パーフェクト・ストレンジャー(2007年アメリカ)

Perfect Stranger

まぁ・・・色々な意見はあるかとは思うが、ミステリー映画としては及第点レヴェルだとは思う。

しかしながら、これは映画の作り方に感心できない。
確かに気持ちは分かるが、個人的にはもっと工夫した観点を持って欲しかった。
何でもいいのですが、これほどまでに謎解きのみに重きを置いた映画というのは、そうとうなリスクだと思う。

何を言わんとするかというと、
実際、この映画の感想として凄く多いように見受けられるのは、
映画のオチ(=真犯人)が割りと早い段階から、分かってしまう点だ。
これを予想外のオチだと本作の作り手が真剣に思っているとしたら、これはそうとうな大問題だ(笑)。

結局、謎解きに重きを置き、ラストのドンデン返しに偏重した映画は、
その肝心かなめのラストで映画が崩れてしまうと、完全に観るべき部分が無くなってしまうのです。

監督のジェームズ・フォーリーは92年に『摩天楼を夢みて』を撮ったディレクターですが、
最近は完全に方向を見失ってしまったような状態ですね。03年の『コンフィデンス』もイマイチでしたが、
あれで懲りなかったのか、また同じようなスタンスの映画を撮って、見事に“外して”しまっていますね。

ブルース・ウィリスも劇場公開当時のインタビューで、
「彼女(=ハル・ベリー)があまりに美し過ぎて、まともに見られなかったよ」なんて、
ニヤニヤした顔でコメントしていたらしいのですが、そんなこと言ってる場合じゃありません。
確かにハル・ベリーは魅力的だし、良い女優さんですが、もっと良い企画を選んで欲しい。。。

ブルース・ウィリスは脱アクション映画を宣言して久しいのですが、
見るっからにスケベな親父を熱演したことは、今回が初めてではないでしょうか(笑)。

まぁ早い段階から、真犯人を予想できてしまうが玉に瑕(きず)ですが、
変に映画をドタバタさせずに、落ち着いて演出したことには感心しましたね。
よくありがちなのは、この手の映画でこれ見よがしにラストでドンデン返しを作って、
映画をズタボロにしてしまう最悪なケースがありますが、本作はそこまで落ちぶれてはいません。

あくまでひじょうに丁寧にラストまで描いておりますし、
決して無理が生じないように配慮した痕跡はうかがえる作りにはなっている。
まぁそういう意味では、本作の作り手のスタンス自体には賛同できないけれども、
最悪の出来の映画にはなっていないあたりを観るに、最低限の仕事はしたといった感じでしょうか。

ただ、残念なんですよ。
前述した通り、ジェームズ・フォーリーは『摩天楼を夢みて』を撮ったディレクターであり、
あれだけ刺激的なフィルムを撮れるというのに、本作みたいなスタンスに落ち着いてしまうことが。

どうでもいいけど・・・
映画は最先端のツールを描いているつもりなんでしょうが、
チャットって、10年くらい前に流行ってはいたけれども、今はすっかり斜陽の存在ですね。
6、7年ほど前からブログが流行るようになって、日本ではミクシィが大流行、
最近はツイッターがメインストリームを歩んでいる感じで、チャットのユーザーって今は少ないんじゃないかな。

そういう意味で、本作は製作当時の情勢を考えても、やや時代遅れな題材になりつつあったのかも。

それと、できることならサスペンス映画なのですから、もっと緊張感ある映画にして欲しかったですね。
やっぱりこの映画、ラストのドンデン返しまでに力を蓄えながら映画を進めた感じで(笑)、
画面やジェームズ・フォーリーの演出に緊張感が無くって、映画全体通してのスリルに欠けていますね。

そのせいか、結局、ラストのドンデン返しも映えなかった感じで、悪循環ですね。
これで謎解き自体も面白くなかったとしたら、映画は最悪な出来になってしまっていたでしょうね。

劇場公開当時、実に多くの伏線を張っていることで話題になりましたが、
少なくとも僕が観る限り、まともな伏線と言えるのは映画の序盤だけで、残りは伏線とは呼べませんね。
極端な言い方をすれば、伏線と言うよりも「実はあのシーンは、こんなになっていました」と見せるだけで、
本作の中盤には、「あのシーンがあったから、この結末になり得た」と呼べるほどの伏線はありません。

申し訳ないけど、僕にはそんなのは“後出しジャンケン”にしか見えないのでしょね。
こういうのを観ると、いっつも「もっと正々堂々と映画を撮って欲しい」と思えてしまってなりません。

結局、この映画のミステリーを支えたのは、ストーリー的な面白さだけなんですね。
演出面での創意工夫が足りなかっただけに、僕はどうしても作り手の姿勢に賛同できません。
やっぱり、ジェームズ・フォーリーはもっと映画について、考え直して欲しいと思います。

キャスティングは良かったんだけどなぁ〜。。。
ハル・ベリーとブルース・ウィリスの共演だってのに、こんな映画になったことは実に勿体ない。
常に顔色が悪いけど、マイルズを演じたジョバンニ・リビシも良い存在感だっただけに残念ですね。

まぁ二転三転するストーリーや、スリラー映画としての側面を期待してはダメだろう。
この映画については、ある程度、寛容的に観てあげないと楽しめないとは思います。
ですから、あくまでミステリー映画としての流れだけを楽しむようにした方がいいと思います。

あぁ、そうそう、ハル・ベリーのファンなら欠かさず観といた方がいいでしょう(笑)。

(上映時間108分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

日本公開時[PG−12]

監督 ジェームズ・フォーリー
製作 エレイン・ゴールドスミス=トーマス
原案 ジョン・ボーケンキャンプ
脚本 トッド・コマーニキ
撮影 アナスタス・N・ミコス
編集 クリストファー・テレフセン
音楽 アントニオ・ピント
出演 ハル・ベリー
    ブルース・ウィリス
    ジョバンニ・リビシ
    ゲーリー・ドゥーダン
    クレア・ルイス
    リチャード・ポートナウ