パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド(2007年アメリカ)

Pirates Of Caribbean : At World's End

世界的な大ヒットとなった、人気シリーズ第3弾。

あくまで第1作に熱狂した立場として、言わせてもらうなら...
もう、ここまでいってしまうと、シリーズの方向性が完全に変わってしまったとしか考えられないですね。

チョット残念ながら、もうこれは支持できない(苦笑)。
いや、駄作とまでは言いませんけど、純粋なアドベンチャーとして楽しめたシリーズが、
いつの間にか“ゲテモノ映画”になり下がってしまったような感じで、第1作にあったような面白さが
完全に無くなってしまい、映画の方向性がまるで違うベクトルを示しているとしか言いようがないですね。

映画の後半にある、女神カリプソが巨大化して、
大量のカニが口から放出され、船に乗る人々がパニックになるシーンなんか、見事に悪趣味(笑)。
これって、ファミリー対象のディズニー映画として、珍しいデザインだと思いますね。

そりゃ、相変わらずこのスケールで映画を撮れるって時点で十分凄いことなんだけれども、
スケールが大きくなるにつれて、映画がドンドン、おかしな方向へと向いてしまった感がありますね。

もうそろそろ第4作が公開されるようですし、
今一度、本シリーズのスタッフは何故、第1作が予想外なぐらい大ヒットしたのか、
その理由を見直して欲しいですね。僕は、やはり本シリーズは冒険映画であるべきだと思います。
アドベンチャー性を如何に引き出すかが、このシリーズの本質だと思うんですよね。

だから“呪い”に固執するのもいいんだけど、
もっと何かを追い求めているんだという感情を高揚させる要素を“撒いて”おかないと、
あれやこれやとクリーチャーを登場させても、一体、何をやってるのか分からなくなるだけ。

特に次第にメチャクチャになっていく、映画のクライマックスの合戦なんかは、
その最たるもので、胸躍るアクション・シーンという見せ場がまるで成立していないですね。

そうそう、懐かしのチョウ・ユンファが出演しておりますが...
ジャケットに登場するほどだったので、重要なキャラクターなのかと思いきや、
いざ本編を観てみたら、そこまで重要な役どころではなかったのが、変な意味で驚きでしたね(苦笑)。

登場人物で言えば、主演のジョニー・デップ演じるジャック・スパロウが・・・
これは第1作からのファンはどう捉えるのか、是非ともアンケートをとってみたいですね。

と言うのも、色々と小さなギャグを織り交ぜながら活躍するのですが、
第1作では、トボけたキャラクターであるにも関わらず、要所で鋭く活躍していたイメージがあったのに、
前作からは急激にコメディ・パートだけを担う、“冷やかし”のようなキャラクターに陥ってしまい、
挙句、滑ってしまうギャグも多くて、キャラクターの魅力がかなり落ちてしまった気がしますがね。。。

もう、彼以外のキャラクターもそこまで魅力的ではないためか、
彼の存在がイマイチになってしまったら、シリーズの価値が無くなってしまいますね。。。

それと、期待されたローリング・ストーンズ≠フキース・リチャーズのゲスト出演ですが、
ジャック・スパロウの父親として登場して、しっかりと台詞もあって、そこそこ長い時間映っているのですが、
残念ながら期待されたような異彩を放つには至っていませんね。あくまでゲスト出演って感じです。

もうダメ出ししか出てこないのですが...(苦笑)、
この内容で3時間近くあるヴォリュームというのは、いささかキツいですね。
さすがにもっとカットできるシーンはあると思うし、故意に長くしたような気がしてなりません。
そしてお約束のエンド・クレジット後のオマケ・シーンも、10分にも及ぶ長過ぎるエンド・クレジット後に、
10年後の1シーンを見せるだけというのは、あまりにお粗末過ぎる。あっても無くても、いいようなシーンだ。

よく「エンドロールは最後まで観るのがマナー」という映画ファンもいるけど、
正直、このエンドロールは長過ぎますね。もっと作り手も、観客に飽きさせない工夫をするべきですね。

まぁ前作の物足りなさを補完するように、
バルボッサを復活させて、全面的に活躍させたのは正解でしたね。
終盤の合戦中の結婚式はご愛嬌ですが、結果的に彼を復活させたのは正解だったと思います。

やっぱり“伝説的な9人の海賊”を勢揃いとは言え、
根本的にこの映画はジャック・スパロウとバルボッサの物語なんですね。

第4作では監督が交代したらしいけど・・・
このシリーズを継続させるのであれば、やはりシリーズの本質を考え直して欲しいですね。
さすがにキャラクターの魅力だけでシリーズを継続させるという発想は無理があります。
そう、もうこの第3作なんかはジャック・スパロウ好きのために続けたような続編になってしまっているんですね。
(さすがにそれだけの3時間って、そうとうにキツいですよ・・・)

ちなみに今回もビル・ナイが特殊メイクで頑張っており、
ヒロインのキーラ・ナイトレイも美脚を惜しみなく披露しており、この映画で一番、印象に残っています(笑)。

映画の中盤、彼女が演じるエリザベスが
思いがけず、評議会の投票でエリザベスが海賊王に選ばれてしまうなど、
シリーズ中では彼女が最も強くクローズアップされた作品になるかもしれません。

そういう意味で、キーラ・ナイトレイのファンには必見の作品かも。

(上映時間168分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ゴア・ヴァービンスキー
製作 ジェリー・ブラッカイマー
脚本 テッド・エリオット
    テリー・ロッシオ
撮影 ダリウス・ウォルスキー
編集 クレイグ・ウッド
    スティーブン・リフキン
音楽 ハンス・ジマー
出演 ジョニー・デップ
    オーランド・ブルーム
    キーラ・ナイトレイ
    ジェフリー・ラッシュ
    ジョナサン・プライス
    ビル・ナイ
    ステラン・スカルスゲールド
    ジャック・ダヴェンポート
    チョウ・ユンファ
    トム・ホランダー
    ナオミ・ハリス
    デビッド・スコフィールド
    キース・リチャーズ

2007年度アカデミーメイク・アップ賞 ノミネート
2007年度アカデミー視覚効果賞 ノミネート
2007年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(オーランド・ブルーム) ノミネート