シャーロック・ホームズ(2009年アメリカ)

Sherlock Holmes

万国共通で有名な、名探偵シャーロック・ホームズの物語を最近妙に調子が良い(笑)、
ロバート・ダウニーJr主演で映画化したVFX満載で綴ったサスペンス・コメディ。

日本でもそこそこヒットしたようですが、これは微妙な内容の映画だったなぁ〜。

と言うのも、僕が集中して観れていなかったのが悪いんだけど(笑)、
映画の後半に差し掛かるまで、一体、何をやってるんだか、全くよく分からない映画で、
観ていて“?”だけが並ぶ感じで、チョット付いて行けていなかったせいか、ノリ切れなかったですね。

まぁ映画のクライマックスの種明かしで、どういうことだったのか、
全て分かるようにはなっているあたりが、親切なミステリー映画なのですが、
それでも何故か2度観て、そのトリックを楽しもうと思えないあたりが、この映画の難点かも。

作り手がコミカルに描きたいのは、重々、理解できるんだけれども、
その作為的意図とは別なところで、僕は目まぐるしく展開するスペクタクルな映像構成に戸惑ったかな。

個人的にはもっと落ち着いて、映画を見せて欲しい。
時にこういう風に描くと効果的なことがあるのは分かるけど、基本的に観ていて疲れる映画ですね。
どうしてもカット割りが増える傾向になりがちで、とにかく忙しい映画になってしまっている。

オマケにこの内容で2時間オーバーはキツかったですね。もっとタイトにまとめて欲しい。

監督はイギリス出身で『スナッチ』のガイ・リッチー。
彼は歌手のマドンナの元夫として有名ですが、90年代後半はもっと期待されていたんですがねぇ。
確かに当時から僕はガイ・リッチーの映像作家としての手腕には懐疑的ではありましたが(笑)、
とは言え、00年代に入ってからパッとした映画を発表できていなかったのは、実に勿体ないことで、
本作は久しぶりにスポットライトを浴びた作品として、再び上昇の気配が漂っているのではないでしょうか。

おそらく本作のラストを観る限り、シリーズ化することは目に見えており、
開き直ってエンターテイメントに徹したあたりは、ある意味で潔かったような気がしますね(笑)。
(おそらく次はモリアーティ教授のネタで展開していくのでしょう・・・)

僕、シャーロック・ホームズの原作本は読んでいないのだけれども、
こんなに威厳のないシャーロック・ホームズでいいのでしょうか?(笑)。

と言うのも、半ばアシスタントであるはずのジュード・ロウ演じるワトソンからも小馬鹿にされた感があり、
どちらかと言えば、2人の人間関係の主導権をワトソンが握っているというのは、珍しい気がします。
そのせいか、ホームズの知性が強調できていないあたりは、チョット致命傷なのですが(笑)、
これはこれでガイ・リッチーなりにオリジナルのキャラクターとの差別化を図った証拠なのでしょうか。

個人的にはもっとミステリー、そして謎解きには時間をかけた方が良かったと思う。
色々と伏線を張り巡らせたみたいですが、どちらかと言えば、伏線を張り巡らせることに
一生懸命になり過ぎた感があり、謎解きがかなり性急な処理に終始してしまったのが残念ですね。

これではさすがに探偵映画としての醍醐味を削いでいると非難されても仕方ないかな。

この作品は企画の段階から、キャラクター造詣も含めて再構築してますので、
オリジナルのイメージとの乖離に否定的な意見が多いとすれば、大いに反省材料すべきだと思いますね。

あとは、そもそもガイ・リッチーの演出がこのシリーズに合っているのか?という問題もあるかも(笑)。
トントン拍子にスタイリッシュに映像をつなぎ合わせるという手法は、『スナッチ』なんかと同じなんだけど、
ある意味でこのシリーズのメガホンを取ってまでも、この演出スタイルを押し通すあたりもスゴい(笑)。
だから、案外、ガイ・リッチーの映画が元々、好きな人ならそこそこ楽しめる可能性はあると思いますね。

日本でもそこそこのヒットと前述しましたが、
ちなみに北米では公開当日の興業収入の歴代新記録を樹立しました。
最終的には全世界で5億ドルを稼ぎ上げたらしく、気を良くしたガイ・リッチーは当初、予定していた次回作の
撮影を延期し、ロバート・ダウニーJrも急遽、予定を変更し、2010年秋から続編の撮影を開始しました。

おそらく続編も本作の調子で描くのだろうけど、
個人的にはもっとストレートに映画を撮って欲しいかも。もっとシンプルな方が観易いんですよね。

VFXも贅沢に使える環境にあるようですし、キャスティングも抜群に恵まれているわけですから、
映画の面白さ、そして醍醐味をフルに発揮できるように映画を工夫して欲しいですね。
ガイ・リッチーの映像作家としての個性も大事ですが、あまり行き過ぎると自己満足で終わってしまいがちです。
この辺のバランスを保ちながら、映画を磨いていくのが今後のガイ・リッチーの課題だと思いますね。

それと、続編ではモリアーティ教授とつながりがあるとされる、
アイリーン役に抜擢されたレイチェル・マクアダムスに、もっとスポットライトを当てて欲しいですね。
この映画、前述した映画の前半の分かりにくさは、彼女の役の不透明さが原因の一端だと思いますね。

まぁ続編も主要キャストは変わらないようですから、
もっともっとミステリーを重視した内容にして、探偵映画の醍醐味を味あわせて欲しいですね。
きっとロバート・ダウニーJrほどの芸達者だったら、もっと面白く演じられるはず。

(上映時間128分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 ガイ・リッチー
製作 スーザン・ダウニー
    ダン・リン
    ジョエル・シルバー
    ライオネル・ウィグラム
原案 ライオネル・ウィグラム
    マイケル・ロバート・ジョンソン
脚本 マイケル・ロバート・ジョンソン
    アンソニー・ペッカム
    サイモン・キンバーグ
撮影 フィリップ・ルースロ
編集 ジェームズ・ハーバート
音楽 ハンス・ジマー
出演 ロバート・ダウニーJr
    ジュード・ロウ
    レイチェル・マクアダムス
    マーク・ストロング
    ケリー・ライリー
    エディ・マーサン
    ジェームズ・フォックス
    ハンス・マシソン

2009年度アカデミー作曲賞(ハンス・ジマー) ノミネート
2009年度アカデミー美術賞 ノミネート
2009年度ゴールデン・グローブ賞主演男優賞<ミュージカル・コメディ部門>(ロバート・ダウニーJr) 受賞