ロビンとマリアン(1976年アメリカ)

Robin And Marian

欧米の方々が大好きな『ロビン・フッド』の後日談を描いたようなアドベンチャー・ロマン。

しかも、当時の大スターであるショーン・コネリーとオードリーの夢の競演とあっては、
おそらく製作時点で話題となっていたでしょうし、オードリーに至っては67年の『暗くなるまで待って』以来、
約9年ぶりの映画出演だったということもあって、当時の映画ファンの期待はそうとうに大きかったのだろう。

しかし、しかしだ・・・個人的には、これは楽しめなかった・・・。

もっとロマン溢れる映画かと思いきや、オールドなカップルの恋愛という感じで、
どこか恋愛劇としてマッタリした感じだし、活劇としてもそこまでエキサイティングなものでもない。
初代ジェームズ・ボンドだったショーン・コネリーが演じるロビン・フッドなのだから、もう少し元気なものを期待したが、
既に初老の男という感じで、代官とのラストの決闘なども若々しいものではなく、終始、しんどそうな印象が残る。

恋愛劇としての側面を強調したかったというオードリーの復帰作となりましたが、
正直言って、さすがに“ファニー・フェイス”の時代とは異なり、大人の女性という雰囲気がにじみ出ていて、
彼女なりの転換期ではあったのだろうけど、少々、年をとったカップルの恋愛を表現したという感じが否めない。

監督のリチャード・レスターはユニークな映画を多く撮っているディレクターではありますが、
本作はお得意のコメディ色はほぼ排した演出で、『ジャガー・ノート』で主役に抜擢したリチャード・ハリスを
相変わらず起用しているのが心ニクいけど、映画の序盤だけの出演だったのは、少し可哀想な役回りに見える。

年老いたロビン・フッドを描いているだけに、このショーン・コネリーのしんどさは仕方ないのかもしれないが、
それにしても活劇シーンにキレがなく、胸躍るアドベンチャー!という感じも皆無で映画に魅力がないのが致命的。
せっかくのオードリーの映画女優としての復帰作だったのに、それに相応しい出来の映画とは言えなかったですね。

仕事の速いリチャード・レスターでしたが、撮影期間は1ヵ月と少しで終わったとのことで、
長々と撮影したくなかったショーン・コネリーにとっては好都合だったようですが、それでこの出来なら情けない・・・。

ショーン・コネリーは本作での共演が縁でオードリーと仲良くなったようで、
オードリーの晩年まで公私の付き合いが続いたそうですが、この熟年カップル感漂う共演よりも、
若い頃に共演したのを観たかったかなぁ。本作も基本はロビン・フッドが、故郷を牛耳る代官と闘うという
エピソードがメインになっているので、どちらかと言えばアクション映画の感覚なのですが、最後は何故かメロドラマ調。

このクライマックスが、シャーウッドの森に隠れた弓の名手ロビン・フッドを象徴したかったのだろうけど、
正直、マリアンとの最期の会話があまりにクサ過ぎて、個人的には全くノレなかった。このラストはいただけない。
同じロビン・フッドとマリアンの愛ゆえの行動を描いた最期だったとしても、このドラスティックな展開は好きになれない。

「もう間に合わない・・・。この弓矢が落ちたところに、二人を埋めてくれ!」なんて、
この時代でもそんなクサいことをやっていたのかは微妙だし、どこか舞台劇のような展開で違和感あるラストだ。

脚本の問題と言えば、そうなのかもしれないけど、それ以上にリチャード・レスターの演出も
映画の途中から、どこか色々と放棄してしまったかのように、熱のこもっていない仕事ぶりに見えてしまって、
僕の中では全く“盛り下がって”しまった。ここまでハッキリと、テンションを落としてしまう映画というのも珍しいと思う。

代官役のロバート・ショーも、さすがにこのままでは可哀想だなぁと感じた。
決して悪い仕事ぶりではないし、それなりに存在感はあるとは思うのですが、それでももっと強敵らしく描いて欲しい。
それでこそ、現代流に言う「キャラが立っている」と言えるのですが、どこか中途半端な感じに映ってしまう。
かつてロビンと闘った過去があり、老いても尚、伝説的な英雄として崇められるロビンが数十年ぶりに帰ってきて、
久しぶりの対決となるわけですから、もっとロビンにとって憎たらしくも、なかなか倒せない強敵としてあるべきで、
そんな代官をロバート・ショーは演じることができるからこそ、本作での描かれ方はあまりに中途半端だったと思う。

ショーン・コネリーとロバート・ショーと言えば、63年の『007/ロシアより愛をこめて』でも、
2人は対決していたわけで、当時の映画ファンもひょっとしたらショーン・コネリーとオードリーの恋愛劇よりも
この2人の対決を楽しみにしていた人の方が多かったかもしれませんが、どこか不完全燃焼な感じで終わってしまう。
年齢の問題がないわけでもないけど、『ブラジルから来た少年』で血まみれになって闘ったグレゴリー・ペックと
ローレンス・オリビエを見習って欲しいと思った(笑)。それくらいのインパクトは本作にもあった方が良かったですよ。

