ロッキー2(1979年アメリカ)

Rocky U

アメリカン・ドリームを体現したボクシング映画として、
オスカーを受賞した上に全世界で劇場公開され、大ヒットし名作となった第1作から3年、
ロッキーとアポロのタイトルマッチの後日談として、契約金を受け取ったロッキーのその後を描きます。

前作はジョン・G・アビルドセンがメガホンを取っていましたが、
一体どこまでスタローンが手掛けたのか、よく分からないけど、本作はスタローンの初監督作品となりました。

元々、第1作の時点でスタローンがイニシアティヴを握っていた企画なので、
本作でいきなり監督したといっても、あまり驚きはしないし、映画のカラーも前作とそう大差ありません。

ボクシング史上に残る激闘を戦い抜いた2人のファイト直後から、本作はスタートします。
納得がいかないアポロは再戦をしきりに希望しますが、これで最後との思いで命がけで闘ったロッキーは
それまで得たことがない大金が目の前に入ってきたことをキッカケに、恋人エイドリアンと結婚し、
色々な贅沢品を片っ端から購入して散在し、全く違う仕事に就こうと就職活動に勤しみます。

ただ、学歴もキャリアも無いロッキーに手を差し伸べることはなく、
結局、義理の兄の紹介で食肉解体業者で日雇いに近いような、肉体労働者として雇用され、
すぐに高い生活水準を維持できなくなっていきます。そんな中、エイドリアンの妊娠を告げられます。

シナリオを書かなければならなかったので当然と言えば、当然なのですが...
ひょっとしたら前作から3年ものブランクが空いたというのは、スタローンも続編を製作しようか迷いがあったのかも。

そのせいなのか、やや二番煎じの感は否めない。
いや、勿論、まるでお約束のように映画のクライマックスに用意されている、ロッキーとアポロのファイト・シーンは
相変わらず素晴らしい臨場感と迫力で、やはりこの真に迫った画面はスタローンにしか表現できないのでしょうけど、
そのクライマックスのファイト・シーンに至るまでが、冗長で長過ぎる(笑)。この辺はもっと工夫して欲しかった。

シナリオ自体もそうなのですが、前作の流れを踏襲しようとする意識は良いのですが、
ロッキーが突如として散財したり、エイドリアンの妊娠に狂喜したり、就職活動したりと随分とロッキーの
人間臭い部分をクローズアップしたドラマに時間を割くのですが、これはスタローンが本来描きたかったものだろう。

思えば、第1作からそうだったのですが、
スタローンは不器用なりに一貫してロッキーのドラマを描こうとしていたのです。

しかし、チョット噛み合わない部分というか、どこかスタローンの性格を象徴しているというか...
ドラマ部分は全体的にベタ過ぎる感があるし、このシリーズは一貫してボクシング・シーンがあまりに強烈なのです。
それゆえ、ロッキーの人間臭い部分を描くことに時間を費やされても、観客はどこか戸惑いを覚えてしまいます。
そのせいか、僕はどうしてもこの映画の前半部分は面白かったけど、どこか違和感があることを拭えなかった。
その違和感は、本作の場合は最後の最後まで観た後で晴れることなく、むしろ違和感が強くなってしまいましたね。

それと、本作に於いては、映画の冒頭約10分かけて、
前作のクライマックスのロッキーとアポロのファイト・シーンを繰り返した、スタローンの意図がよく分からない。

闘いの凄まじさを表現したかったのだろうけど、もっと違う形で表現して欲しかったなぁ。
どうしても、映画の最初と最後が同じ感じになってしまうことで、シリーズのマンネリ化が予期できてしまいます。
おそらくスタローンが予想していた以上に前作が高く評価されて、当初、シリーズ化は考えていなかったように思う。

そのせいか、シリーズの方向性をこの時点で定まらすことができず、
結局、ロッキーとアポロの再戦を描くということで、落ち着かせたというイメージが残ってしまいますね。
ファイト・シーンは素晴らしいんだけど、結局、この続編のラストは予想がつき易くなってしまったことがネックです。

確かに僕はホントに素晴らしい映画というのは、ネタバレしても十分に楽しめるものだと思うけど、
本シリーズの場合はロッキーがアメリカン・ドリームの象徴であったからこそ、前作がヒットしたわけであって、
だからこそ前作のラストには意味があったと思うんです。それが本作では、もっと多くの観客が望む内容、
そして結末を用意したため、ラストの爽快感は言うまでもないが、前作にあったような映画の重みは、もうありません。

こういう言い方は本作が好きな人には申し訳ないけど...
僕にはどうしてもこの映画が、スタローンのファンサービスだけのために撮った映画としか思えない部分がある。
(まぁ・・・こういうことをしてくれるからこそ、スタローンは根強い人気があるのかもしれないけど・・・)

失敗作だなんて言うつもりはない。やはりスタローンはしっかりとツボを押さえている。
ひたすら挑発しまくるアポロの描き方、やはりスタローンは自分だけでなく、敵にもしっかりと見せ場を作っている。

アポロという宿敵キャラクターというだけでなく、立ち振る舞いからして強敵という
シルエットを作っていかなければ、映画が面白くならないということを、よく理解して撮っていると思う。
そういう意味で当時のスタローンには映画製作にあたってのノウハウがあったし、良いブレーンもいたのかもしれない。

クライマックスのファイト・シーンの出来だけで、この映画には十分に価値があると思う。
しかし、あくまで個人的な意見ではありますが...このシリーズはここで終わっておいた方が良かった(笑)。

第3作以降はどうしても、アポロ以外の敵にフォーカスさせる、
「次から次へと難敵現る!」みたいな感じで、いつしかヒーロー映画のようにロッキーという存在が
必要以上に肥大化してしまったようで、やはりスタローンが当初、思い描いていたロッキー像とはかけ離れた存在に
なりつつあったのではないかと思います。それは薄っすらと、スタローン自身も気づいていたような気がします。

どうでもいいですけど...やはりリングサイドにエイドリアンがいないのは、なんだか物足りない(笑)。

(上映時間119分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 シルベスター・スタローン
製作 ロバート・チャートフ
    アーウィン・ウィンクラー
脚本 シルベスター・スタローン
撮影 ビル・バトラー
編集 スタンフォード・C・アレン
    ジャニス・ハンプトン
音楽 ビル・コンティ
出演 シルベスター・スタローン
    タリア・シャイア
    バート・ヤング
    カール・ウェザース
    バージェス・メレディス
    トニー・バートン
    ジョー・スピネル
    レナード・ゲインズ