ロビン・フッド(1991年アメリカ)

Robin Hood : Prince Of Thieves

僕はそこそこ楽しめる作品だったとは思うけど、チョット...長過ぎるなぁ(笑)。

よく本作のことを子供向けだとかって論評していたのを昔から読んでたけど、
そもそもこの長さは子供にはキツいよね。中身的には確かに子供向けかもしれないけれども・・・。

本作製作当時は、ケビン・コスナーの人気が日本でも絶頂と言っていい時期だったので、
劇場公開当時も注目度は高い作品だったようですし、最終的な興行収入はそこそこの記録をだしました。

監督はケビン・コスナーの盟友であるケビン・レイノルズなので、
おそらく本作の製作にあってはケビン・コスナーの意見が相当、反映させられたものと勝手に想像します(笑)。
と言うのも、インタビュー番組でも観たことがありますが、ケビン・コスナーって甘いマスクで人気あったけど、
結構、若いときから映画製作にはポリシーがある人で、自分の主義主張をハッキリとするタイプだったみたいです。

スターダムを駆け上がり、知名度と資金力が出来てからは、自分で監督したり、
プロデュースしたりするようになったのは、彼自身の映画製作に対する強いポリシーがある証拠なのでしょう。

ベースとなるのは、古くから伝わるロビン・フッドの物語ではあるのですが、
賛否が分かれそうなのは、物語の中に妙な魔女モーティアナがノッティンガムの代官を陰で操っていて、
彼女の謎な占いや予言を描くシーンが、結果的に映画の中でそれなりの影響力を持つ。
でも、オカルト・ホラーなのかと聞かれると映画の中身的には、全くそんな内容ではないので、
この魔女モーティアナの存在をどうしても描かなければならなかったのかと言われると・・・正直、微妙だなぁと思う。

妙な回り道をしないで、もっとストレートに活劇を描いても良かったように思う。
そうすれば、映画の尺自体ももっと短くできたでしょう。まぁ、ロビン・フッドの伝説に魔女伝説を絡めるという
発想自体は決して悪いものではないと思いますが、どうせ描くなら、このような中途半端な形ではないでしょうね。

おそらく、ベン・デンシャムの原案とクレジットされていますから、
オリジナリティを出したかったのだろうなぁとは思うのですが、映画全体のバランスを考慮すると、調和していない。

映画のポイントは幾つか分かれている。まずは冒頭、囚われの身となっていたロビンとアジームが
ムスリム軍の処刑を逃れ、故国イングランドへ帰ってくるというところから、いきなり活劇シーンで始まる。
そして、父の死を知ったロビンが、父を殺したであろうノッティンガム代官への復讐を誓い、アジームらを連れて、
どこか不気味な雰囲気を持つ“シャーウッドの森”に入り、避難していた連中と会って、心通わせるシーンに続く。

そしてロビンがレディ・マリアンに恋していることを察したノッティンガム代官が激怒し、
ロビンらを焼き討ちにするシーンでは、燃え盛る集落でアトクラション性の高い活劇を展開します。
そうして迎えるクライマックスでは、レディ・マリアンを連れ去ったノッティンガム代官との一騎打ちが描かれる。

映画はそれぞれに見どころを作っており、実にエンターテイメント性の高い内容になっています。
尺が長いことを除けば、セオリー通りに撮っている感じで、確かにチャレンジングな題材というよりも、
ヒットすることが堅い路線を選んできた感はありますが、良い意味で手堅い作りなのが僕は好感が持てる。

もし仮に本作のチャレンジングな部分が、魔女モーティアナのエピソードだというのなら、
僕はそれは全く違うチャレンジだと否定的な見方をしてしまうのですが、作り手はそのつもりだったのかもしれません。

映画の最後に、ノンクレジットのカメオ出演ということで名優ショーン・コネリーが登場してきますが、
アクションには何も絡まずに、最後の最後で“オイシいところ”を持っていくようなカメオ出演で、得な役でしたね。
どうせなら、キチンとクレジットして、もっと映画の早い段階から登場させても良かったとは思うのですがねぇ・・・。
(まぁ、ギャラやスケジュールの都合などもありますので、全面的に出演するのは無理だったのかもしれません)

ケビン・レイノルズの演出にはクセがなく、残酷描写があるとかそういうことでもないので、
とても観易いのですが、前述したようにケビン・コスナーが相当に口を挟んでいた可能性は否めず、
どこまで純粋にケビン・レイノルズが演出したかが分からないだけに、本作だけでは何とも言えないと思った。
(まぁ・・・95年に『ウォーターワールド』をやはりケビン・コスナーに担ぎ出されて監督して、失敗しましたが・・・)

