シェイド(2003年アメリカ)

Shade

思わず「おい、スタローン! オマエは何やってんだ!?」と叫びたくなる映画である。

まぁ映画はギャンブルの街ラスベガスで繰り広げられる、
ポーカーのイカサマ師たちの攻防を描いたクライム・サスペンスなのですが、
どうにも最後の最後まで煮え切らない展開と、メリハリに欠ける演出に作り手にクレームの電話の一本でも
入れたくなるお粗末さだ。第一、この無駄に豪華なキャストを配する必要は何処にも感じられない中身だ。

確かにこれは結果論です。しかし、作り手が何一つ作為的な工夫をせず、
シナリオ上の面白さだけで映画を作れると本気で信じてしまっているような感じなのです。

たぶん着想点の良さに出演者たちも惹かれたのでしょう。
98年に『ラウンダーズ』という作品がありましたが、あの作品を参考にして欲しい。
こういう映画は作り手の力量がモロに露呈してしまう。それゆえ、慎重に撮るべきなのです。
こんな性急にあっち行ったり、こっち行ったりするストーリーを展開しても、映画は盛り上がりません。

監督のダミアン・ニーマン自身も、かなりの腕のギャンブラーだと聞きましたが、
確かにポーカーのシーンの作り方なんかは妙にしっかりしている。ただ、「それだけ」なのです。。。
舞台装置はしっかりと出来ているのだから、「映画」を撮って欲しかったなぁ〜。
これでは安っぽいテレビ・ドラマみたいだ。申し訳ない言い方ですが、このままでは一流にはなれないのです。

かつて『シンシナティ・キッド』などポーカーを題材にした映画は数多くありましたが、
もっと駆け引きから演出される緊張感を画面に思いっ切り引き出して欲しかったですね。
この辺は編集などももっと工夫して、大胆に見せて欲しかったと思います。

それからスタローン演じるディーンの恋人イヴを演じたメラニー・グリフィス。
彼女も久しぶりにスクリーンで観ましたが、もっと彼女の存在感も活かすべきでしたねぇ。
一体何のために彼女が登場してきたのか、よく分からないままに映画が終わってしまうのが残念でした。
まぁこれはスタローンにしても同じことが言えるとは思うのですが、動きが少なくて寂しいですね。
別に派手なアクション・シーンは必要ないですけど、スターとしての“華”がありませんね。

確かにポーカーをクールなものとして尊重したい気持ちは分かる。
ただ、これはあくまで映画ですから、出演者たちにも“華”を与えて欲しいと思いますね。

やはりこういうコンゲーム(騙し合い)を描いた映画って、作るのは難しいですね。
かつて『スティング』など鮮やかにドンデン返しを演出した映画がありましたが、
ああいった名画たちと本作などとの違いって、やっぱり映画そのものの作りなんですよね。
それと映画全体が持つ説得力。特に後者は大きいですね、必要不可欠です。
詰まるところ、本作においても説得力に欠けるのです。特に“真相”を観客に明かすまでが問題なんですよね。

ただ、スタローンにとっては大きな挑戦だったのでしょうね。
おそらく本作が初めて加齢を一つのテーマにした芝居を強いられたわけですからね。
これからはこの手の役が増えるでしょうけれども、一つの転換期を迎えている証拠でしょうね。

それでもそんな彼の挑戦も虚しく、映画は残念ながら日本劇場公開が約1年も遅れてしまいました。
それどころか実は本国アメリカでは劇場未公開という始末(苦笑)。
タンディ・ニュートンとイチャイチャできたガブリエル・バーンは役得でしたが(笑)、
スタローンにとっては明らかな誤算だったでしょうね。従来の役柄と違っただけに。

映画は豪華なキャスティングがウソのように、小粒な仕上がりになってしまっているので、
映画会社が半ばお蔵入りにしてしまった意図が分かるような気がします。

まぁギャンブルが好きな人はそこそこ観れる作品かとは思いますが、
コンゲーム(騙し合い)から引き出される緊張感を味わいたい人は、満足できないでしょうね。
映画を撮る上での、明確なビジョンがないから、こういう結果になってしまうのです。
少々厳しい意見ではありますが、こういう映画が増えている現状を僕は危惧しています。

やはり中身のない映画が増えている実情に、いち早くハリウッドは気づいて、
新たなニューシネマ・ムーブメントでも起こさないと、このままではより貧相になっていくだけだと思いますね。
(個人的には原理主義に基づいたニューシネマ・ムーブメントが望ましいと思いますが...)

まぁスタローンは本作の後に、『ロッキー』シリーズや『ランボー』シリーズの続編を作ったりして、
それぞれのシリーズの主人公の老いについて追求したみたいですから、
加齢に適応していこうとする役者としての決心があるようですね。まぁ新たな境地と言えますね。

純粋に彼のそういった気概は評価されて然るべきだろう。
いつまでもムキムキのアクション・スターなんて、どだい無理な話しなのですから、
これからの時代は様々な境地を開拓して、常にチャレンジャーであり続けるのでしょう。
そういった姿勢は、素直に応援してあげたいですね。

だから今回は敢えて「おい、スタローン! オマエは何やってんだ!?」なんて
意地悪な野次は敢えて言わないようにします(笑)。

(上映時間101分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ダミアン・ニーマン
製作 クリス・ハモンド
    テッド・ハートリー
    デビッド・シュネップ
脚本 ダミアン・ニーマン
撮影 アンソニー・B・リッチモンド
編集 スコット・コンラッド
音楽 クリストファー・ヤング
出演 シルベスター・スタローン
    スチュワート・タウンゼント
    ガブリエル・バーン
    タンディ・ニュートン
    メラニー・グリフィス
    ハル・ホルブルック
    ボー・ホプキンス
    ジェイミー・フォックス