それでいてクライマックスでは、映画のオイシいところをリトル・ジョン演じるニコル・ウィリアムソンがさらっていく。
そうそう、本作で最も目立っていたのはロビンの右腕とも呼べる、戦友リトル・ジョンを演じた彼だったでしょうね。

やっぱり、僕はショーン・コネリーが演じたロビン・フッドの描き方がチョット納得できない。
故郷に帰れば“伝説の人”なわけですから、もっとロビン・フッドが活躍するシーンを積極的に描いて欲しかった。
さすがに、あのクライマックスのしんどそうな活劇シーンだけでは、ロビン・フッドが崇拝される理由が分からない。
数々の戦いで実績を積み伝説を作り上げたので、年老いてもそれだけの片鱗がある部分をしっかり描いて欲しかった。

まぁ・・・当時のショーン・コネリーには、それをも難しい状況だったのかもしれませんね。

それから、ロビンとマリアンの恋愛についても、もう少しプラトニックな関係として描いても良かったと思うなぁ。
久しぶりの再会でも、既にマリアンが表向きは心変わりしているような態度をとっているし、お互いに年をとった。
そこで何年ものブランクを経て、徐々にお互いの距離を近づけて、再びの愛情が再燃するというのは分かるのですが、
「貴方をもう失いたくない」とか結構、台詞で表現しちゃうシーンがあって、もっと“奥ゆかしさ”があっても良いなぁ。

“奥ゆかしさ”があった方がオールドな男女の恋愛としては、ふつふつと映える部分があったと思うんだよなぁ。
そして、前述したように尼僧院に帰ってきてからのエピソードは、もはやシェイクスピア劇のようで仰々しい。
このラストに至っては、もっと完全に撮り直して欲しいと思ったくらい、僕には良さが理解できないラストだった。

本作を通してリチャード・レスターが何を撮りたかったのか、その真意がよく分からないのですが、
当初の脚本から大幅に内容が変更になったとのことで、ロビンとマリアンのロマンスが中心に描かれたのは、
どうやらヘップバーンの意向が影響したようで、実質的に本作はヘップバーンの影響力がとても大きかったようだ。

そういう意味では、長らくスクリーンの世界から遠ざかっていたヘップバーンに女優業へと
帰ってきてもらうために製作された映画と言っても過言ではないのかもしれない。そう思うと、スゴい女優さんである。

しかし、結果として復帰後のヘップバーンも元々家庭人としての時間を割くために引退状態だったので、
彼女のモチベーションは長くは続かず、79年の『華麗なる相続人』など数本の映画に出演したものの、
往年のような輝きを放つことはなく、最後にスピルバーグの『オールウェイズ』にゲスト出演し、他界してしまいました。
そういう意味では本作が、ヘップバーンの出演作品として彼女の芝居が評価された最後の作品なのかもしれません。

ヘップバーンと言えば、数々のデザイナーとタイアップするかのように、
彼女が映画の中で身にまとった衣装が話題になる、ファッション・アイコンとしての存在感の強さですが、
本作は映画の設定上、そんなシーンは皆無です。ただ、映画の序盤では尼僧姿で、これはなんとなく懐かしい(笑)。

そう、ヘップバーンの尼僧姿と言えば、59年に『尼僧物語』に出演していて高く評価されましたからね。
確かに本作の尼僧姿は少々シックな装いで、ヘップバーン自身も年齢を重ねてはいましたが、どこか懐かしい。
こういう姿を観ると、やっぱりヘップバーンは唯一無二の存在だなと実感させられる。これは彼女にしか出来ないこと。

どうやら、本来はジョン・フランケンハイマーが監督する予定だったらしいのですが、
製作が難航したことでリチャード・レスターが監督することになったらしい。しかし、ジョン・フランケンハイマーが
この物語をどう映画化したのか、個人的には興味がありますねぇ。まるで違うタイプの映画になったでしょう。

それでも、少なくともラストの決闘シーンにしても、中盤のアドベンチャー性豊かな展開にしても、
ジョン・フランケンハイマーが監督していれば、もっとしっかりとした作劇をしてくれたのではないかと邪推してしまう。

(上映時間105分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 リチャード・レスター
製作 デニス・オデル
脚本 ジェームズ・ゴールドマン
撮影 デビッド・ワトキン
編集 ジョン・ビクター・スミス
音楽 ジョン・バリー
出演 ショーン・コネリー
   オードリー・ヘップバーン
   ロバート・ショー
   リチャード・ハリス
   ニコル・ウィリアムソン
   イアン・ホルム
   ロニー・パーカー
   デンホルム・エリオット