スニーカーズ(1992年アメリカ)

Sneakers

1960年代後半、遊び感覚で情報操作に勤しんで、
悪さを働いていたマーティとコズモが、チョットした油断から警察に突入され、
マーティは難を逃れるが、コズモは警察に逮捕され、獄死したと伝えられる。

時は過ぎ、名前を変え、ハイテク機器を操り、
クライアントの会社に忍び込み、その会社の警備システムの不備を指摘するコンサルティング会社を
経営していたマーティの元に、NSA(国家安全保障局)を名乗る男2人から、暗号解読機の強奪を依頼される。

知られざる過去をネタに2人から脅されたマーティは、
仲間と多額の報酬を賭けて、とある数学家が開発した万能暗号解読機の盗みに挑むものの、
マーティが予想していなかったカラクリが隠されていることが、明らかになるまでを描いたサスペンス映画。

監督は89年に『フィールド・オブ・ドリームス』で高く評価された、
フィル・アルデン・ロビンソンで、やはり彼はこういったサスペンス映画が好きなんですかね。

02年に、本作よりも更に規模の大きなサスペンス映画である、
“ジャック・ライアン・シリーズ”の『トータル・フィアーズ』を撮って、やはり失敗作に終わってしまうのですが、
本作や『トータル・フィアーズ』のような陰謀が絡むサスペンス映画が好きだということなんでしょうね。
でなければ、寡作な映画監督とは言え、ここまで続けて、こういった題材を選ばないと思います。

ロバート・レッドフォード、シドニー・ポワチエと当時としては、
かなり異例と思われるぐらいの豪華キャストを擁した企画であり、製作費もそれなりにかかったでしょうね。

まぁ、映画の細部に甘さはあるし、納得性に欠ける部分もあるのだけれども、
僕は本作、気軽に楽しめるサスペンス映画という意味合いでは、及第点レヴェルの作品だと思います。
少なくとも『トータル・フィアーズ』よりは、こっちの方が出来の良い映画として評価できるでしょう。

勿論、本作製作から既に20年以上の年月が経過していますし、
物事の考え方の基本は変わらないとは言え、映画に登場したハイテク装置の大半は時代遅れなもの。
ですから、映画を観るときは当たり前ですが、あくまで1992年当時の映画という意識で見なければなりません。

名画とは古びないものですが、こういう映画って、
映画で描かれるアイテム自体が古びちゃったりしているせいか、どうにも不利な面はありますねぇ。

今は亡きリバー・フェニックスも19歳の少年役で出演しておりますが、
おそらくシドニー・ポワチエとのつながりでしょうね。まだ少年の面影を残していて、実に瑞々しい。
本作撮影終了してから約1年後にドラッグ中毒で他界してしまっただけに、どこか切ないですね。

個人的にはシドニー・ポワチエ演じるクリースが元CIA捜査官という設定なのですが、
彼にも何か過去があってCIAを退職したことを匂わせてはいるのですが、ハッキリと描かなかったり、
元CIA捜査官を想起させる立ち振る舞いの一つでも描いていれば、また映画は変わっていたと思うんですよね。
この映画に於けるクリースって、とっても重要な脇役キャラクターだと思うのですが、どうも今一つな印象。
演じるシドニー・ポワチエが良かっただけで、彼の描写そのものはそこまで良いものだとは思えなかったですね。

それと、欲を言えば、コズモを演じたベン・キングズレーもほぼチョイ役で勿体ない。
もう少しメイン・ストーリーにしっかり絡んでくるキャラクターであれば、面白かったんですがねぇ・・・。

しかし、暗号を解読するためのツールを開発することは実際に行われていたようで、
特に米ソ冷戦の時代は、かなり熾烈な競争があったらしく、スパイが暗躍していた過去もあるとか。。。

それを考えれば、本作で描かれたようなことは普通にありうるとは思いますが、
本作で描かれたことで目新しいことと言えば、さすがに米ソ冷戦が空けた時代の映画なせいか、
ロシア人がすっかりアメリカに対して友好的な態度で接しているように描かれており、
主人公のマーティも古くから、ソ連の高官と通じていたかのような描き方をしているのが印象的ですね。

これは言ってしまえば、時代が変わったことを象徴しているわけで、
80年代以前の映画では描くことができない流れと言っても過言ではないでしょうね。

撮影当時、既に55歳という年齢だったせいか、
ロバート・レッドフォードもアクション・シーンは皆無であり、動きもどこか遅い(笑)。
かつての恋人を思わせるような女性とのロマンスの香りも、かなり抑えられており、すっかり老いてますね(笑)。

そして、このマーティという男がまた間抜け(笑)。
ハイテク機器を操って、失敗が許されない業務を遂行しているというのに、
クライアントのことをよく調べずに、気づけば危険な仕事に手を染めているというあたりが、凄まじく間抜けだ。
こういう言い方は申し訳ないが、この詰めの甘さが、どうしても彼が凄腕の職人だとは思えない要因だ。

この辺はおそらくフィル・アルデン・ロビンソンもかなり気を配った演出をしており、
違和感がない程度に、破綻がないように気を配って、映画全体のバランスを整えたいという意図が伝わってくる。
こういう丁寧な部分があるのは、本作の良いところであり、ここはもっと褒められても良かったと思う。

但し、ラストシーンが突然、コメディ映画のように軽くなってしまっていて、勿体ない。
個人的にはもっと手堅く映画を〆て欲しかったし、この軽さが完全に映画の足元をすくっている。

次から次へと自分の願望を述べるなんて、どうしてこんな軽いエンディングを選んだのだろうか?
せっかく、ここまでギリギリのところでバランスをとっていたのに、ここで雑な映画の〆としてしまったのだろうか。

というわけで、あまり細かい部分を気にしなければ、それなりに楽しめる映画です。

凄まじく緊張感みなぎる映画というわけでも、国家レヴェルでの陰謀を描いた、
スケールのデカい映画というわけでもないのですが、相応に楽しめるようには配慮されており、
エンターテイメントとしては最低限の役割は果たした映画と言っていいかもしれません。
だからこそ、映画のラストシーンが勿体ない。もう少し、しっかりしたラストであれば、更に良くなっていたでしょう。

ところでシドニー・ポワチエがロバート・レッドフォードの10歳年上と知って、またビックリでした(笑)。

(上映時間125分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 フィル・アルデン・ロビンソン
製作 ウォルター・F・パークス
    ローレンス・ラスカー
脚本 フィル・アルデン・ロビンソン
    ローレンス・ラスカー
撮影 ジョン・リンドレー
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ロバート・レッドフォード
    シドニー・ポワチエ
    ダン・エイクロイド
    リバー・フェニックス
    デビッド・ストラザーン
    メアリー・マクドネル
    ベン・キングズレー
    ジェームズ・アール・ジョーンズ
    ゲイリー・ハーシュバーガー
    ジョジョ・マール
    スティーブン・トボロウスキー