スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980年アメリカ)
Star Wars : Episode X The Empire Strikes Back
世界的に大ヒットした『スター・ウォーズ』シリーズの第2作であり、“エピソード5”にあたる作品。
本作からはジョージ・ルーカスがメガホンを取ることをやめて、監督はアービン・カーシュナーに交代した。
そのアービン・カーシュナーはキャリアの長い人ではありましたが、ヨーロッパで下積み時代を過ぎていて、
70年代後半からハリウッド資本で映画を撮り始めていたことで、このキャリアがジョージ・ルーカスに認められたらしい。
おそらくハリウッドのしきたりにドップリと浸かったディレクターを起用したいとは思っていなかったのだろう。
そのおかげ(?)なのか、アービン・カーシュナーは本作以降はアクション映画を主体に活動し始めましたからねぇ。
あまり細かい部分をケアできるタイプのディレクターだとは思いませんが、それでも本作はスゴく頑張ったと思います。
ただ、欲を言えば、映画のエンジンがかかるのがチョット遅かった印象はある。
ストーリーの都合上、仕方ない部分も大きかったけど、映画の序盤で行方不明になったルークを探したり、
帝国軍が追跡に失敗してダース・ベイダーが司令官を粛清していくエピソードとかは、少々ダラダラしてしまったかと。
とは言え、これは“繋ぎ”のエピソードとしては極めて優秀な作品であって、もっと称賛されて良かったと思う。
構想を最初っから練っていたジョージ・ルーカスが監督するならまだしも、この“繋ぎ”の仕事を他のディレクターが
務めることは極めて難易度が高く、映画の始まり方と終わり方、いずれも間違えると価値を大きく損ねてしまうからだ。
アービン・カーシュナーはそこを実に上手く仕上げていて、始まりも終わりも致命的なミステイクは無かったと思います。
結果的にはアービン・カーシュナーに監督を任せたのは正解だったと思うし、“エピソード4”にあったような
手作り感は本作では希薄になり、映画自体のスケール感も格段に大きくなり、シリーズの分岐点だったと思います。
本作でスケールを大きく描いたおかげで、“エピソード4”と比べると格段にエンターテイメント性が増しました。
本作では第1作以上に、レイア姫をめぐるロマンスが直接的にクロークアップされて描かれている。
特に映画の後半までハン・ソロと行動する時間が長くなった関係からか、レイア姫はハン・ソロとの愛を深めていく。
やれハン・ソロが先に船から離れるか否かで口論は始まったかと思えば、突如としてハン・ソロのアプローチが
積極的になっていき、レイア姫とのロマンスの本命がハン・ソロに絞られてくるのですが、そこにルークが帰ってくる。
この塩梅が丁度良くって、これは用意された脚本のクオリティも第1作と比較すると、劇的に上がったのかもしれない。
ちなみに本作の脚本にローレンス・カスダンも加わっており、彼は『インディ・ジョーンズ』シリーズでも脚本を担当します。
まぁ、どうしてもレイア姫を取り合うエピソードを描かなければならないわけではないのだけれども、
本作はメロドラマがベースとなっていることもあって、やはり未来を獲得するための戦争を描いた作品とは言えど、
彼らの未来に直接的に関わる愛にまつわるエピソードも不可欠な存在にしなければいけなかっただろうし、
やはりそれでこそ9部作という長編であったという意義になる。よく考えられた“繋ぎ”のシナリオだったと思います。
そして、アービン・カーシュナーもシナリオに頼らずに映画の醍醐味を吹き込むことを怠らなかったですね。
帝国軍の襲撃が本格的に始まるあたりから、映画のエンジンがかかったようにテンションが高くなっていきます。
ヨーダを頼ってフォースを効果的に使う訓練を受けてきたルークが、ダース・ベイダーと対決する剣術も見応えがあり、
なんでもアッという間に切ってしまうライトセーバーで、ルークが右手を切り落とされてしまうのは衝撃的ですらある。
本作も後年に“特別編”としてCGを使って再編集されたヴァージョンが作られましたが、
これはCGを使うとまるで違う世界観となったようで、今はこの“特別編”がシリーズのスタンダードになっています。
この映画ではハン・ソロの旧友でカルリジアンという男が統治するクラウド・シティが描かれている。
雲の惑星とでも言うべき地に、都市が形成されているのですが、この発想が近未来的でデザインも素晴らしい。
こういうのを観ると、やっぱりジョージ・ルーカスの考えていたことは、かなり先進的でいながら具体的であったと思う。
勿論、SF小説などは数多く発刊されていたし、似たようなことを構想していた人はいたでしょうけど、
ジョージ・ルーカスこそがそのヴィジョンを見事に具現化させた映画人であり、その行動力には感動すら覚える。
そして、そんなジョージ・ルーカスのデザインを映画の中に組み込み、具現化の原動力となったスタッフたちもスゴい。
このクラウド・シティの発想は、後々のアニメーションや映画に多大なインスピレーションを与えたと思います。
この描写だけで、当時のジョージ・ルーカスはハリウッドでも他の追従を許さない存在であったとさえ言えると思います。
このカルリジアン、ハン・ソロと仲が良いんだか悪いんだかが、サッパリ分からないキャラクターではあるけど、
