6デイズ/7ナイツ(1998年アメリカ)

Six Days Seven Nights

これは何故か劇場公開当時、映画館で観ました(笑)。

いやはや、これが当時、映画館で観た時もあまり楽しめなかった作品でして、
まだギリギリ、ハリウッドでもアクション・スターとして人気のあったハリソン・フォードが一気にお爺ちゃんに
近づいたようなキャラクターで、なんだかいろんな意味でチグハグした、上手く噛み合っていない作品でしたね。

しかも、当時、札幌市営交通局で使えた磁気式プリペイドカードの“共通ウィズユーカード”という
懐かしいものがあって、何故か本作とのタイアップ企画で限定カードが販売されていて、当時、3000円で買いました。
(このプリペイドカード、1000円・3000円・5000円は10%のプレミア、10000円は15%のプレミアがついていた)

まぁ、自分の持ち味を生かして冒険映画を撮りたかったアイバン・ライトマンの気持ちも
分からなくはないのだけれども、結果的には上手くマッチしていない。しかも持ち味のコメディ・パートもイマイチだ。

こうなってしまうと、映画としては苦しい。特長が無い作品という印象を持ってしまうんですよね。
アイバン・ライトマンの手腕をもってすれば、この映画はもっと面白く出来たはずです。こんなものではありません。
せっかくの名カメラマン、マイケル・チャップマンが撮影監督だというのに、これでは宝の持ち腐れです。
ハリソン・フォードにもキレがなく、映画全体としてスピード感に乏しい。これでは一向に映画が盛り上がるわけがない。

オマケにヒロインの婚約者を演じるデビッド・シュワイマーが、なんだか情けない役で、
おそらく彼のキャラクターは喜劇寄りのニュアンスを演出するために登場させたのだろうけれども、
あまりに極端過ぎるキャラクターで、もっとハリソン・フォード演じるクインと対立するとか、良い意味での見せ場を
作ってあげるべきで、これではあまりに可哀想だ。TVシリーズ『フレンズ』からのブレイクで期待されていたのに・・・。

まず、この映画はもとドキドキ・ワクワクさせられるようなエキサイティングな冒険がベースにあって、
そこにコメディ・テイストの味付けをしたのかと思わせられる予告編だったのに、アドベンチャー性が希薄なのが致命的。

せっかくのハリソン・フォード主演というキャスティングも水の泡みたいなもので、
これはもっとアイバン・ライトマンが工夫して映画を撮らないといけませんね。シナリオ自体に問題もあったのでしょうが。
それでも、作り手が映画全体を俯瞰的に見渡して、より魅力的な映画に仕上げられるように考えなければなりません。
ヒロインのアン・ヘッシュも頑張ったんだけど、彼女の頑張りもなんだか空振りしている感じで、全てが噛み合わない。

ちなみにアン・ヘッシュ、本作で一気に知名度が上がるかと期待されていたのですが、
何本か規模の大きな映画に出演することはあったものの、00年代以降はテレビ・ドラマに活躍の舞台を移しました。
彼女はバイセクシャルであることを公言し、テレビ界の大物、エレン・デジェネレスと交際していたことで有名で、
90年代後半はエレン・デジェネレスと恋人関係にあった時期で、当時の映画雑誌でも話題になっていました。

そんなアン・ヘッシュも先日、交通事故により残念ながら他界されてしまいましたが、
本作では元気いっぱいに、彼女のキュートな魅力を生かした活躍で、本作では彼女が最も目立っている。
そうなだけに、この映画に対する僕の率直な感想がポジティヴなものにできないことは、とても残念なんですがねぇ。

本作自体はヒットが期待されての劇場公開だっただろうし、製作費もそれなりにかかっている。
しかし今になって思えば、映画の内容的にはかなりB級テイストだし、よく日本でも全国で劇場上映されたなと感心する。
やはり昨今の情勢とは異なり、当時はハリウッド映画のシェアも高く、1作品あたりの収益性も高かったですしね。
そうなるとプロダクションも1作品に対する投資金額も大きくなり、当然、プロモーションにも力入りますからねぇ。

そのおかげか(?)、本作も全米での興行収入はそれなりでしたが、全世界での興行収入は高かったようです。
ハッキリ言って、僕はこの映画の出来ならば、当時で言う“ビデオスルー”でも何ら不思議ではないレヴェルだと思う。
こう言ってはナンですが、ハリソン・フォード主演作というだけで日本でも劇場公開されたと言っても過言ではありません。

