レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(2008年アメリカ)

Revolutionary Road

うへぇ...こりゃスゴい。。。
邦題通り、ホントに“燃え尽きる”内容の映画で、正直言ってビックリしてしまった。

97年、世界中を感動の涙で席巻した『タイタニック』で悲劇のカップル、ジャックとローズを演じた、
若手実力派俳優レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレット、彼ら2人が10年以上もの歳月を経て、
また違った形の作品で共演し、しかも夫婦を演じるということで期待はかなり高かったはずです。

監督は99年に『アメリカン・ビューティー』でオスカーを獲得したサム・メンデス。
彼はケイト・ウィンスレットと私生活で結婚しており、今回は初めて主演に彼女を起用しました。

勿論、違う映画なので『タイタニック』みたいなロマンスを期待しても仕方がないが、
おそらく素敵な夫婦関係を描いた一本として、劇場公開当時、観に行った人もいたのではないだろうかと、
想像するには難くない作品で、実際に企画が立ち上がった時点でファンの期待は大きかったはずだ。

ところが、いざ観てみてビックリさせられるのは、
彼らが演じた夫婦はあらゆる意味で不幸せな夫婦で、予想だにしない想像を絶するラストへ向かっていくことだ。

フラッシュ・バックで2人の出会いを描いている部分はあるが、
映画は序盤から終盤まで、ほとんどが夫婦の口論で綴られており、精神的に混沌とした様子が描かれます。
50年代という時代性もあってか、従来型の生活を打破したい妻のエイプリルと、ナンダカンダで現実を考え、
今の生活を壊し切れない夫のフランク。2人は2児の親であり、閑静な住宅街に住宅を購入している。

どうやら、ある程度の蓄えがあるらしく、生活も決して困窮しているわけではない。
2人の子供も順調に育っており、お互いに浪費癖があるというわけでもない。
ところが彼ら夫婦の重大な問題点は、お互いの気持ちが離れつつあるという点でした。

特に進歩的なエイプリルの今の生活を打破したいという気持ちはとても強く、
フランクは強く彼女の希望を否定することはできず、パリへ転居する準備を始めます。

しかし、既にお互いの気持ちにすれ違いがあり、離れつつあることが表面化してしまい、
2人の行動はやがて暴走し始めてしまいます。フランクは浮気性な心を走らせ妻以外の女性と関係を持ち、
エイプリルは感情の起伏が激しくなり、子供にも強く当たり、隣家の主人を誘惑してしまいます。

正直言って、浮気に走るというだけなら、2時間ドラマでよくある内容。
ただ本作はそれだけで終わらずに、エンディングへ向けて作り手が牙を向け始めます。

劇中、不動産担当の女性の息子で、精神病院に入院していたジョンという男が、より夫婦をかく乱します。
彼に悪意があったかどうかはともかく、ある意味では的を得ていたジョンの指摘に少なくともエイプリルは驚き、
そして最終的にはジョンの暴走した発言により、フランクとエイプリルは“裸”にさせられてしまいます。
(最後に彼が言い放つ、「その子でなくて良かった」という言葉は、あまりに強烈なパンチでしたね...)

もう何もかもが壊れてしまい、次第に元には戻れなくなってしまったかのように思えたフランクとエイプリル。
しかし、とある朝、突如として朝食の準備をしていたエイプリルがフランクに朝食のメニューを問いかけます。

久しぶりに充実した朝食のテーブル。
不思議と会話も弾み、最高に幸せな朝食の時間を過ごし、フランクは感謝の言葉をエイプリルに伝えます。
しかし、ホントはこういう時間こそ、危険な時間であるということを忘れてはならなかったのです・・・。

表面的には良き亭主に見えていても、実情は役割を果たしきれてはいなかったフランク。
そして自身の果たせなかった夢を忘れようと家庭に収まったものの、理想的な生活を追い求めて、
パリへの移住を提案したものの、これも果たせず、精神的に絶望してしまったエイプリル。

映画はそんな2人のすれ違う姿、ぶつかり合う姿を執拗に描くことを通して、
もう後戻りできない精神状況にまで追い込まれていく過程を、実に克明に描いております。
50年代の閑静な郊外の住宅街の空気を表現する、美術やカメラの色使いも実にお見事で、
サム・メンデスの映像作家としての力量の高さを、こういった部分に感じますね。

僕は本作、正直言って、好きなストーリー展開とは言えないのですが...
『アメリカン・ビューティー』ほどではないが、十分に出来の良い、見事な秀作と言っていいと思う。

それにしても、レオナルド・ディカプリオはいい役者になりましたね。
ケイト・ウィンスレットが上手いことは以前から感じていましたけど、彼もまた、スター俳優から脱皮した感じです。
それから前述したジョンを演じたマイケル・シャノンも出番は少ないものの、強烈な印象を残します。
あまり映画賞レースには絡みませんでしたが、もっと評価されても良かったと思いますね。

凄く良く出来た映画だとは思いますが、
『タイタニック』のカップル再び!みたいな軽い気持ちで本作を観たら、痛いしっぺ返しが待っています。
なんか観ちゃいけないものを観たような気にさせられる、なんともフクザツな内容ですからねぇ。
忘れてはなりません、これはあくまで『アメリカン・ビューティー』を撮ったディレクターの監督作だということを。

念を押すように言いますが、覚悟して観た方がいい映画です。
おそらくこんな映画、デートだとかラブラブな雰囲気で観たら、トンデモないことになってしまいそう・・・。

(上映時間118分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 サム・メンデス
製作 ボビー・コーエン
    ジョン・N・ハート
    サム・メンデス
    スコット・ルーディン
原作 リチャード・イェーツ
脚本 ジャスティン・ヘイス
撮影 ロジャー・ディーキンス
編集 タリク・アンウォー
音楽 トーマス・ニューマン
出演 レオナルド・ディカプリオ
    ケイト・ウィンスレット
    マイケル・シャノン
    キャシー・ベイツ
    キャスリン・ハーン
    デビッド・ハーパー
    ディラン・ベイカー
    ゾーイ・カザン
    ジェイ・O・サンダース
    リチャード・イーストン

2008年度アカデミー助演男優賞(マイケル・シャノン) ノミネート
2008年度アカデミー美術賞 ノミネート
2008年度アカデミー衣装デザイン賞 ノミネート
2008年度ラスベガス映画批評家協会賞主演女優賞(ケイト・ウィンスレット) 受賞
2008年度セントルイス映画批評家協会賞主演女優賞(ケイト・ウィンスレット) 受賞
2008年度デトロイト映画批評家協会賞主演女優賞(ケイト・ウィンスレット) 受賞
2008年度バンクーバー映画批評家協会賞主演女優賞(ケイト・ウィンスレット) 受賞
2008年度ロンドン映画批評家協会賞主演女優賞(ケイト・ウィンスレット) 受賞
2008年度ゴールデン・グローブ賞主演女優賞<ドラマ部門>(ケイト・ウィンスレット) 受賞