スティング(1973年アメリカ)
Sting
69年の『明日に向って撃て!』のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビが
再結集して詐欺師と裏世界の大物ロネガンの間で繰り広げられるコンゲームを描いた、クライム・コメディの名作。
監督は『明日に向って撃て!』と同様にジョージ・ロイ・ヒルで、相変わらずの楽天的なムードの作品だ。
ジョージ・ロイ・ヒルからしても、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードをキャスティングできたことは幸運で、
安定感ある作品に仕上げることができてはいるけど、僕の中ではアカデミー作品賞は少々やり過ぎな印象もあるかな。
確かに面白いとは思うし、映画のテンポも良く、2時間を超える上映時間だというのにサクッと観れてしまう。
主演のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビも息はピッタリで、お互いに実に楽しそうに演じている。
そんな彼らのターゲットとなったロネガンを演じたロバート・ショーは、常に厳しい表情で悪役に徹しているのも良い。
映画はロバート・レッドフォード演じる詐欺師の若者フッカーが、共に詐欺師である黒人のルーサーと
“誤って”大物ロネガンが経営する売上金を運ぶ男の金をすり変えてしまう。激怒したロネガンはシカゴの手下に
盗んだフッカーとルーサーを殺してでも金を奪い返せと指示し、ルーサーはあえなく自宅で殺されてしまう。
それを見て危機感を抱くと同時に復讐に燃えたフッカーは、有名な詐欺師である年上のゴンドルフを頼って、
ロネガンに復讐する決意を告げる。そこで彼らが考えた復讐案は、ニセの場外馬券場を経営するように見せかけ、
ロネガンにイカサマを吹っ掛けて多額の資金を投入させて、それを合法的に奪い取ろうとする姿をコミカルに描きます。
まぁ、本作自体がドンデン返しのある名画として有名になり過ぎたために、期待値は高くなりがちですが、
そうしてドンデン返しありきの映画と思って観ると、そこまで楽しめないかもしれません。結局はラストのドンデン返しに
至るまでにゴンドルフやフッカーが、如何に用意周到に準備してロネガンと駆け引きするかを楽しむ内容なのですから。
それに、ほぼほぼ予想通りのドンデン返しで、予想通りのオチで映画が落ち着くという感じなので、
ビックリするようなラストというほどでもない。正直、このオチにあまり期待値を高めない方が賢明かと思いますね。
本作のメインテーマの曲として使われたスコット・ジョップリンの The Entertainer(ジ・エンターティナー)は
未だに数多くのメディアで使われることがある曲ですが、いわゆるラグタイムと呼ばれるジャンルの名曲の一つだ。
確か本作で使われた理由って、作曲から70年が経過して著作権が切れていたために使い易かったみたいな話しを
聞いたことがあるのですが、実際にそうなのかは不明です。とは言え、本作で使われたことで再注目されました。
70年代にラグタイムの音楽自体が再注目を浴びることになり、81年にミロシュ・フォアマンが『ラグタイム』という
映画を撮っているくらいで、20世紀初頭のラグタイム全盛期の様子を描いているくらいで、それなりに流行しました。
ジョージ・ロイ・ヒルがどこまで狙っていたのかは分かりませんが、本作でこの曲を取り上げた影響はデカかったですね。
そういう目の付けどころは良かったとは思うんだけど、映画史に残る名作かと聞かれると...
個人的には「それは微妙かなぁ」というのが本音。フツーに面白い映画ではあるんだけど、突き抜けるものがない。
欲を言えば、悪党のロネガンの描き方が中途半端に感じる部分があって、もっと執拗で恐ろしい存在にして欲しい。
この辺はデビッド・S・ウォードの脚本の段階からそうなのですが、もう少し全体的にメリハリが欲しいところ。
複数のチャプターに分けて撮ったのも、敢えて絵巻物というか...レトロ感を出したかったのかもしれませんが、
ロネガンの恐ろしさをもっとしっかりと描いていれば、映画のラストの痛快さというのが増しただろうし、復讐を達成した
充実感というものが表現できたと思う。もう少しオーソドックスにやっていいところはオーソドックスで良かったかなぁ。
それにしても...いくらニューヨークの大物であるロネガンをやっつけるためとは言え、
完全にロネガンを信用させるための場外馬券場を作って、何から何まで本物に見せるためにスゴい投資している。
この発想自体がスゴいですね。現代的な発想からしたら、“タイパ”や“コスパ”の悪い復讐方法にしか見えないかも。
まぁ、フッカーからしてもロネガンの金を取ることが目的というわけではなく、
あくまで相棒であり信頼するルーサーを殺されたことに対する復讐心からやったことなので、コストの問題ではない。
そんなフッカーの純粋な気持ちにゴンドルフも応える覚悟を決めたわけで、ゴンドルフからしてもリスクのある仕事だ。
それでも協力して、ロネガンをなんとかして信じ込ませたいとする、詐欺師グループが結集しての抵抗である。
ゴンドルフの計画はあまりに大掛かりであったためにエキストラも必要だし、準備資金も多額の投資が必要でした。
エキストラにも謝礼を払う必要があるわけで、1930年代当時の情勢を考えると、これはスゴいことをやっていると思う。
だからこそ、ラストでの爽快感も含めて、もっとスゴいことをやっているんだぞという気概を見せて欲しかった。
