RED/レッド(2010年アメリカ)

RED

予想以上にヒットしたおかげで、続編の製作も囁かれている作品ですが、
最初に結論から申し上げますと、期待していたほど面白くはなかった...というのが、ホントのとこかな。

片っ端から懐かしい役者たち大集合みたいな感じで、
リタイア感溢れるオッサンたちを中心に据えたアクション映画という位置づけで、
確かに映画のコンセプト自体は、実にユニークではあるのですが、コメディ・パートが弱いかな。

アクション映画としてのエッセンスは3〜4割程度、コメディ映画としてのエッセンスも同じぐらい、
残りは恋愛の要素かなぁという解釈をしたのですが、笑いの要素が弱くて、中途半端になってしまいましたね。

個人的には、もう少し笑わせてくれる映画かなぁと期待していただけに、
全体的に中途半端な感じで、笑えそうで笑えないみたいな、妙なジレンマを感じましたね。
思い切って、コメディ映画を専門に撮っているディレクターに任せた方が良かったのかもしれません。

監督のロベルト・シュヴェンケは05年に『フライトプラン』を撮った映像作家なのですが、
『フライトプラン』もそうなのですが、あとチョットのところで押し切れない感があるんですよね。
まぁ演出の基本的な部分はしっかりとできていますので、何かが上手くいけば、もっと良くなると思うのですが。

『フライトプラン』は終わりが近づくにつれて安定感を失った感があったのですが、
本作の課題は中盤ですね。映画のテンポは抜群に良いのですが、どうにも詰め込み過ぎた感があります。
もう少しポイントを絞った方が良かったかもしれません。全般的に無駄なエピソードが多かった気がします。

キャスティング的には主演のブルース・ウィリスは良かったのですが、
何と言っても久しぶりに大きな役でスクリーンに帰ってきたサラ演じるメアリー=ルイーズ・パーカーだろう。

彼女はここ数年、映画の仕事を抑えて、TVの仕事などを中心的にこなしていましたが、
ここまで彼女をプッシュする企画自体が無かったので、個人的には嬉しかったですね。
保険会社の電話員として勤める冴えない中年女性であったにも関わらず、
いざ、元CIAのフランクと行動を共にして、命からがらの危機に瀕したことから、
いつの間にかノリノリなキャラクターに変わってしまうなんて変化も、抜群に印象的でしたね。

それと、何と言っても、ドレス姿でマシンガンをブッ放すという豪傑なマダムを演じたヘレン・ミレンが強烈だ。

彼女、06年の『クイーン』でついにオスカーを受賞して実力派女優として評価されたわけなのですが、
意外に彼女のキャリアって、チョット変わった部分があって、こういうキャラクターもできるんですよねぇ。
数多くのベテラン俳優が出演しておりますが、本作の中では彼女が一番、光っていたように思いますね。

特に終盤、パーティー会場のホテルのキッチンで追っ手となるCIAの工作員たちを、
マシンガンをブッ放して、片っ端から片付けていく一連の流れが、凄いインパクトがありましたね。

それと、もう一点、強調したいのは、
CIAの資料室の爺さんを演じたのは、何と懐かしのアーネスト・ボーグナイン!
もう93歳という高齢なはずなんですが、何ともアクティヴな映画で元気そうな姿を見せています。
(相変わらずの特徴的な表情で、古くからのファンなら気づくはず・・・)

まぁとにかくキャストの平均年齢が高い映画ではありますが、
映画自体は勢いがあって、演出も今風で若々しい。矢継ぎ早に映画が展開するスピード感もあります。

そこをジョン・マルコビッチに代表されるように、ただ淡々と仕事をこなしていく様子を
描いている作品ではあるのですが、年寄りとは言え、一様に凄腕のスペシャリストではないという、
どこかに間抜けな部分を残した点が映画の特色なはずなのですが、この点が活かされていないのが残念。

主人公のフランクにしても、続く襲撃の数々にピンチの連続だというのに、
何とかサラのことをクドこうと必死というアンバランスな設定なのに、この妙味がイマイチ活きていない。
ジョン・マルコビッチ演じる元凄腕エージェントにしても、おバ●な部分もあるのに“押し”が弱い。
どうせなら、もっと徹底してコメディ映画にして欲しかったと思うし、この辺、作り手の思い切りが足りません。

ハリウッド・スターも徐々に高齢化が進んできましたので、
本作のような“盛りの過ぎたスター、大集合!”みたいな企画が増えつつあるように思いますが、
何事もそうなのですが、本作のように中途半端になってしまっては、上手くいった試しがありません。

結局、このままで終わってしまっては映画としては企画倒れだったと言わざるをえないのですよね。

しかしながら、前述したようにアクション・シーンは良い。
これは中途半端にガン・アクションを撮ったというわけではなく、見事に徹底できている。
やはり映画にとって、こういう芯の通った部分というのは、必要不可欠だったのですよね。
おそらく本作の作り手も気づいていたのだと思いますが、今更、このキャストを集めて、
この内容で真っ当なアクション映画にしてしまっては、他作品との差別化が図りにくいという難点があります。

そこで原作に合わせてユーモアを交えたといった感じなのですが、
いかんせん中途半端に笑いをとりにいきすぎましたね。やるなら、もっと大胆にやって欲しいと思います。

ですから、狙った映画の方向性だけは何となく理解できるのですが、
では、本作の作り手が具体的にどういった部分で観客に笑って欲しいのか、
その意図がよく分からない結果になってしまっており、この部分ではひじょうに苦しい映画です。

どうやら続編を製作するようなのですが、今度はもっと大胆にアプローチして欲しいですね。

(上映時間111分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ロベルト・シュヴェンケ
製作 ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ
    マーク・ヴァーラディアン
原作 ウォーレン・エリス
    カリー・ハムナー
脚本 ジョン・ホーバー
    エリック・ホーバー
撮影 フロリアン・バルハウス
編集 トム・ノーブル
音楽 クリストフ・ベック
出演 ブルース・ウィリス
    ジョン・マルコビッチ
    ヘレン・ミレン
    モーガン・フリーマン
    ブライアン・コックス
    カール・アーバン
    メアリー=ルイーズ・パーカー
    リチャード・ドレイファス
    レベッカ・ピジョン
    アーネスト・ボーグナイン
    ジュリアン・マクマホン