スラップ・ショット(1977年アメリカ)

Slap Shot

落ちぶれたアイスホッケー・チームの選手兼任コーチが、
チームを鼓舞して勝たせるために、相手チームへルール無視した乱闘を仕掛けることで、
チームの連敗を脱出させ、不人気だったチームを人気チームへと変えさせようとする姿を描いたコメディ・ドラマ。

69年の『明日に向って撃て!』で名コンビぶりを発揮した、
ジョージ・ロイ・ヒルとポール・ニューマンが再びタッグを組み、ジョージ・ロイ・ヒルの楽天的な演出と、
撮影当時、既に50歳を過ぎていたものの、暴力的なプレーを辞さないベテラン選手を演じています。

ジョージ・ロイ・ヒルが描きたかったことは、なんとなくですが分かりますけど、
これは個人的にはノリ切れなかった作品になってしまった。この内容ならば、もっと簡潔に描いて欲しかった。

そもそも、「ルール違反スレスレのラフプレーで、相手チームのペースを乱す」というのが、
主人公の狙いであったように思うのですが、これはルール違反スレスレではなく、完全にルール違反。
事実、劇中でも幾度となく退場になるし、試合によっては警察も動き出すという有様で、妙に混沌としている。
これがジョージ・ロイ・ヒル持ち前の楽天的なペースに上手く調和してくれれば良かったのだけれども、
どこか特徴のない映画になってしまい、ほぼシナリオの面白さだけで成り立たせようとした映画になっている。

信じられないぐらい、男だけの世界で男の勝手な視点を描いた内容なのですが、
これが驚くことに女性脚本家が執筆したシナリオだということは、なんとも興味深い。
ですが、残念ながら本作が持つ魅力というのは、ここだけでシナリオ以上の魅力を出せた映画とは言い難い。

コメディ映画としては全体的に映画が冗長だし、どこか中ダルみしているように感じられます。
そういう意味で、どうしても映画の小気味良さというか、テンポの良さが出てきません。
こういう映画はテンポ良く見せることで、作り手が映画をもっと動かして欲しいですね。
確かにアイスホッケーの試合のシーンは多いのですが、映画がテンポ良く進んでいるというのとは程遠いし、
どうにも映画にコミカルさが感じられません。もっと風刺的に描くべきだったと思うのですが、風刺になり切れていない。

この辺はジョージ・ロイ・ヒルのスタイルの問題もあるかとは思いますが、
ジョージ・ロイ・ヒルでももっと面白い映画にできたであろうにと思えるだけに、どこか物足りないなぁ。

やはり、ジョージ・ロイ・ヒルの映画の特徴と言えば、特徴なのですが、
映画としてどこかピリッとしないんですね。これといった決め手を感じさせる内容であれば、
こうではないのですが、何一つも訴求するものがなく、結局、悪い意味で映画が締まらない。
劇場公開当時から本作の評判は良かったようなのですが、僕にはどうしても相容れないものがあるなぁ。

これが『明日に向って撃て!』のようなインパクトがある作品なら分かるのですが、
本作はやはり映画のコンセプトに先見性が無く、どこを見せたいのかもハッキリとしないところが良くない。

確かにアイスホッケーは“氷上の格闘技”と呼ばれるくらいですので、
ラフプレーとは言い過ぎにしろ、かなり熱くなるスポーツであることは有名ですね。
日本では一部の地域で盛んに行われており、北海道では釧路や苫小牧など太平洋側の地域で
競技人口が多くなっておりなすが、残念ながら現状の日本では今一つ普及したとは言い難い。

ウィンター・スポーツが盛んな北海道でも、特に太平洋側は雪が少なく、
ほとんど降らないような地域があるので、そういった地域はほとんどがスケートなんですね。
近隣にスキー場を有する山がなければ尚更のことで、北海道でも完全に二分しています。

まぁ、スケートをやる人であれば無縁なスポーツではないような気がしますが、
日本よりはアメリカ、カナダといった北米の方が盛んで、熱の入れようの違いは国民性もあるのかもしれないですね。

そういう意味で、どこか楽天的な演出スタイルで有名なジョージ・ロイヒルが
スポーツ映画を撮るにしても、アイスホッケーを題材にした映画を撮ったというのは意外でしたね。
どこか70年代が誇るカルト映画の一つにも数えられている傾向があり、今でも本作の熱心なファンはいるようです。
それを証拠とするのは、実は21世紀に入ってから本作の続編が製作されたという事実があることです。

なかなか、このように20年以上の時を経て、続編が作られた事例は多くありません。
(パッと思いつくところでは、ヒッチコックの『サイコ』が20年以上経ってから続編が作られたが・・・)

ただ、僕にはどうしても...この映画で描かれていたゲームのシーンを観る限りでは、
アイスホッケーというよりも、ただの殴り合いにしか見えなかったのが気になる・・・。
スポーツの試合上の乱闘というのとも違って、作り手が何を見て、こういうシーンを描いたのか、よく分かりません。

当時、ポール・ニューマンがこの手の映画に出演すること自体がレアだった気がしますが、
結局のところ、ジョージ・ロイ・ヒルがメガホンを取るがために、出演を決めたのではないかと思います。

だからというわけでもないのでしょうが、
本作なんかは企画段階から、多少、無理があったような感じがして、ポール・ニューマンが積極的に
本作へ出演したがっていた企画だったとは思えないのですよね。確かにこの頃は、チョット迷走していたようですが。

極めつけは、映画のクライマックスの“落としどころ”も意味不明だということ。
確かに、これがユーモアと言われればそれまでですが、「これで解決するのか?」と疑問に思えるオチで、
どうにも映画としてシックリ来ない。こういうおおらかさって、大切にしたい気持ちもなくはないが、
せっかくのコメディ映画だというのだから、この納得性欠けるオチの付け方が致命的だったと思う。

結局、僕の中でこの映画の価値が上がらなかったのは、このオチがあまりにお粗末に見えたからです。

『明日に向って撃て!』で、あれだけのインパクトを与えたジョージ・ロイ・ヒルが、
この程度のオチで映画を終わらせてしまったというのは、正直言って、理解できないところでした。

あまりに荒唐無稽な映画ですので、現代の感覚で受け入れられる作品かは微妙ですが、
ポール・ニューマンが当時、半ばヤケを起こした映画として、一見の価値があると言えば、あるのかもしれません。

(上映時間122分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 ジョージ・ロイ・ヒル
製作 ロバート・J・ウンシュ
   スティーブン・フリードマン
脚本 ナンシー・ダウド
撮影 ビクター・ケンパー
音楽 エルマー・バーンスタイン
出演 ポール・ニューマン
   マイケル・オントキーン
   ジェニファー・ウォーレン
   メリンダ・ディロン
   ストローザー・マーチン
   リンゼー・クローズ
   スウージー・カーツ
   キャスリン・ウォーカー
   ポール・ドゥーリイ