プルーフ・オブ・ライフ(2000年アメリカ)

Proof Of Life

劇場公開当時、主演のメグ・ライアンとラッセル・クロウの不倫スキャンダルが話題となり、
映画の本編とは全く違う方向ばかりで話題となってしまったサスペンス・アクション。

監督は『愛と青春の旅立ち』のテイラー・ハックフォードで、今回はかなり本格的なアクションを描いている。

話しは簡単。
南米のデカラで誘拐されたアメリカ人技師ピーターを救出すべく、
イギリスの保険会社に所属する人質交渉人テリーが交渉するが、
そんな彼が長い交渉の中で、ピーターの妻アリスに恋心を抱く・・・というお話し。

まぁ前述の通り、本編とは一切関係のないところで話題となった作品ではありますが、
予想外にも(?)かなりしっかりした作品であり、やや過小評価だった感がありますね。
やや尺が長く、多少の中ダルみを感じさせられる作品ではありますが、駄作ではないと思います。
もっと上手く撮ろうと思えば、おそらく出来た作品だとは思うのですが、この出来でもそんなに悪くない。

まぁ欲を言えば、この内容ならば恋愛のファクターはいらなかったかな。
さすがにテイラー・ハックフォードの映画なだけあって、一本の映画に何でもかんでも詰め込んでる感じで、
相変わらず情報過多で盛り込み過ぎな映画になっていたけど、それでもギリギリのとこで持ちこたえた感じです。

まず、欲張りすぎた感を強く抱かせるのは、
アリスとテリーの不倫の恋心を描くのに必要最小限の描写で乗り切ろうとするのですが、
あまりに短時間の間で彼らの恋が進展してしまうことにあるだろう。やはり性急な処理に見えてしまう。

それだけでなく、アフリカでアリスが夫ピーターとの子を流産したというエピソードを敢えて入れたのも疑問。
基本的にこの映画、編集がキチッとできていない。もっと割愛できたばずだし、一方でロマンスは足りない。

いや、「足りない」と表現すると誤解されそうなのですが、
こんな程度のロマンスなら、いっそ描かない方がずっと賢いと思うのですよね。
この辺の要領の悪さは、いかにもテイラー・ハックフォードらしいって感じがします(笑)。
結果、いろいろな要素を詰め込もうとして、映画はやや方向性を見失っている感があるし、
最終的に観客に何を見せたかったのか、よく分からない内容に陥ってしまっています。

確かに終盤にピーターを奪還すべく展開されるミリタリーなアクション・シーンはなかなかですが、
結果として大味な印象がどうしても拭えませんね。アクション映画としても、一枚落ちる感じです。

が、ここから褒めます(笑)。

とは言え、平和ボケした僕の観点から感想を言えば、
異国の地で働くことの厳しさをそこそこピンポイントに描けているのだろうと思いますね。
映画としては物足りなさもありますが、麻薬犯罪がはびこり、慢性的なゲリラ犯罪も後を絶たない国ってのは、
今尚、世界中に多く存在しているのです。残念ながら身代金目的の外国人誘拐事件も後を絶ちません。

特に麻薬絡みの組織犯罪ともなると凶悪性が増したりしますから、命の保障も当然、ありません。
そういう意味では、映画の前半でチョットした口論から別居を切り出してしまい、
イライラしていたピーターが車列の中で、突如として現れた武装集団にアッという間に拉致されてしまいます。
このシーン、近年の映画としてはかなり上手く描けていたシーンだと思うのですが、
訳が分からない間に助けを求める間もなく、短時間で誘拐されてしまうことの恐ろしさ、
命の危険を感じる恐ろしさなど、観客に猛烈な恐怖心を煽る上手い演出だったと思いますね。

テイラー・ハックフォードの映画って、当たりバズレが激しいイメージがあるのですが、
今回はなんか...どちらとも言い難い微妙な出来ではあるのですが、
僕はこの誘拐シーンだけでも、そこそこ価値のある仕事だったと思いますね。
かつて、同じように様々なエピソードを詰め込んで見事に失敗した84年の『カリブの熱い夜』では、
このように特筆すべきシーン演出が皆無だったためか、本作に対するイメージはそう悪くありませんね。

2時間を超えてしまったのは、無駄と思えるエピソードを片っ端から削れば解決できたでしょうね。
おそらく脚本上ではもっとアリスとテリーの恋愛について深く言及されていたのだろうけど、
上映時間の都合上、多くのカットがあったのでしょうね。だから2人が惹かれ合うことが明確になるシーンでは、
やや不自然な感じがありますね。それなら、いっそ2人のロマンスは全部カットした方が良かったですね。

話しは最初に戻りますが(笑)、
この映画での共演が縁でメグ・ライアンはラッセル・クロウと不倫の恋に落ち、
撮影当時、彼女は俳優デニス・クエイドと結婚し、彼との間に子供もいましたが、
大胆にも本作が全米公開される頃にデニス・クエイドと離婚してしまい、スキャンダルになってしまいました。

が、ラッセル・クロウともアッサリ別れたらしく、
皮肉にも本作を境に、一気に彼女の仕事は減少してしまいます。
ひょっとしたら“ラブコメの女王”というイメージを覆したかったのかもしれませんが、
チョット最近の彼女の活動を思うに、悔やまれる契機だったのではないでしょうか。
この作品の後、03年の『イン・ザ・カット』ではヌードになってまでの大胆演技で話題となりましたが、
僕は特段、彼女の熱狂的なファンというわけではないとは言え、なんだか悲しい気分になりましたもん。

なんかやっぱり、この映画を観るたびに思うのですが、
メグ・ライアンはそれまでの既成概念に飽き飽きして、キュートなイメージから必死に脱却したがっているようで、
意識的にラブコメやロマンチック・コメディといった類いの作品から遠ざかっていたのかもしれませんね。

まぁ何はともあれ、一概に駄作とも言えない作品で、軽い気持ちで観ると、案外、楽しめちゃう作品だと思う。

(上映時間135分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 テイラー・ハックフォード
製作 テイラー・ハックフォード
    チャールズ・マルヴィヒル
脚本 トニー・ギルロイ
撮影 スワヴォミール・イジャック
音楽 ダニー・エルフマン
出演 メグ・ライアン
    ラッセル・クロウ
    デビッド・モース
    パメラ・リード
    デビッド・カルーソ
    アンソニー・ヒールド
    スタンリー・アンダーソン