007/スカイフォール(2012年イギリス・アメリカ合作)

Skyfall

シリーズ生誕50周年記念作となった、シリーズ第23弾。

すっかり、尺が長いことで定着してしまったのか、安定の2時間23分を誇ります(笑)。
全体的に冗長気味になっていることは否定できませんが、ギリギリで飽きさせない作りではある(笑)。

監督は99年に『アメリカン・ビューティー』で一世を風靡したサム・メンデス。
堅実な演出が持ち味ではありましたが、本作では完全に“007シリーズ”の映像作家になっていますね。

それなりに、時代の流れを意識しているようで、作り手が苦慮している痕跡があります。
おそらくサム・メンデスもそうとうなプレッシャーだっただろうと思いますが、よくシリーズを研究していますね。
従来のシリーズの持ち味を活かしながら、実に巧みにアクションを構成しており、見劣りしない出来映え。
他のヒット作に影響を受けながらも、しっかりと“007シリーズ”の持ち味を吹き込んだことには感心した。

過去にサム・メンデスが撮った、『ロード・トゥ・パーディション』なんかを観るに、
あまりアクションを撮るのは得手ではないのかなぁと勝手に思い込んでいましたが、
本作ではまずまず健闘している。特にクライマックスのド派手な爆発シーンには驚かされた。
(おそらくこの爆発シーンはシリーズ屈指の規模だったんじゃないかと思います)

本作では、ここ数作でずっとMを演じてきたジュディ・デンチが表舞台に出てきますが、
すっかりボンドのイヤな上司としてイメージが定着しているようで、なんだか複雑な気分になるが、
これもひとえに映画を最後まで観れば分かりますが、ある種の世代交代を狙ったものだったのでしょう。

ダニエル・クレイグが演じるボンドのスタイルもすっかり定着したみたいですが、
やたらと武闘派な感じで闘うボンドが実に勇ましいが、なんだか少しツラそうですね(苦笑)。。。

どうも、『007/カジノ・ロワイヤル』から続く、このアクションの路線に見慣れてしまったせいか、
ダニエル・クレイグのパフォーマンスに対する観客が求めるものが、より高い次元のものになってしまったせいか、
もうこのスタイルが新鮮に映ることはないかなぁ。この辺は作り手の悩みの種の一つだと思いますね。

こういった悩みについては、プロダクションも変わらなければなりませんね。
やはりアクションのテイストを変えただけでは、決して長続きする変化ではないと思います。
もし、これで安心しているのであれば、ただ単に「変えただけ」で終わってしまいます。
ホントはこれからが大事なのに、シリーズの新たな魅力を生み出すには至っておりません。

以前のシリーズの面白さを掘り起こすかのように、
ボンドがアイテムを駆使する発想も、徐々に戻しつつありますが、どうも映画が盛り上がりませんね。
やはり話しの流れを多少、ぶった斬っても、訳の分からんアイテムを登場させて、
無理矢理、ボンドに使わせるぐらいの勢いがないと、どうも映画が盛り上がらない気がしますね。
そういう意味で、最近の“007シリーズ”に足りないものって、良い意味での作り手の強引さだと思いますね。

話題となった、アデルの主題歌も悪くはないが、
アヴァンギャルドなオープニング・タイトルにしても、強いインパクトがあるとまでは言えず、
サム・メンデスなりに頑張っていることが伝わってくる分だけ好感を持てるが、それ以上のものがないですね。

悪役を演じたハビエル・バルデムは相変わらず良い。
徹底した不気味さを見事に表現しており、特にクライマックスでの存在感は特筆に値する。

本作ではまともなボンドガールがいないことに物足りなさを感じましたが、
ハビエル・バルデムが見事な好演だったので、物足りなさを上手くカバーできていたと思います。
この辺は従来のシリーズには無かった不気味さであり、映画がより新鮮なものに感じられる要因かも。

