パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト(2006年アメリカ)

Pirates Of Caribbean : Dead Man's Chest

第1作の世界的な大ヒットを受け、3年ぶりに製作されたシリーズ第2弾。

今回は言わば、“つなぎ”の作品に当たるのですが、
オーソドックスな海賊映画が大当たりした前作から、若干、路線変更があったようで、
今回はいつの間にか30年ぐらい前に、ヒットしそうなB級パニック映画の様相を呈しており、
この辺のデザインやストーリー上の発想は、おそらく賛否両論でしょうね。

まぁB級映画ばりにグロテスクな呪いについては、許容してあげたいなぁと思うのですが、
僕がこの映画を観ていて、凄く気になったのは、作り手の中で第3作へのネタ振りをしておきたいという
気持ちがスクリーンいっぱいに出過ぎていて、本作単独で成立しえない部分があるのはツラいかな。
(まぁこれは『バック・トゥ・ザ・フューチャーPARTU』と一緒なんだけれども・・・)

それと、何でもかんでも描こうと欲張ったもんだから、
映画が完全に中ダルみ状態で、さすがに2時間30分はえらく長く感じたかな。
まぁ前作も決して短い映画ではなかったのだけれども、本作は前作以上に長く感じましたねぇ。

本作は待望の夏休み映画でしたし、
話題性のあるエンターテイメントとして全世界で劇場公開された人気作ですから、
さすがに2時間30分というヴォリュームは重た過ぎるような気がしますね。

事実、実際に本編を観ると、もっと編集で削れる部分はあったと思います。
確かにこれだけヴォリュームがあれば、見応えのある映画という実感も生まれるのですが、
もう少し映画をシンプルにデザインして欲しかったし、要点を整理して欲しいですね。
第1作のヒットを受けて決定した企画なわけで、色々とエピソードを足したせいか、
3部作にしようというコンセプトも後付けで決定し、全体的に詰め込み過ぎた感が強いのが残念です。

とは言え、アクション・シーンという意味では、それなりにしっかりとしている。
起伏に富んだ上手い構成にはなっていて、見せ場をキッチリ作っているのには、相変わらず感心させられる。

次から次へとアクション・シーンを展開し、あくまで視覚的には見劣りしないように配慮され、
さすがにハリウッドのプロダクションの力ですね。この規模と技術力は相変わらず凄いです。
まぁこの辺はジェリー・ブラッカイマーのプロデューサーとしての手腕の高さを象徴しているのでしょうね。

それと、相変わらず各キャラクターの造詣が凄いですね。これはホントに感心する。
前作ではジャック・スパロウ船長だけでなく、バルボッサをジェフリー・ラッシュが好演していましたけど、
今回は幽霊船の船長デイビー・ジョーンズをビル・ナイがグロテスクに見事な存在感を発揮。
ここまで徹底したキャラクター造詣は、ホントにこの手の映画にとっては大きな影響を与えますね。

今回もジョニー・デップ演じるジャック・スパロウが大暴れの映画になっていますが、
前作と比べれば、トボけたような味わいが減って、もっと思い切ったコメディ演技にシフトした感じで、
前作と比べると、微妙にスパロウの人間性の表現の方向性を変えたような気がしますね。

監督のゴア・ヴァービンスキーはこのシリーズのファンの期待を裏切らない仕事っぷり。
僕も前作を楽しんだ一人ですが、確かに本作も前作の流れを踏襲しております。
ですから、微妙な変化点はありますけれども、映画としての大枠はブレていないとは思います。
少なくとも映画として、映画のカラーが大きく異なるということはありませんね。

が、前述したように前作の良さというものを再確認して欲しかったですね。
前作の良さって、少なくとも僕の中では極めて単純明快なアドベンチャーだったことなのです。
勿論、キャラクターの良さも大きかったとは思うし、スケールの大きさも勝因の一つだろうけど、
前作にあったオーソドックスなストーリー構成というのは、映画に単純明快な面白さを与えたと思うんですよね。
これって、別に工夫が無かったわけではなくって、不変的な冒険映画のスタイルを追求した結果だったのです。

まぁ最近の映画界では、少なくなったイベント性あるシリーズですから、頑張って欲しいんですよね。
最近はホントにこの手の映画がヒットせず、シリーズ化して成功した例は少ないですからねぇ。

ところで本編とは、あまり関係ないところではありますが...
ディズニー映画ということを考慮すると、あまりにグロテスクな描写や残酷描写が多くてビックリですね。
そもそもが映画の冒頭にある、棺の中からカラスを撃ち殺すシーンもビックリしましたけど、
強制労働を強いられた呪われた船員たちの描写など、かなりグロテスクで生々しい。
(壁に張り付けられてミイラ化した船員が話し始めて、脳ミソが離れそうになるシーンは、かなり気持ち悪い・・・)

とまぁ・・・子供向け映画らしくはない部分はありますが、
それでも21世紀に誕生したファミリー・ムービーの決定版として、楽しみにしているファンが多いこと、
そしてジョニー・デップの代表作の一本になったことが決定づけられた続編になったと思いますね。

但し、もう一点、この映画の作り手に言いたい。
頼むから、エンド・クレジット後に1シーン挟み込むのであれば、もっとエンド・クレジットは短くして欲しい。
それと、もっと重要な意味合いのあるシーンにして欲しい。本作なんかは、あくまでオマケでしかない。
それでいながら、シリーズのお約束のように、エンド・クレジット後に1シーンあるから観たのですが、
思わず、「なんだ10分のクレジットを流しておいて、これだけかよ。。。」と落胆せざるをえませんでした。。。

エンド・クレジット後のオマケ・シーンは今や、
数多くの映画で採られているだけに、もっと意味のある使い方をして欲しいですね。

(上映時間150分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ゴア・ヴァービンスキー
製作 ジェリー・ブラッカイマー
脚本 テッド・エリオット
    テリー・ロッシオ
撮影 ダリウス・ウォルスキー
編集 スティーブン・E・リフキン
    クレイグ・ウッド
音楽 ハンス・ジマー
出演 ジョニー・デップ
    オーランド・ブルーム
    キーラ・ナイトレイ
    ビル・ナイ
    ステラン・スカルスゲールド
    ジャック・ダヴェンポート
    ケビン・マクナリー
    ナオミ・ハリス
    ジョナサン・プライス
    ジェフリー・ラッシュ

2006年度アカデミー美術賞 ノミネート
2006年度アカデミー視覚効果賞 受賞
2006年度アカデミー音響編集賞 ノミネート
2006年度アカデミー音響調整賞 ノミネート