フッカーに危険がないわけではなかった。それは映画の終盤に描かれる、殺し屋ロレッタの存在だ。
フッカーがいつも出入りしていたカフェのレジとして突如勤務を始めた女性が気になりますが、それがロレッタでした。
どこか素っ気ない態度が逆にフッカーの心に触れて、フッカーは次第にロレッタに惹かれ近づこうとします。
ロレッタはロネガンが送り込んだ刺客だったわけですが、少々、彼女の登場は映画全体見渡しても唐突だったかな。
ロネガンが刺客を送り込む可能性は十分にあったし、フッカーも用心する必要があった状況なんだけど、
あまりに唐突に現れて、アッサリとロレッタに関するエピソードは収束してしまうので、これでは意味が弱いように思う。
ゴンドルフの仲間であるアイリーン・ブレナン演じるビリーという女性の存在もありますけど、インパクトを残せそうな
女性キャラクターとしてロレッタが登場してきただけに、このアッサリ収束させてしまったのは勿体なかったなぁ。
タイトルは日本語のニュアンスで言えば、「いっちょカモろうぜ!」みたいな感じらしい。
正にそんな内容の映画ではありますが、クライマックスの騙しの一手は結構な力技に出たようにも見えた。
個人的にはもっと頭を使った騙し合いになるかと思いきや、混乱の中でカモるという結構なドタバタした終わり方です。
まぁ、ロネガンはニューヨークの大物という設定で現地の刑事を買収しているという設定なので、
それなりに警戒していたことを思うと、当然の反応なのかもしれませんけど、もっと知的なトリックなのかと思っていた。
それなりに投資して大掛かりな準備を要した作戦だっただけに、後始末も大変そうですね(笑)。
映画ではさり気なく、ロネガンが退去してから喜び合った後に仲間たちが後片付けを始める姿を描いていますが、
詐欺を成功させるには、この手際の良さが必要で本作のジョージ・ロイ・ヒルはこういったところに抜かりはない。
しかし、一方で警戒心の強いロネガンがこのトリックに騙されて、途中で気付かないのか?という疑問もあるけど・・・。
長い映画の歴史の中で、古くからドンデン返しを“売り”とした作品は数多くありましたけど、
本作は70年代というハリウッドでもニューシネマ・ムーブメントが席巻した動乱と混迷の時期だったからこそ、
本作のようなセピア調にレトロ感を強調した作品が、逆に当時の映画ファンにとっては新鮮に映ったのかもしれない。
(そう思うと、同じく73年に敢えて白黒で撮影した『ペーパー・ムーン』も高く評価されていましたっけ)
そしてオスカーまでも獲得したという事実は、そういったニューシネマ・ムーブメントの反動だったのかもしれません。
やはり当時はアメリカン・ニューシネマに対する抵抗もあったでしょうし、どちらかと言えば暗く重たい内容の映画が
多かった時期ですので、古きの中に新しさを演出するみたいな発想が、一際異彩を放つように見えたのかもしれない。
ちなみに83年に『スティング2』なる作品があるのですが、これはホントに本作の続編らしい。
僕は未見ですけど、かつてレンタルビデオ屋に置かれていたのを見たことがあります。キャストは全く異なりますが。
監督も交代し舞台背景も1940年代らしいのですが、どうやら脚本のデビッド・S・ウォードは書いているようで、
本作で描かれたフッカーとゴンドルフの詐欺師コンビの“10年後”を描いた作品らしく、今や視聴困難な作品だ。
ポール・ニューマンやロバート・レッドフォードが出演していないこともありますが、
この続編はあまりヒットしなかったところを見るに、第1作のインパクトを超えることはないと映ったのかもしれません。
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードはハリウッドでも名コンビとして知られていますが、
この2人が共演した作品としては、個人的には『明日に向って撃て!』の方が映画史的な価値は高いと思います。
本作はどちらかと言えば、エンターテイメントとして楽しめる仕上がりになっていて、カリスマ性は感じないかなぁ。
とは言え、73年度の映画賞レースではもっぱら『エクソシスト』の前評判が高かったらしいのですが、
そんな中でまるでフッカーとゴンドルフがカモったように、本作はオスカー(作品賞)をもさらっていったようですね。
(上映時間129分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
監督 ジョージ・ロイ・ヒル
製作 トニー・ビル
マイケル・S・フィリップス
ジュリア・フィリップス
脚本 デビッド・S・ウォード
撮影 ロバート・サーティス
美術 ヘンリー・バムステッド
編集 ウィリアム・レイノルズ
音楽 マービン・ハムリッシュ
出演 ポール・ニューマン
ロバート・レッドフォード
ロバート・ショー
チャールズ・ダーニング
アイリーン・ブレナン
レイ・ウォルストン
サリー・カークランド
ロバート・アール・ジョーンズ
1973年度アカデミー作品賞 受賞
1973年度アカデミー主演男優賞(ロバート・レッドフォード) ノミネート
1973年度アカデミー監督賞(ジョージ・ロイ・ヒル) 受賞
1973年度アカデミーオリジナル脚本賞(デビッド・S・ウォード) 受賞
1973年度アカデミー撮影賞(ロバート・サーティス) ノミネート
1973年度アカデミーミュージカル映画音楽賞(マービン・ハムリッシュ) 受賞
1973年度アカデミー美術監督・装置賞 受賞
1973年度アカデミー衣裳デザイン賞 受賞
1973年度アカデミー音響賞 受賞
1973年度アカデミー編集賞(ウィリアム・レイノルズ) ノミネート