長い付き合いであることは明白で、地味に次作の『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』へつなぐ重要なキャラクターだ。
演じるビリー・ディー・ウィリアムズもハリソン・フォードよりもガッチリした体型で、なんだか強そうに見えますね(笑)。
ちなみに本作で初めてヨーダが登場してきます。このヨーダとの出会いにはニヤリとさせられる。
やはりルークがフォースを会得する意味での師匠がヨーダなわけですから、これは大きなポイントとなる出会いだ。
個人的にはもう少しヨーダとの出会いには、エピソードを引っ張っても良かったと思いますが、アッサリと登場します。
まぁ、ジョージ・ルーカスも余計なところに時間をかける気はなく、映画をコンパクトにまとめたかったのでしょうね。
ちなみにルークを演じたマーク・ハミルは“エピソード4”から“エピソード6”まで主演を務めましたが、
実は前作の撮影終了後に私生活で交通事故に見舞われて、顔面も負傷してしまう大怪我を負ってしまったことで
整形手術を受けており、さすがに何事も無かったように撮影することは難しく、映画の冒頭でルークは襲われて、
顔面を負傷したという設定にしたようですね。ここは脚本に付け加えた設定のようですが、仕方のない措置でした。
そのせいか、心なしかルークの顔がアップになるシーンは少ないような気がしますし、
映画の中盤はルークがヨーダの修行を受けているせいか、メイン・ストーリーから外れている時間が長い気がします。
ただ、戻ってきたら戻ってきたで、今度はハン・ソロとレイア姫の奪い合いをやっているような位置づけで、
どこまでがジョージ・ルーカスの意図するものだったのかはよく分からない。ただ、一つだけ言えることがあるとすれば、
レイア姫はいくらなんでも2人の男それぞれに思わせぶりな態度をとり過ぎだということだ(笑)。自由奔放過ぎる(笑)。
(このレイア姫、ハン・ソロ、ルークの三角関係というのは、次作への伏線となる部分ではあるのですが・・・)
前作以上にロマンス色は強くなっているし、映画の中盤はハン・ソロとレイア姫が行動を共にする時間が長いため、
てっきり“そっち”に心が傾いているのかと思いきや、ルークが合流してきたら、そんなわけでもない謎の行動をとる。
レイア姫は革命軍のリーダーというアドレナリン出まくりの役回りだったから、気が多かったのかもしれませんがね・・・。
ただ、撮影当時のマーク・ハミルはどちらかと言えば童顔で、本作のルーク役にキャストされたようなものですから、
既に大人な俳優のイメージで売っていたハリソン・フォードと並んでしまうと、かなりの年齢差があるように見えますね。
そんな2人の間でレイア姫が揺れ動くという設定なのですが...さすがにここは若干、無理があったかもしれない。
レイア姫から見れば、常にハン・ソロの気を引くために、意図的にルークにも近づいていたようにも見えてしまうのです。
そうなってくると、彼らのロマンスを純粋な気持ちで観るのが難しく、何かドロドロとしたものがあるように見えてきます。
さすがはスペースオペラ、“エピソード4”よりはドラマ描写で微妙なニュアンスを残してはいますね。
そういう意味でも、やっぱりアービン・カーシュナーに監督を任せて正解だったのかも。大人な世界を垣間見せてるし。
それにしても...本作で描かれるダース・ベイダーも自分の意に沿わない部下たちを
情け容赦なく粛清していくという発想は、完全なる“恐怖政治”。現代社会の感覚では、部下は付いてきませんね。
現実には恐怖政治による支配というのはなかなか長続きせず、内部の不満分子によるクーデターの原因となり、
アッサリと政権交代する印象があるのですが、本作に登場する帝国軍は真面目に皇帝の言うことに従っていますね。
前述した通り、本作は“エピソード6”へと上手くつないだ優秀な作品だったと思います。
これはこれでとても難しい仕事であり、アービン・カーシュナーの大胆なアプローチが見事にマッチしたのでしょう。
そして“エピソード6”への伏線となっているシーンも多く含まれており、これを見なきゃ次作は楽しめません。
そういう意味では、ジョージ・ルーカスの狙い通りに仕上がった、正しく快心の一作だったのではないでしょうか。
(上映時間124分)
私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点
監督 アービン・カーシュナー
製作 ゲーリー・カーツ
脚本 リー・ブラケット
ローレンス・カスダン
撮影 ピーター・サシツキー
特撮 ブライアン・ジョンソン
リチャード・エドランド
デニス・ミューレン
ILM
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 マーク・ハミル
ハリソン・フォード
キャリー・フィッシャー
アンソニー・ダニエルズ
ビリー・ディー・ウィリアムズ
デビッド・プラウズ
ピーター・メイヒュー
フランク・オズ
ケニー・ベイカー
アレック・ギネス
1980年度アカデミー作曲賞(ジョン・ウィリアムズ) ノミネート
1980年度アカデミー美術監督・装置賞 ノミネート
1980年度アカデミー特別業績賞 受賞
1980年度アカデミー音響賞 受賞
1980年度イギリス・アカデミー賞作曲賞(ジョン・ウィリアムズ) 受賞