ラットレース(2001年アメリカ)

Rat Race

いやぁ、こりゃホントにくっだらない映画ですね(笑)。

ラスベガスでカジノを経営する大金持ちと、彼の仲間である富豪たちの道楽として、
現金200万ドルをラスベガスからニューメキシコ州の田舎町の駅のロッカーから
獲得するレースに参加させられた、6組の男女の壮絶なまでの足の引っ張り合いを描いたコメディ映画。

まぁ『裸の銃を持つ男』シリーズのジェリー・ザッカー監督作品なだけあってか、
一つ一つのギャグがあまりにくだらなく、無意味にドタバタさせた映画ではあるのですが、
全米で大ヒットしただけに映画のテンポは実に良く、久しぶりに痛快な作品でしたね。

個人的にはラストの展開が面白味に欠けるなぁと感じていたのですが、
まぁ許容される範囲のラストに帰結したと解釈するしかないでしょうね。

原題は「働いても、働いてもお金がたまらない状態」を示しているそうで、
このタイトルの意味は、映画を最後まで観た人にしか分からない原題になっていますね。

まぁベタなギャグが連発ですが、あまりのくだらなさに根負けしてしまったようで、
さすがにこれだけ並べられると気持ちいいですね。さすがはジェリー・ザッカー(笑)。
家族旅行で来たパパがトラブルに巻き込まれて、第二次世界大戦の退役軍人の集会のステージに
ヒトラーの車で突撃し、ヒトラー顔負けの演説をしてしまうシーンは特に面白かったですね。

これでもう少し徹底したラストになっていれば、
満点の映画と言ってもいいぐらいに調子が良かっただけに、勿体ないですね。
この辺もまたジェリー・ザッカーらしいと言えばそれまでですが、このあたりがB級っぽい臭いを残す由縁かな。

ヘリコプターのパイロットである女の子が、突如、彼氏に挨拶しに行くと言って、
いざ彼氏の家に近づいたら、家の駐車場に元カノの車が停っていることに気づき、
冷静さを失って、ヘリを操縦しながら市街地を逃走する彼氏の車を追跡するチェイス・シーンも面白い。
(っていうか...この超低空飛行でのチェイスって、凄い怖い・・・)

まるで見た目に合わない性格の変貌ぶりで、顔つきから変わってしまい、
彼氏を罵倒しながら常軌を逸したレヴェルで復讐に転じるギャップが凄かったですねぇ。

キャスティング面も日本では知名度はそこまで高くはありませんが、
ブレッキン・メイヤーやエイミー・スマートなど当時、ハリウッドでも期待されていたホープを数多く起用しており、
どちらかと言えば、脇役的な存在としてキューバ・グッディングJrやウーピー・ゴールドバーグが固めています。

モンティ・パイソン≠フジョン・クリーズがレースの主催者シンクレアを演じているのですが、
強いて言えば、彼のキャラクターがあまりにベタ過ぎて、もう少し工夫が欲しかったところかな。
どんな小さなくだらないことでも賭けにして、つまらんギャグを言って、一人で笑い飛ばすなんて、
身勝手な大富豪の典型例みたいなキャラクターなのですが、ラストで悪あがきもせず、
アッサリと退場してしまいますし、もう少し捻りのあるキャラであった方が面白かったですね。

わざと自家用飛行機を不安定飛行させて、同じ搭乗者の誰が一番最初に吐くかを
賭けの対象にするなんて、あまりにくだらないが、如何にもジョン・クリーズらしいギャグ。

この映画で好感が持てるのは、一人の特異的なキャラクターに依存しなかったところで、
あくまでレースは群像劇として成り立たせているところが、ひじょうに上手かったですね。

何せ、ジェリー・ザッカーは『裸の銃を持つ男』シリーズでは、
レスリー・ニールセンのキャラ一つだけで映画を成立させていただけに、
もうチョット、ローワン・アトキンソンのインパクトが残るかなぁと期待していただけに、
予想以上に全てのキャラクターが均等に目立っている感じで、これがむしろ良い方向に機能しましたね。

ローワン・アトキンソン演じるエンリコはまんま“ミスター・ビーン”みたいな感じで登場してきますが、
エルパソへ行くという臓器の運び屋のトラックに跳ねられたことをキッカケに、冷凍してある心臓を素手で
触ったりして、すっかりグロテスクな遊びに走ってしまうんだけど、これが悪趣味極まりない大暴走(笑)。
そして最後はオリジナル劇場予告編でも紹介された、高速鉄道に飛び乗るという、人間離れした技を披露。
まるでジェリー・ザッカーは彼を人間として扱っていなかったかのようですが、少しギャグとしては滑り気味かな。
彼がいくら頑張っても、彼のインパクトが強くなることはなく、これは群像劇だったので仕方ないかも。

映画のラストではスマッシュ・マウス≠フコンサート会場に迷い込むシーンがありますが、
前述の通り、このまとめ方はもう少し何とか考え直して欲しかったかな。あまりに強引過ぎましたね。

但し、久しぶりにベタベタなコメディ映画をしっかりと楽しませてもらったという意味で、
僕は本作、よく頑張ったと思うし、21世紀に入っても、こういうくだらなさを映像化していることに、
ある意味で感銘すら覚える。刻一刻と映画も変化していく中で、いつまでこの路線で頑張れるか、
正直言って、僕にはよく分からないけれども、僕はこれはこれで、風化して欲しくはない類いの作品だと思う。

どうでもいいけど、
バービー博物館をバービー人形の博物館だと思って、立ち寄ったら、
ナチス・ドイツを称える“クラウス・バルビー”の博物館だったという、少々マニアックなギャグも忘れ難い。

ベタベタなギャグで固めた作品ではあるのですが、
一方でこういうマニアックなギャグも織り交ぜるあたりが、本作でのジェリー・ザッカーの賢さかな。

(上映時間111分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ジェリー・ザッカー
製作 ショーン・ダニエル
    ジャネット・ザッカー
    ジェリー・ザッカー
脚本 アンディ・ブレックマン
撮影 トーマス・E・アッカーマン
音楽 ジョン・パウエル
出演 ローワン・アトキンソン
    ジョン・クリーズ
    ウーピー・ゴールドバーグ
    キューバ・グッディングJr
    ブレッキン・メイヤー
    ジョン・ロビッツ
    セス・グリーン
    エイミー・スマート
    キャシー・ナジミー