フェイク シティ ある男のルール(2008年アメリカ)
Street Kings
まぁ当たり障りの無い出来って感じもしますが、
同じジェームズ・エルロイの原作の作品としては、『L.A.コンフィデンシャル』と比べると、
映画の質としては落ちることが否めませんね。悪い意味で、中途半端さが目立つ作品です。
但し、映画の作りとして見せ場はハッキリとしているし、
劇中、何度か登場する銃撃戦でのカメラワークなど、臨場感を上手く演出できていますね。
監督のデビッド・エアーは脚本家出身のディレクターではありますが、
元々、01年の『トレーニング・デイ』などのシナリオを書いていただけに、
さすがに骨太な内容になるし、根深い人間の汚れた部分を描くのが、凄く上手いですね(笑)。
映画の主人公トムは数々の難事件を力づくで解決してきましたが、
彼が繰り広げた囮捜査は違法行為であるものが多く、警察内部でも彼は良く見られていませんでした。
そんな中、具体的な取り調べを受けたことがなかったのには、彼の上司ワンダーの存在が大きかったのです。
内務調査部のビックスがトムの身辺を捜査し始めたことをキッカケに、
ワンダーは一時的措置としてトムを苦情処理部へと異動させますが、
トムのかつての相棒、ワシントンがコンビニで射殺されたことに不審を抱いていたビックスは、
トムに接触を試みますが、ワシントンが目の前で惨殺されたことにトムは怒り心頭であり、
ディカントという協力者を得て、独断で危険なエリアへと踏み入っていきます。
ここで一つミソとなるのは...
実はトムはワシントンと衝突していて、ワシントンが射殺されたコンビニに於いて、
トムは目の前に居たわけで、ワシントンをどうしても殴りたかった・・・という事実。
トムの尾行に気づいたワシントンはトムに襲い掛かりますが、
そうこうしている間に2人は、コンビニ押し入り強盗と遭遇してしまいます。
しかし、この事実が検察などに明るみになると、
ワシントンと衝突していた経緯があるトムは一気に不利になってしまい、
トムがコンビニ強盗を装った2人組の男を雇い、“蜂の巣”にするよう指示していたのではないかと、
どうしても、トムに不利なように働くよう、とても厳しい状況になっていたのです。
映画のテンポはなかなか良く、アクション映画としての見せ場は凝縮されており、
一連のアクション・シーンは近年の映画としては、出色の出来と言っていいでしょうね。
特にやはり98年の『プライベート・ライアン』以降、
こういった銃撃戦のスタンダードが変わってしまったことを痛感するのですが、
音響が抜群に素晴らしくなったせいか、銃撃シーンでの音が生々しくて素晴らしいですね。
コンビニでの襲撃シーンはおろか、
冒頭の韓国人の屋敷に押し入るシーン、そして謎の2人の男とディカントと一緒に接触しに行き、
結局、銃撃戦となってしまうシーンなど、とにかく観客に体感させる臨場感が凄いですね。
こういったレヴェルで表現できるようになったのは、映画界の大きな功績だと思います。
少しダークなアクション映画が好きな人にはオススメなのですが、
僕は従来のジェームズ・エルロイの小説の世界観が好きな人にはオススメし難い作品だと思うんですよねぇ。
少なくとも、前述したように『L.A.コンフィデンシャル』などとは、
映画の方向性がまるで違うし、やはり本作はつまるところ、アクション映画になっているように思います。
腐敗体質にまみれ、精神的に追い詰められていく主人公の姿にクローズアップしますが、
真実を追究する美学は本作からは強く感じられず、やはり映画のポイントがアクションになっている気がします。
(勘違いしないで欲しい・・・このこと自体は僕は別に悪いことだとは思わない)
主演のキアヌ・リーブスはまぁフツーかな。。。
映画の冒頭、いきなり起床後、嘔吐したり、韓国人にボコボコにされたり、
「オイオイ、大丈夫かよォ〜」と心配にさせられる弱々しい主人公でしたが、
次第にどうしようもない暴力刑事というイメージが、映画の終盤に覆っていくのは、良かったと思いますね。
あくまでサスペンス映画としての磨きをかけるのであれば、
やはりフォレスト・ウィテカー演じるワンダーをもっと強く描いて欲しかったですね。
クライマックスで自宅の壁をブチ壊させてまで、トムに懇願するのですが、この姿を見せるのは逆効果。
ハッキリ言って、このままではひじょうに中途半端で、映画に強さが吹き込まれませんね。
まぁどちらかと言えば、この映画は日本人の大好きな(笑)、グレーゾーンを描いているのですが、
トムは自分がそういったグレーな仕事を進んでこなすというから、確かに現実的には“便利屋”なんですね。
派手な目立つような仕事ではなく、敢えてそういった誰もやりたがらない、
リスクの伴うグレーな仕事をやるというのだから、確かに彼が自認する通り、
ロサンゼルス警察はトムのような刑事が必要であるということ自体を、否定しようとはしません。
ただ、そういった存在であろうとも、
モミ消しの対象としてしまう連中の策略は末恐ろしいものではありますが、
どうしてもこの映画の場合、“悪”の存在が中途半端で“倒し甲斐”に欠けるのが大きなネックですね。
どうでもいいけど...キアヌ・リーブスって、あんまり10年前から変わってないですね。。。
(上映時間108分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
日本公開時[PG−12]
監督 デビッド・エアー
製作 ルーカス・フォスター
アレクサンドラ・ミルチャン
アーウィン・ストフ
原案 ジェームズ・エルロイ
脚本 ジェームズ・エルロイ
カート・ウィマー
ジェイミー・モス
撮影 ガブリエル・ベリスタイン
編集 ジェフリー・フォード
音楽 グレーム・レヴェル
出演 キアヌ・リーブス
フォレスト・ウィテカー
ヒュー・ローリー
クリス・エヴァンス
コモン
ザ・ゲーム
マルタ・イガレータ
ナオミ・ハリス
ジェイ・モーア