ハリソン・フォードは私生活でも飛行機の操縦免許を持っていて、
実際に事故を起こしたり、少々お騒がせなところもあるけど、劇中登場したように彼が操縦桿を握る姿はよく似合う。

だからこそ、もっとハリソン・フォード演じるクインとアン・ヘッシュ演じるロビンに
緊迫感あるピンチが続き、なんとか命からがら逃げ回りながら島から脱出を試みるというような
サバイバル感にアドベンチャー性が欲しかったし、途中に登場する海賊たちはなんだか情けなさ過ぎて、
これなら無理して描かなくても良かったと思う。単に無人島でのサバイバルというだけで、十分に映画にできたはずだ。

野生動物や毒のある昆虫、そして人類未開の土地ならではの危険や、
南の島特有の天候の急激な悪化に、脱出するための道具が徹底的に無い環境など、
クインとロビンにサバイバル生活を強いる要素は多くあるし、もっと良い意味での緊張感を保って欲しかった。
コメディ・パートはその要所でエッセンスとして織り交ぜるだけで、十分、映画の“武器”にはなったはずです。

そこを、やれパンツの中にヘビが入っただのと、いちいちギャグのようなことやっていて時間を稼ぐ。
これは感心しませんね。こんなことに時間を費やさないで、もっとサバイバル劇を端的に見せた方が、ずっと良いのに。

なんか、こう...本来、本作の空気感自体が悪い意味でヌルい感じがします。
これは本作の持ち味というよりも、単にアイバン・ライトマンがどっちつかずの映画にしてしまっただけだと思います。
ユーモアを入れたい気持ちは分かるけど、やはりこの題材ならば、観客はサバイバル劇を観たかったはずなんだよなぁ。

このヌルさというか、ユルさが持ち味だというのなら、それはそれでもっと徹底的にやって欲しい。
ピンチになったら崖から飛び降りるとか、ここだけ命からがらの脱出にするのではなく、ユルい展開で脱出して欲しい。

クインとロビンは遭難しているわけですが、個人的にはもっと必死になってSOSサインを出すものだと思っていました。
ところがクインは酒飲んで寝てしまうし、ロビンはクインに協力的な雰囲気はない。これでは前へ進むわけがない。
そうこうしているうちに旅客機を目撃したからと、ロビンは一発しかない貴重な発煙筒を寝ているクインから取って、
挙句の果てには近くの木に誤射してしまうし、最も広いビーチに空からでも見えるSOSサインを作るわけでもない。

まぁ・・・これでは、どこまで必死なのか、真剣に助かりたいと思っているのか、なんだかよく分からない(苦笑)。

このチグハグな感じを、映画の終盤まで引きずっていくわけなのですが、
一緒に逃げ回ってサバイバル生活を数日過ごすことで、お互いにいつの間にか恋に落ちているというのは妙で、
特にロビンがクインのどういった姿を見て、心を開いていったのかは、少々分かりづらいかな。

とは言え、映画のラストは悪くはない後味で、最後のまとめ方はそこそこ上手くいっている。
強いて言えば、ロビンと彼女の婚約者とのやり取りが中途半端に見えましたが、この辺はアイバン・ライトマンも
最初っからしっかり描く気など無かったでしょうし、前述したように冒頭から彼の描き方はあまりに極端で雑に見える。

あまり深く考えるテーマがあるわけではないので、気軽に観れる点では良いのですが、
アイバン・ライトマンの力量があれば、もっとクオリティの高い映画にはできたであろうと思えるだけに残念。
映画館で鑑賞した当時も、そこまでいっぱい観客がいたわけでもなかったが、終了後の反応は微妙な雰囲気でした。
日本でもヒット作とはいかなかったと記憶しているし、当時からほぼ酷評に近かったほど、評価は芳しくなかったです。

そんな当時の評価は、今も分かる気がするくらい、20数年の年月を経て2回目の鑑賞をしても、感想は変わりませんね。

(上映時間101分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 アイバン・ライトマン
製作 アイバン・ライトマン
   ウォリス・ニキタ
   ロジャー・バーンバウム
脚本 マイケル・ブラウニング
撮影 マイケル・チャップマン
音楽 ランディ・エデルマン
出演 ハリソン・フォード
   アン・ヘッシュ
   デビッド・シュワイマー
   ジャクリーン・オブラドース
   テムエラ・モリソン
   アリソン・ジャネイ
   ダニー・トレホ