サヨナライツカ(2009年韓国)

「オレのミポリンに何しとんねん!」と
世のオッサンたちの怒号が聞こえてきそうな映画ではありますが(苦笑)...
もっと僕は違うところにたくさん文句を言いたい不出来な映画で、心から残念ですね。

もういきなり文句を言わさせて頂きますが、
美しい婚約相手のいる、上昇志向の強いサラリーマンの運命をも狂わす女性を
中山 美穂が演じているわけで、当然、彼女の役どころはひじょうに重要なわけで、
少なくとも彼女は、世の男の思考回路を狂わすほどの、“運命の女”であることを強調しなければなりません。

ところが、この映画は一体、どういうことでしょうか!

せっかく中山 美穂が久しぶりに映画に出演して、
しかもかつて無かったぐらい、大胆な芝居を要求される、思い切った映画に出演したというのに、
いくらなんでもここまで魅力の感じられない女性として描くなんて、この映画の作り手は何を考えてるのか!?

だって、前述したように美しい妻を迎えて、
バンコクで新しい生活を迎えようとしていて、仕事も順調で出世も期待できる状況にあって、
それでも敢えて現地で知り合った女性と恋仲になって、簡単に縁を切れないわけですからねぇ。
そりゃ、それだけ惹きつける魅力が映像から感じ取れなければ、映画としては片手落ちでしょう。

厳しい意見かもしれませんが、残念ながら本作で中山 美穂が演じた女性からは、
そこまでのリスクを背負ってまでも愛したいとさせる、強い魅力までは感じることができませんでした。

こんな感じになってしまったものですから、
25年後、年をとって幸せな家庭を手にして、仕事上のキャリアも積み上げ、
会社の重役になってまでも、主人公は更に中山 美穂演じる女性に会いたがるわけで、
さすがにここまで強い執着を持ったとなると、それ相応の説得力が必要なのですが、
映画の最初から、そういった説得力が欠如しているせいか、どうにも「焼け石に水」って感じなんですよね・・・。

そもそもがなんで、日本で製作が頓挫したからと言って、
この企画を日本で映画化を実現させられなかったのか、その経緯もよく分からないのですが、
少なくともこの映画の作り手が、本作のポイントを理解できていなかったと言っても過言ではないでしょう。
(当初は行定 勲がメガホンを取って、映画化する予定だったとのこと・・・)

劇場公開当時、大々的に宣伝していただけに、
チョットだけ期待していたのですが、あまり大きな話題にならずに劇場公開が終了した理由が、
実際に観てみたら、簡単によく分かる出来で、あまりに残念な結果としか言いようがありませんね。

そもそも「オレは好青年だから」なんて言ってる主人公のことなんか信用できないのですが(笑)、
僕はこの映画、成就しない運命にある恋愛の切なさを描きたいのかと思っていたのですが、
この映画を観る限り、中山 美穂演じる女性の奔放な生きざまを描きたいのか、
それとも2人の恋愛をメインに描きたいのか、よく分からない印象を受けてしまいましたね。

原作があるから仕方のない話しかとは思いますが、
映画のラストの展開にしても、僕は無理矢理、悲恋を演出しなくとも良かったと思うんですよね。

ある意味、日本特有のフィーリングではあると思うのですが、
明らかにお互いに恋心を抱いていると分かっていながらも、いろんな事情から、
どうしてもお互いに踏み込めないというだけでも、十分に悲恋になると思うんですがねぇ。

この辺が辻 仁成の美学は違ったようで、
ラストで半ば無理矢理に悲恋の要素へと結び付けようとする力業にガッカリしましたね。

あと、付け加えて言わさせて頂ければ、
25年後の老け役メイクで全員を引っ張り出すのは、いくらなんでも強引過ぎですね。
どうせなら、違う役者をキャスティングしてやるなりしないと、コメディ映画になってしまいますね。
ハッキリ言って、中山 美穂はじめ、皆、失笑ものと言われても仕方ない不出来さだと思いましたね。

そしてバンコクの空港で中山 美穂演じる女性と別れた後、
妻と合流するシーンで、カメラをグルグル回すのもやめて欲しい。
これは言うまでもなく、『華麗なる賭け』と同じカメラワークですが、全く意味が感じられません。

本作が初めて使った表現技法というのならその価値を理解しますが、
何故、ここでああいった形で二番煎じを行わなければならないのか、まるで僕には理解できません。

というわけで、中山 美穂は個人的にファンなので、
これからも数多く映画に出演して欲しいのですが(笑)、どうせ12年ぶりの復帰作だったのですから、
もっと出来の良い映画でカムバックを飾って欲しかったですねぇ。これでは実にファンとして、不本意です(笑)。

まず、端的に言えば、中山 美穂が最初にフレームインする、
飲食店でのシーン、それから短いアバンチュールを映したシーンの中山 美穂の撮り方を
何とかしなければ、この映画は本来、果たすべき機能を果たせぬまま腐ってしまいますね。

あと、無駄なシーンをできるだけ省いて、この程度であれば2時間以内の内容にして欲しいですね。

もう、この映画の中山 美穂を観て、「どんなリスクをおかしてまでも、彼女に入れ込む価値がある!」と
世の男たちの大半が思える内容であれば、日本でももっとオヤジ世代を中心にヒットしたのでしょうね。。。

(上映時間133分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

日本公開時[R-15]

監督 イ・ジェハン
原作 辻 仁成
脚本 イ・ジェハン
    イ・シンホ
    イ・マニ
音楽 中島 美嘉
出演 中山 美穂
    西島 秀俊
    石田 ゆり子
    加藤 雅也
    マギー
    川島 なお美