シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム(2011年アメリカ)

Sherlock Holmes : A Game Of Shadows

うーーん...やっぱり、どうも楽しめないんだよな、このシリーズ(苦笑)。

前作の世界的な大ヒットを受け、アクションの要素を大幅に加味して製作された、
大人気シリーズの第2弾で、今回はモリアーティ教授との直接対決を描いています。

監督は前作に続くイギリス出身のガイ・リッチーで、
比較的、動きの少ない印象が拭えなかった前作の内容を反省してか、
本作では随分とアクションの要素を増強させ、エンターテイメント性をアップさせたような印象なのですが、
どうも映画の流れが良くないせいか、僕の中ではあまり上手い映画という位置づけにはならないですね。
ひょっとすると、ガイ・リッチーにこういう仕事は似合わないと思い込む、僕の勝手な先入観のせいかもしれません。

確かに前作のガイ・リッチーのチャレンジは良かったけれども、
彼のスタイリッシュに見せるという方針のせいか、どうも彼のカラーにこのシリーズが馴染まないんですね。

アクションの要素を大幅に加味したにしても、
クドいぐらいのフラッシュ・バックや、やり過ぎなぐらいのカット割りが映像としてうるさ過ぎて、
どうも落ち着いて観れる部分のない映画になってしまい、全体的な緩急が上手く付いていない印象ですね。
この辺はガイ・リッチーにもっと娯楽映画を撮った経験があれば、変わっていた部分だと思います。

そういう意味で、僕の求めるエンターテイメントと一致していないのかな。
まぁこれはこれで否定されるものでもないでしょうし、ガイ・リッチーなりのビジョンなのでしょうけれども。

どうやら最近はハリウッドでも勢いにノッてるロバート・ダウニーJrが
自身の代名詞としたいシリーズになりつつありますが、彼自身は実に楽しそうに演じています。
確かにトボけた性格を魅力にして、上手くキャラクター造形を試みてはいますが、どうもシックリこないかな。
まぁこれだけヒットしてるから、ほぼ間違いなく彼の代表作の一本にはなるだろうけど。。。
(かつて彼がスキャンダルに見舞われたとき、こういう時代が来るとは、予想できなかった・・・)

まぁ前作と比べれば、かなり映画のテンポは良くなっています。
ジュード・ロウ演じる助手のワトソンの新婚旅行が狙われて、ドタバタ劇に至るという設定も悪くなく、
シャーロック以上にトボけた性格の兄貴を登場させるという発想も、なかなか面白かったとは思いますね。
まぁ個人的には映画の終盤でも、この兄貴の存在を活かして欲しかったとは思うんですがね。。。

とは言え、僕は第1作から映画の流れの悪さが気になっていましたし、
せっかく探偵を主人公にした映画であるにも関わらず、ミステリーの側面ももっと工夫して欲しかったですね。

そういう意味で、個人的には娯楽映画が得意なディレクターに任せて欲しかったのですが、
ガイ・リッチーがもう一度メガホンを取ったわけで、どうせなら前作の難点を克服して欲しかったなぁ。
前作の映画の流れの悪さというのは、別にカット割りを使ったら克服できるわけでも、
VFXを使ったアクション・シーンを増やしたら克服できる問題ではなかったはずなんですよね。
やはり映画全体の構成の問題であったことを、もっと作り手がしっかりと反芻して欲しかったなぁ。

久しぶりのこれだけ規模の大きなシリーズなのですから、
個人的にはもっと安心して楽しませてくれるシリーズであって欲しいのですよね。どうも、乗り切れません。

おそらく前作よりもサービスしようと作り手はアドベンチャー性を加味させたのでしょうが、
結果的にアクションに行ってしまったのを見るに、一つ一つのシーンを作り込むことを優先させて欲しかったなぁ。
ストーリーの進行も遅い印象が拭えず、これはやはり作りようによっては、どうとでもなった企画だと思うのです。

これは経験豊富なジョエル・シルバーが製作に加わっている企画なのですから、
ジョエル・シルバーのプロダクションにもこういう人選をして、こういう結果になった責任があるようにも思います。
例えば、これがかつてのリチャード・ドナーが撮っていたら、どんな出来になっていただろうかと邪推してしまうのは、
この企画自体は悪くないだけに、ガイ・リッチーの仕事ぶりに不満を感じた人なら、当然の邪推だろう。

相変わらず尺が長いことも解消されておらず、2時間を大きく超えてしまうのはいただけない。
前作と同様に、映画の流れも良くないためか、上映時間が必要以上に大きく感じられてしまいますね。

それと、アイリーン役で登場したレイチェル・マクアダムスは相変わらずの扱いの悪さ。
前作でももっとスポットライトを当てて欲しかったと思っていたのですが、本作は無理してまで
登場させるほどではなかったことに加え、ほとんどチョイ役扱いで映画の序盤でアッサリ退場とはあまりに酷い。

個人的には前作の反省をもっと活かして続編を撮影しているものだと期待していただけに、
こういう結果になってしまって凄く残念ですね。第3作以降の続編を製作するのであれば、
スタッフの人選を含めて、企画の段階からもっとしっかり練り直す必要があるように思いますね。

一つだけ良かったのは、ワトソンが新婚旅行へ向かう列車で襲撃されて、
ホームズが助けに来るシークエンスは、そこそこ緊張感が感じられて良かったかなぁ。
できることであれば、大半のアクション・シーンはこれぐらいの感覚で撮って欲しかったですね。
このシーンを観てしまうと、モリアーティ教授に捉えられたホームズを助けに行くシーンなどは、
あまりに緩慢な演出で、シーンを作り込めていないことが露呈していると言っても過言ではありません。

ちなみにシムを演じたノオミ・ラパスはスウェーデン版の『ドラゴン・タトゥーの女』で
ヒロインに抜擢された女優さんで、本作で初めてハリウッド資本の映画に出演しました。
もし第3作があれば、彼女にもう一度、声がかかるかもしれませんが、前作と本作でのレイチェル・マクアダムスの
扱いの悪さを観ていると、どうも不遇な扱いになってしまうのではないかと、余計な心配ばかりしてしまいます。

やはり一人、一人のキャラクターを大切にするシリーズであって欲しいですね。

(上映時間129分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 ガイ・リッチー
製作 ジョエル・シルバー
    ライオネル・ウィグラム
    スーザン・ダウニー
    ダン・リン
脚本 マイケル・マローニー
    キーラン・マローニー
撮影 フィリップ・ルースロ
編集 ジェームズ・ハーバート
音楽 ハンス・ジマー
出演 ロバート・ダウニーJr
    ジュード・ロウ
    ノオミ・ラパス
    ジャレッド・ハリス
    レイチェル・マクアダムス
    スティーブン・フライ
    エディ・マーサン
    ケリー・ライリー