エリザベス・ハーレーの明るい離婚計画(2002年アメリカ・ドイツ合作)

Serving Sara

これまた、エリザベス・ハーレーの“大コスプレ大会”のような映画ですね(笑)。

ダラスを中心に活動する実業家ゴードンの妻サラは、
夫が次から次へと他所で不倫を繰り返す夫の不貞に気づかず、優雅な毎日。
ある日、ゴードンは弁護士を通じてニューヨークへ遊びに行ったサラへ離婚通知を提出。

この通知書を強引にサラに届けた通達人ジョーは、
サラから報酬100万ドルで逆にゴードンへ離婚通知を提出するよう依頼され、寝返る決心をする。
各地を転々と逃げ回るゴードンを追い、サラとジョーは何とかして通知書をゴードンに受け取らせようとする・・・。

映画はそんなジョーの珍道中を中心に描いているのですが、
ラブコメディとしては及第点レベル、或いはそれを若干、下回る出来と言ってもいいかもしれません。

全米公開されてから約2年半もの間、お蔵入り状態となり、ようやっと日本劇場公開に至るものの、
小規模かつ短期間でアッサリ上映終了という扱いの悪さも、何となく納得できてしまいます。

97年、『オースティン・パワーズ』でヒロインを演じて、世の男たちをハラハラ・ムラムラさせた(笑)、
我らがエリザベス・ハーレーの名を邦題に付した随分と強気な映画ではありますが(笑)、
個人的にはハリウッドに渡って、今一つブレイクし切れなかった彼女を全面的にバックアップする企画として、
本作は製作することを支持したいとは思うけど、映画の出来が良くなかったのがたいへん残念ですね。

どうしてこんなことになってしまったのでしょうか?
これがエリザベス・ハーレーの望んでいた内容なのか知りませんが、
映画の後半にある獣医を装って、牛の発情を促すエピソードは醜悪なものとしか感じられなかった。
この手のギャグは過剰になればなるほど逆効果で、本来的に目指していた方向性から反れてしまうんですよね。

当時、人気TVシリーズだった『フレンズ』に出演していたマシュー・ペリーが本作に出演しているのですが、
そういえばこの時期、彼は映画界に活躍の舞台を求めていたようでしたが、ブレイクできませんでしたね。
00年の『隣のヒットマン』は商業的にそこそこ成功しましたが、ドル箱スターとして定着しませんでしたね。

マシュー・ペリーって、全米では一時期、かなり人気のあったコメディ俳優だったのですが、
彼の芸風の微妙なところは、ギャグの明瞭さにイマイチ、欠けるところですね。
映画の冒頭にあるような、やたらと強気なスパイ気取りのカジノ潜入シーンなど、
小さな“笑いの引き出し”を出し入れしながら、観客をニヤリとさせようとする彼のスタイルが、
日本人にはなかなか理解されにくいような感じがしますね。彼の調子をつかむことが必要なんですよね。

それにしても離婚通告書を渡して、その証拠写真を撮るだけで100万ドルの報酬ってのが凄い。
確かに日本の民法との違いによるものですが、なんか盲点がいっぱいありそうな方法ですね(笑)。

言ってしまえば、この映画は“鬼ごっこ”をやってるような内容なのですが、
「鬼」である追跡者の視点から描いており、追跡者のドタバタ劇という意味では面白味はあると思う。
ただいただけないのは、2人のドタバタ劇にテンポの良さが感じられなかったことですね。
それでは「鬼」であり、追う側である立場からの面白さが出てこないのですよね。

上映時間の短さを考えれば、タイトな時間で勝負しなければならない映画であり、
もっと見どころを集中的に見せなければならなかったと思いますね。

ただ、コメディ映画として良いところを見れば、
ジョーとサラが言わば「鬼」となって、ゴードンを追跡する一方で、ジョーの職業仲間であるトニーが
自分の仕事をジョーに奪われたことに腹を立て、猛烈な勢いで彼らを追うという二重の追跡劇を
上手く構成している点については悪くないですね。これは構成力を要される作りです。

監督のレジナルド・ハドリンは92年に『ブーメラン』を撮ったディレクターとのことですが、
正直言って、僕はあまり深く知りません。ただ、ギャグがイマイチなのはともかく、構成力は評価できますね。

もう少し作り手が、映画が最も大きな武器とすべき魅力をもっと適確に理解できていれば、
映画の内容やアプローチ、細かなエピソードなどが変わっていたでしょうね。
そういう意味では演出力はそこそこある映像作家なのに、つまらないミスをしたような結果となっています。

勿論、本作最大の武器はフェロモンがムンムンと漂うエリザベス・ハーレーだったわけですが(笑)、
ただ一応、彼女だけの映画というわけではなくって、相手役あって初めて映画が成り立つわけですから、
その相手役との駆け引きや会話の中から、映画としての面白味を引き出さなければいけませんね。
これはごくごく基本的なことなわけで、ここでつまづいてしまうというのは、たいへん勿体ないことです。

確かに00年の『悪いことしましョ!』ほど映画そのものに華がなく、出来も良くないですから、
映画会社がお蔵入りを検討し、劇場公開を約2年半も待ち続けた心情というのはよく分かりますが、
どうせならすぐに公開すべきでしたね(苦笑)。さすがに約2年半のインターバルはキツい。。。
どうしても、“そういう”目でフィルターにかかって見えてしまいますね。

まぁマシュー・ペリーの芸風が好きな人は、波長が合う映画だと思います。

(上映時間99分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 レジナルド・ハドリン
製作 ダン・ハルステッド
脚本 ジェイ・シェリック
    デビッド・ロン
撮影 ロバート・ブリンクマン
衣装 フランシン・ジェイミソン=タンチャック
編集 ジム・ミラー
音楽 マーカス・ミラー
出演 エリザベス・ハーレー
    マシュー・ペリー
    ビンセント・パストーレ
    ブルース・キャンベル
    セドリック・ジ・エンターティナー
    エイミー・アダムス