうこんなに大きくなっていたんですね(笑)。
まぁこの映画を観たら分かりますが、エル・ファニングも芝居が上手いですね。
特にヴァンパイアを演じるリハーサルで見せた表情や仕草など、並みの子役ではありません(笑)。
おそらくJ・J・エイブラムスも今回、スピルバーグとの仕事がそうとうに楽しかったのでしょうね。
本作なんかも、不必要なほどにスピルバーグへの敬愛の念を感じさせる作りになっており、
ラストシーンなんかは如何にもスピルバーグが撮りそうなラストって感じで、思わずニヤリとさせられます。
でも、僕にはどうしてもこれが引っかかるんですよねぇ〜。
そりゃ勿論、J・J・エイブラムスがスピルバーグを敬愛するのは構わないし、
多少、オマージュ的な部分はあっても良いとは思います。でも、何処かでオリジナリティが欲しい。
残念ながら本作はJ・J・エイブラムスが付加価値を付けたという感じがしないんですよね。
なんかJ・J・エイブラムスがスピルバーグの顔色をうかがいながら撮ったのではないかとすら思える。
(いや、そんなことはないのだろうけど...)
それは子供たちが趣味で映画作りをしているという設定から感じるんですね。
確かスピルバーグは幼い頃から、カメラを買い与えられ、幼少期からフィルム撮影をしていたらしく、
10代の頃には8mmカメラで撮影した短編フィルムを何本も完成させ、評判だったらしい。
まぁ生い立ちを考えれば、スピルバーグはかなり恵まれていたわけなんですけれどもね...。
それを考えれば、まるでスピルバーグの幼少期を重ね合わせたような時代設定で、
映画のクライマックスでは半ば無理矢理、親子愛に結び付ける手法もスピルバーグっぽい。
だからどこまでが、J・J・エイブラムスが自分で撮りたい映画になっているのか、よく分からないんですよね。
(まぁ・・・スピルバーグの模倣を本作で一番、実現したかったのかもしれないけど・・・)
でも、この親子愛は過剰だったなぁ。
特に女の子の父親がどうしようもない飲んだくれで、親子関係が上手くいっていないというのは、無理矢理ですね。
この辺はもっと自然に描いて欲しかったし、この映画の場合、ドラマ面で欲張る必要はどこにも無かったと思います。
映画の冒頭にある、貨物列車のクラッシュ・シーンにしても無駄に大袈裟で(笑)、
思わず「いくらなんでも、ここまでデカい事故にならんだろ・・・」とツッコミたくなりますが、
これはこれで、かつて映画にアトラクション性を出したスピルバーグへのオマージュから生まれたものでしょう。
まぁこういうのは僕も好きなんだけど、J・J・エイブラムスが一つ一つ納得して撮ったのかは疑問なんですよね。
あと、もう一つ。エイリアンのようなクリーチャーに男の子が捕らえられ、
男の子がクリーチャーに優しく話しかけるシーンはもっと工夫して欲しかったですね。
無理矢理に片付けられてしまうのですが、もっと納得性のある展開にして欲しかったですね。
J・J・エイブラムスは今やハリウッドを代表するヒットメーカーの一人でありますから、
発表作は都度期待されるようになると思うのですが、何かもっと突き抜けた魅力が欲しいですね。
やはり前述したように、もっと挑戦性のある映画を撮って欲しいと思うんですよねぇ。
厳しい言い方ではありますが、チョット本作、“守り”に入った感が強く残ってしまい、印象が良くありません。
なんか映画の雰囲気がスピルバーグが05年に撮った『宇宙戦争』とも似ているなぁと思っていたのですが、
そういえば『宇宙戦争』にはエル・ファニングの姉であるダコタ・ファニングが出演しておりましたね。
そう思って観れば...
やはり本作はJ・J・エイブラムスよりもスピルバーグのカラーの方が強く反映されているのかもしれません。
ですから、むしろスピルバーグの映画のファンの方が本作を楽しめるかもしれませんね。
(上映時間111分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 J・J・エイブラムス
製作 スティーブン・スピルバーグ
J・J・エイブラムス
ブライアン・バーク
脚本 J・J・エイブラムス
撮影 ラリー・フォン
編集 メリアン・ブランドン
メアリー・ジョー・マーキー
音楽 マイケル・ジアッキノ
出演 ジョエル・コートニー
エル・ファニング
カイル・チャンドラー
ライリー・グリフィス
ライアン・リー
ガブリエル・バッソ
ザック・ミルズ
ロン・エルダード
ノア・エメリッヒ
ジェシカ・タック
ジャック・アクセルロッド
ブルース・グリーンウッド