とは言え、これで満足されては困る(笑)。
ましてや生誕50周年記念作だったわけで、本作の製作に対する期待値はそうとうに高かったはずだ。
その期待を満たせる出来であったかと聞かれると、僕は甚だ疑問で、改良の余地はかなり大きいと思う。

『007/カジノ・ロワイヤル』と『007/慰めの報酬』はセットで評価できる作品でしたが、
本作はストーリー上も単独で評価されるべき内容で、エンディングでシリーズのファンを驚かせるオチを付けるが、
これらも奇をてらった割りには、それ以上の効果に乏しく、これはおそらく賛否両論だろう。
あくまで厳しい意見に徹すると、僕はこれではダメだと思うんです。特に長く続くシリーズ映画としては。

多くのファンに応えるために、どういうビジョンで映画を撮るかということに、
本作は致命的な部分で欠如していたのではないかと、疑わざるをえない部分があるんですよね・・・。

とは言え、ネガティヴなことばかり言っても仕方ないので(笑)、
これからのシリーズの新たな魅力の創成に期待したいですね。それを予期させる要素はあります。
そういう意味で、できることならばサム・メンデスには次の作品も撮って欲しいですね。
是非とも、次の作品で頑張ってもらって、本作の価値を高めることに注力して欲しいと思います。

久しぶりに観た、アルバート・フィニーも元気そうで嬉しい。
彼は00年の『エリン・ブロコビッチ』でオスカー・ノミネーションも受けたけれども、
ベテラン俳優として注目されそうで、今一つ注目度が上がらない名優の一人なので、この活躍は嬉しい。

あと、前述したことですが、やはり尺が長過ぎる。
各エピソードがチョットずつ長く取られているイメージで、もっと編集で割愛すべき。
部分的にはエキサイティングなアクションがあるけれども、それらのつながりが悪い。
それで2時間を大きく超えてしまっては、どうしても映画の途中でダレてしまいますね。

まぁ・・・大甘に考えて、及第点は超えたと言ってもいいとは思うけれども、
次の作品で挽回するということが前提で、この映画の価値を捉えたい。

というわけで、サム・メンデス...次こそ頑張って!(笑)

(上映時間143分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 サム・メンデス
製作 バーバラ・ブロッコリ
    マイケル・G・ウィルソン
脚本 ニール・パーヴィス
    ロバート・ウェイド
    ジョン・ローガン
撮影 ロジャー・ディーキンス
編集 スチュアート・ベアード
音楽 トーマス・ニューマン
出演 ダニエル・クレイグ
    ハビエル・バルデム
    レイフ・ファインズ
    ジュディ・デンチ
    ナオミ・ハリス
    アルバート・フィニー
    ベレニス・マーロウ
    ベン・ウィショー
    ロリー・キニア

2012年度アカデミー撮影賞(ロジャー・ディーキンス) ノミネート
2012年度アカデミー作曲賞(トーマス・ニューマン) ノミネート
2012年度アカデミー歌曲賞(アデル) 受賞
2012年度アカデミー音響編集賞 受賞
2012年度アカデミー音響調整賞 ノミネート
2012年度イギリス・アカデミー賞作曲賞(トーマス・ニューマン) 受賞
2012年度ロサンゼルス映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度ラスベガス映画批評家協会賞主題歌賞(アデル) 受賞
2012年度インディアナ映画批評家協会賞作曲賞(トーマス・ニューマン) 受賞
2012年度セントルイス映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度フェニックス映画批評家協会賞作曲賞(トーマス・ニューマン) 受賞
2012年度フロリダ映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度ユタ映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度セントラル・オハイオ映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度ヒューストン映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度デンバー映画批評家協会賞主題歌賞(アデル) 受賞
2012年度ジョージア映画批評家協会賞撮影賞(ロジャー・ディーキンス) 受賞
2012年度ゴールデン・グローブ賞主題歌賞(アデル) 受賞