プロジェクト・イーグル(1991年香港)

Project Eagle

86年に製作された『サンダーアーム/龍兄虎弟』の続編。

まだジャッキーが出演する映画が日本では、“ドル箱映画”であった時代の作品で
映画館での劇場公開が終了になって、ビデオ化されても、なかなかレンタル屋で借りられなかった時代の作品だ。

さすがに持ち味のジャッキー・アクションも全盛期の頃の映画ですので、
何もかもが勢いがあって面白いのですが、特にクライマックスの猛烈な強風の中でのアクションが印象的だ。
これはこれでジャッキーの映画の大きな特徴なので僕は許容範囲だと思っているのですが、
ひょっとすると観る人によっては、全体的にコメディ・テイストが強過ぎて、否定的に捉えられるかもしれません。

元々の持ち味ではあったのですが、このようにやたらとギャグに走るようになったのは、
やはりジャッキー自身が人気スターとして、映画を確実にヒットさせなければならないという
猛烈なプレッシャーがあったことの裏返しのような気もするんですよね。だからギャグに頼らざるをえなかったのかも。

僕が小学生の頃は、まだ映画にそこまで強い興味は無かったんだけれども、
不思議とテレビで放映されていたジャッキーの映画は、数多く観ていて、本作のこともよく覚えています。

そもそも、いくら“アジアの鷹”として有名とは言え、
アフリカのサハラ砂漠のド真ん中にナチス・ドイツが隠したとされる金塊を探し当てたら、
そのうちの1割をあげるよなんて依頼が、そうも簡単にジャッキーにいくのか不思議なんですが、
ジャッキーはそういった違和感をも、持ち前のコミカルさで乗り切ってしまう。

さすがに自分で主演映画の大半を監督してきただけあって、
何度もこういう状況をまとめることができた経験があるからこそ、これだけの力技ができたのでしょうね。
この強引さこそ当時のジャッキーの香港映画界に於ける、猛烈な勢いを象徴するものと言っても過言ではありません。

ただ、映画のインパクトとして本作はジャッキーの狙い通りに必ずしもいったわけではないと思う。
莫大な資金を投じて、実際にサハラ砂漠のド真ん中でロケ撮影を敢行したものの、
映画の中でその雄大なロケーションを活かしたスケール感を出せていないのは、大きな反省材料でしょう。

ひょっとすると、この頃のジャッキーにとってはサハラ砂漠でロケすること自体が目的だったのかもしれません。

映画は主人公がナチス・ドイツがサハラ砂漠の真ん中に隠した金塊を探してくれと
大富豪から依頼されるところから始まるのですが、ジャッキーに何故か同行する女性がサハラ砂漠の専門家という
名目で大富豪から同行を指示されるのですが、その専門家としての片鱗は全く見えないのが残念。
おそらく紅一点と共にアクション映画を撮りたいジャッキーの願望を具現化させたのでしょうけど、
本作に限っては、このヒロインはもっと存在意義を持たせるべきでしたね。あまりに“お飾り”にし過ぎです。

特に中盤の砂漠のホテルでのシーンでは、映画のコミカルさを演出するためだったのでしょうけど、
ドタバタさせようとギャグを入れた分だけ、ハッキリ言って、映画にとっては逆効果にしか見えなかった。

映画で一番、インパクトがあったのは冒頭の洞窟からの脱出してのアクション・シーンだろう。
ビニール製のような素材の球体の中に入り込んで、転がりながら山を“落ちて”いって逃げるという、
常識では考えられない脱出方法をとるジャッキーの破天荒さが実に突き抜けたものを感じさせますね。

現実に外的な衝撃をそうとうにクッションできる球体があるとすれば、
転がりながら山岳地帯からの脱出にはもってこいの道具で、実に面白い発想だと思いましたね。
しかも、球体からジャッキーが出てくるシーンなんかもシュールな感じで、思わず笑ってしまいましたね。
本作はこのオープニングがあっただけで、十分に価値があると言っても過言ではないぐらい、インパクトが強い。

おそらく80年代半ば以降のジャッキーには、かなりのプレッシャーがあったと思います。
持ち前のカンフー・アクションで頑張るジャッキーですが、マンネリ化を防ぐ工夫は感じられる作品が多い。
しかし、何故かいっつもジャッキーの映画は同じ感じになっちゃうんですね。それは、コミカルな部分の問題だ。

ドタバタ劇はいいのですが、どうにも映画のスパイスになりえていない。
結果から言うと、よくあるジャッキーの映画という印象でしかなくって、チョット勿体ないくらい空回りしている。

ジャッキーにお供する女性たちを、もっと映画の中で生きる存在として欲しかったですね。
これでは、あまりに“お飾り”感が否めず、どうしても映画が良い意味で盛り上がらない。
どこか間抜けなジャッキー映画の魅力も分かりますが、この手の映画のヒロインはもっと大切にして欲しい。
特に砂漠の専門家ということで主人公についていくことになる、気の強い女性はなんだか扱いが悪い。

日本人として、唯一の出演となった池田 昌子にしても存在感をアピールできずに終わってしまうし。。。

ただ、何故にこの映画に日本人を登場させ、実際に池田 昌子を出演させたのかも疑問だ。
おそらくは当時のジャッキーの映画の大きなマーケットとして日本も含まれていたからだろう。
当時のジャッキーは着々と欧米への進出準備を進めていた時期で、本作もかなりハリウッド映画を意識している。
従来の香港の映画には無かったような発想、撮影スタイルが数多く含まれており、驚かされます。

そういう意味で、やはりジャッキー自身の監督作品ということもあってか、
どうしてもビジネスライクな側面が見え隠れするところが気になってしまいますね。これは少し残念・・・。

そのせいか、映画全体として意味がよく分からない演出や仕掛けが散見されますね。
あまり深いことを考えずにジャッキーの映画は楽しみたいからこそ、こういった部分が気になって仕方がない(笑)。
ジャッキーには是非とも、もう少し映画の全体像をキチッと捉えながら、映画を撮って欲しかったですね。

何はともあれ、ジャッキーのアクションは相変わらずですので、この点はご安心を。

(上映時間114分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ジャッキー・チェン
製作 ウィリー・チェン
脚本 エドワード・タン
撮影 アーサー・ウォン
音楽 マイケル・ライ
出演 ジャッキー・チェン
   ドゥ・ドゥ・チェン
   エヴァ・コーボ
   マーク・エドワード・キング
   池田 昌子