それにしても、本作のキャスティングは豪華ですね。ケビン・コスナーを除くと、
本作撮影当時はそこまでメジャーな役者さんではなかったという人もいますが、実力派揃いです。
その中では、ノッティンガム代官を演じたアラン・リックマンが出色の存在感。まだ若々しさが残ってる頃で、
どうやら本人はこういう極端な悪役はあまり好きではなかったようですが、『ダイ・ハード』に続いて強烈な個性を発揮。
出番が多かった、ロビンの相棒的存在のアジームを演じたモーガン・フリーマンよりも、強いインパクトがありますね。

本作のアラン・リックマンは終始、汗まみれな感じで陰湿な性格が全開という感じで、
何故かよだれを垂らしていて、お世辞にも清潔感のある悪役とは言えないが、これは見事な怪演と言っていいと思う。

当時、ハリウッドではケビン・コスナーはスターダムを駆け上がり、
監督・主演を務めた『ダンス・ウィズ・ウルブス』でアカデミー作品賞を受賞したりしていたことから、
正に“向かうところ敵なし”の状態で、甘いマスクにファンも多かった。本作ではお尻を見せるファンサービス付き(笑)。

あくまでロビン・フッドを演じることを基本とした映画ではありますが、
こういったセルフ・プロデュースもしっかりやるというビジネスライクなところがあるのは、ケビン・コスナーらしい。

この辺はケビン・レイノルズが監督だったから出来たのでしょうね。
だって冷静に考えたら、このシーンでケビン・コスナーがお尻を見せる必要性って、全くないですからね。
ヒロインのマリオンが思わず“ポッ”となるのは分かりますが、どちらかと言えば、これはファンサービスでしょう(笑)。

どれもこれもケビン・コスナーがノリにノッていた証拠ですけど、逆に言えば、当時だから出来たこと。
あまり必然性のないファンサービスだったので、僕の中では違和感いっぱいのシーンだったのですけどね・・・(苦笑)。

幾度となく描かれる活劇シーンは、なかなかの迫力とテンポ良く構成されており見応えあって良い。
この辺はケビン・レイノルズが上手く描けていると思いますね。これだけで酷評されるほど悪くはないと思いますね。

ロビン・フッドの物語自体、あくまで“伝説”ではありますが、フィクションの可能性もあるとされている。
本作でもオリジナルで登場してきた、ロビンの恋人マリアンや相棒の“リトル・ジョン”が描かれていますが、
“リトル・ジョン”との出会いが、川を渡る権利をかけた闘いから始まるなど、かなり大胆な解釈を交えて
オリジナリティを出したストーリー構成となっていることについては、事前に理解した方がいいかもしれません。
(この“リトル・ジョン”たちとの出会いの雰囲気は、「愉快な仲間たち」って感じではないですよね)

映画の尺が長過ぎることを除けば、映画はそこそこ楽しめる充実したエンターテイメントだ。
今だったらCGをふんだんに使っちゃうところでしょうが、本作の映像表現は極めてシンプルでストレート。
キチッとセオリーを踏んだ演出・構成になっていて、ケビン・レイノルズの手堅さはもっと評価されて良かったと思う。

ケビン・コスナーとケビン・レイノルズの関係が深いのは分かるけど、
これだけのエンターテイメントが撮れるのであれば、もっと積極的に映画を撮れば良いのに・・・と思えるのですがね。
それくらい、ケビン・コスナーと関わる企画でしか、規模の大きな仕事が無かったというのが、なんだか悲しい。

少々、過小評価というか...もっと出来るディレクターなのではないかと思うのですがねぇ。。。

ちなみにブライアン・アダムスの主題歌 (Everithing I Do) I Do It for You(アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー)は
同年に発表した Waking Up The Neighbours(ウェイキング・アップ・ザ・ネイヴァーズ)の先行シングルとなりましたが、
ブライアン・アダムスの楽曲としても空前の大ヒットとなりました。この曲のヒットに、本作も貢献したのかな?

(上映時間142分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ケビン・レイノルズ
製作 ジョン・ワトソン
   ベン・デンシャム
   リチャード・B・ルイス
原案 ベン・デンシャム
脚本 ベン・デンシャム
   ジョン・ワトソン
撮影 ダグ・ミルサム
編集 ピーター・ボイル
音楽 マイケル・ケイメン
出演 ケビン・コスナー
   モーガン・フリーマン
   メアリー・エリザベス・マストラントニオ
   アラン・リックマン
   クリスチャン・スレーター
   ニック・ブリンブル
   マイケル・マクシェーン
   マイケル・ウィンコット
   ジェラルディン・マクイーワン
   ジャック・ワイルド

1991年度アカデミー主題歌賞(ブライアン・アダムス) ノミネート
1991年度イギリス・アカデミー賞助演男優賞(アラン・リックマン) 受賞
1991年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演男優賞(ケビン・コスナー) 受賞
1991年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(クリスチャン・スレーター) ノミネート