ショウタイム(2002年アメリカ)

Showtime

厳格なベテラン刑事と目立ちたがり屋のパトロール黒人警官。
ひょんなことから、この2人がコンビを組んで銃密売犯罪に挑むアクション・コメディ。

最近、やたらとコメディ映画に出演するデ・ニーロのコミカルな芝居が定着してきました。

かつて83年に『キング・オブ・コメディ』に出演したときのインタビューで、
「オレはドタバタしたコメディが大好きなんだ。いつかは挑戦してみたい」なんて真顔でコメントしてたらしいけど、
いよいよ80年代のコメディ・キング、エディ・マーフィと共演したのだから、これは一大事だ(笑)。

実に勿体ないと思えるのは、こんな企画で2人の共演が実現するなら、
いっそ『48時間』のニック・ノルティの役でデ・ニーロが出演すれば良かったのに・・・と思えること。
残念ながら本作はアクション映画としても、コメディ映画としても中途半端。
さすがに完全に勢いを失っているエディ・マーフィとの共演なせいか、『48時間』の方がずっと面白い。

スピード感覚を強く意識した作風にはなっているので、サクッと軽い感覚で観れる点は強みだ。
しかしながら、激しく笑わせてくれる類いの映画ではなく、派手なアクション・シーンがあるわけでもない。
ロサンゼルスの市街地でのチェイス・シーンはあるにはあるのですが、なんだか消化不良。
映画の大きなセールス・ポイントになり得ていません。これでは映画として弱いんですよね。

やたらと軽いノリの映画ではありますが、
00年に『シャンハイ・ヌーン』をヒットさせたトム・デイが本作の監督。
まぁ似たような空気を持つ作品にはなっているのですが、なんだか今一つシックリきませんね。
『シャンハイ・ヌーン』は悪くなかったとは思うのですが、もう少し緩急を付けて欲しいですね。
例えば、銃密売組織などの描き方などはもっと厳しくやって欲しいところなのです。

演出面での緩急が無くて、ずっと一本調子に軽いノリなもんだから、映画が凄く安っぽくなってしまう。
こういう結果になってしまっているのは、ひじょうに勿体ないことだと思うし、作り手の力量不足だと思う。
さすがにこれでは主演の2人がいくら頑張ったところで、無意味というものだろう。

上映時間が短くって、サクッとアッサリ観れてしまう点については加点要素ですね。
映画のクライマックスはイマイチ盛り上がりに欠けますが、ウダウダと余計なエピソードを描かずに、
アッサリと幕切れを迎えますので、映画がスリムに引き締まったようになり、これは良かったと思いますね。
ただラストのNGシーン集はいくらお約束とは言え、無理矢理に挿入した意図がよく分からない。
結局、こういう点が最終的に映画全体の足を引っ張ってしまっているのは、凄く勿体ないですね。

レネ・ルッソ演じる女性TVディレクターが過剰演出により、
ベテラン刑事と目立ちたがり屋のパトロール警官のコンビをスターにのし上げようとしますが、
住居不法侵入を平然と犯したり、「スター刑事とはこういう生活するのよ」と訳の分からない説明をして、
本人に無断で部屋をリフォームするなど、時代錯誤とも思える手段に出てきます。

まぁ日本でも80年代くらいまでって、今では考えられないほどにマスコミの行動って酷かったですからね。
こういう報道姿勢って、チョット前までは世界各国で普通に存在していたのかもしれませんね。

それから、何故かTVドラマ・シリーズで刑事ドラマに出演した経歴があるということで、
本人役で出演しているウィリアム・シャトナーのアドバイス・シーンはチョット面白かった。
特に鏡に向かって練習するシーンで、“コカインの確認方法”というのは面白かったですね。

指先に粉を付けて、粉を舐め、両眉を中央に寄せて、顔だけでコカインであることを確信したことを表現する。
こういうテクニックがテレビ映り良く、刑事スターとしてキャラクターを確立できるのだという指導なのですが、
そんな練習風景を横に、デ・ニーロ演じる堅物のベテラン刑事が渋い顔で一言。

「青酸カリだったら、どうすんだ?」

確かに昔、2時間ドラマとかでも麻薬なんかを確認するために舐めて確認するシーンがありましたが、
現物が何なのかも分からないまま、口に入れてしまうなんて危険極まりない行為ですね。
まぁ結局、この映画の中で一番、ユニークな存在だったのはウィリアム・シャトナーでしょうね。
少なくともエディ・マーフィではありません。彼のマシンガン・トークも、もうそんなに勢いが感じられません。

デ・ニーロがどこまでノリ気でこの映画に出演したのか、よく分かりませんが、
僕としては、ホントに軽〜い気持ちで観る分には悪くない映画だと思うけど、
ハイテンションに観客を楽しませ、アッという間に映画を終わらせるには難しい映画だなぁと思いましたね。
この内容では、映画の途中で胡散クサさが感じられてしまい、ちっとも映画の勢いが出ていない。
この長さで中ダルみが感じられてしまうというのは、正直言って、いただけませんね。

まぁ結局、企画だけが一人歩きしてるんですよねぇ〜。
名優ロバート・デ・ニーロと、人気コメディアンのエディ・マーフィの共演という企画が。
この企画の”美味しさ”に作り手がほぼ完全に胡坐(あぐら)をかいてしまっているように見えます。

是非ともこの企画はウォルター・ヒルに撮ってもらって欲しかった。。。

(上映時間95分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 トム・デイ
製作 ジェーン・ローゼンタール
    ジョーグ・サラレグイ
原案 ジョーグ・サラレグイ
脚本 キース・シャロン
    アルフレッド・ガフ
    マイルズ・ミラー
撮影 トーマス・クロス
音楽 アラン・シルベストリ
出演 ロバート・デ・ニーロ
    エディ・マーフィ
    レネ・ルッソ
    モス・デフ
    ペドロ・ダミアン
    ウィリアム・シャトナー
    ケン・ハドソン・キャンベル
    フランキー・フェイソン

2002年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞(ロバート・デ・ニーロ、エディ・マーフィ) ノミネート