バックマン家の人々(1989年アメリカ)

Parenthood

まぁ良い映画だとは思うけど、今一つ力不足かなぁ。

今やハリウッドでもトップレヴェルに立つヒットメーカー、ロン・ハワードが撮った
チョット不思議な一家、バックマン家の面々の子育てに奮闘する日々を描いたヒューマン・ドラマ。

ロン・ハワードって、群像劇の撮り方が凄く上手いんだけど、
同様に群像劇と呼べる本作に限っては、ラストの収まりの悪さがどうにも気になって仕方がない。
確かに一見すると、上手くまとめたように見受けられるが、これがどうにも訴求しないラストで残念ですね。
例えば後年にロン・ハワードが撮った『ザ・ペーパー』のような上手さが本作からは感じられないのです。

まるで子育てに熱心ではなかった父親を反面教師とし、
自らは仕事の傍ら、子供たちに付きっ切りで子育てに奮闘するギルは35歳。
妻カレンと3人の子供に恵まれ、幸せな日々と思えたが、長男のケビンは特殊学級への転籍を勧められる。

ギルの姉ヘレンは歯科医であったランプキンに逃げられたシングルマザー。
ボーイフレンドを部屋に連れ込み、次から次へと問題を抱え込む長女ジュリーの教育に悩み、
長男のゲリーは自閉症気味と様々な問題を抱え、彼女自身も相談相手がおらず、生活に行き詰っていた。

ギルの妹スーザンは科学者である夫ネイサンと熱烈に愛し合いながらも、
過剰なまでに3歳の娘に英才教育を施そうとするネイサンに嫌気が差し、
娘が5歳になるまで第2子を望まないネイサンに反抗しようと、具体的な行動に出る。

そしてギルの弟で問題児のラリーが突然、家へ帰って来ると、
初めてその存在を明かした息子クールを置いて、ラリーは早速、金の無心に奔走。
いつまでもギャンブル的な考え方しかできない借金だらけのラリーに、一家のギルの父フランクは甘く接する・・・。

各登場人物の内情を探れば、なかなか映画的に面白い題材なのですが、
これらが上手くまとまれば面白かったものの、本作はイマイチその収まりが悪い。

唯一、ヘレンのエピソードは良かったと思うけど、
本来的には映画の主軸を支えるべきギルのエピソードに僕はあまり惹かれなかった。
確かにケビンの問題は難しい問題で、そう簡単に解決できる問題ではない。
ギルが夢見るハイスクールの卒業式でケビンがギルに感謝を述べる【最高の未来】と、
ケビンが学校構内で「なんでセカンドを守らせるんだぁ!」と叫びながら銃乱射する【最悪の未来】との
対比はなかなか面白かったけれども、これらも全て単発的な面白さでしたね。

どうにもまとまりを感じさせたり、各エピソードのつながりを実感させられることが無かったのが残念。

映画の内容が内容なせいか、どことなく主演のスティーブ・マーティンも静かなのも気になりますね。
“カウボーイ・ギル”のネタには『サボテン・ブラザーズ』を想起させられて面白かったけれども、
映画のハイライトとなるほどの面白さとは程遠いかな。まぁこれは仕方ないことなのかもしれませんが。。。

とは言え、家族の良さ、暖かさを実感するには最適な映画でしたね。
ナンダカンダ言って、ラストの病院での大円卓は観ていて悪い気持ちにさせられません。
新たな生命の誕生で映画は終わるのですが、この出産が予想外な人物というラストが粋でしたね。
この辺はロン・ハワードらしい仕掛けだったと思う。この頃から、彼のマジックは健在ですね。
こういったラストを描けるからこそ、彼ならではのハートウォーミングな感覚を演出できるのだと思う。

この映画の中で一番、良い撮られ方をしていると言えば、
ギルの妻カレンを演じたメアリー・スティーンバーゲンだろう。
79年の『タイム・アフター・タイム』から90年の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』までがピークですね。
(そういえば本作のゲリーがポルノ・ビデオを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパッケージに入れてたな...)

彼女が一番良かったけど、その次に印象に残るのはヘレン演じるダイアン・ウィーストだろう。
特に彼女のエピソードとして、息子のゲリーが実の父親であるランプキンに電話して、
「迷惑だ」と言われ同居を断られるシーンが、この映画で突出した描写でしたね。
ガラス越しに彼らの感情のぶつかり合いを表現したのには、思わず驚かされた。

何故、このシーンだけここまで突出した突き放したかのような描写になったのか、
その真意は僕にはよく分からないけれども、この辺にもロン・ハワードの敏腕さが出ていますね。

全然関係ない話しですが、僕もかつて野球部に入ってたことがあって、
入りたての頃は外野の練習させられようになって、フライやライナー性の当たりの判断に随分と手こずった。
正直言って、かなり勘に頼らざるをえない部分があるし、数多くノックを受けて判断を早くするよう磨くしかない。
この映画のケビンもフライを捕球することに苦労していましたけど、敢えてコツがあるとすれば、
ケビンの祖父であるフランクが言った一言、「少し下がって取るんだ」...実はこれ、コツなんですよね。

まぁ翻訳通しての台詞だから真意は分からないんだけれども、
あからさまに詰まった当たりではない限り、うかつに前へ出ていくのは禁物。
特に金属バットで打った場合や、速球をバットの芯で打ち返したライナー性の当たりは、終盤、かなり“伸びます”。
あと、距離感が分からない場合が多いので、敢えて打球の正面に入らないで、若干、
横から打球を追う形になると捕球し易くなるように感じますね。
追い方さえ覚えれば、ファール・ゾーンへ“切れて”いく打球を捕球することは、そんなに難しくはありません。
(とは言っても、最初の守備位置の取り方と脚力も関係するから、程度問題ではありますが...)

何はともあれ、ロン・ハワードの成長過程として捉えれば、そこそこ評価に値する作品ですが、
もうチョット、訴求する内容になっていれば、もっと素晴らしい作品になっていたでしょうね。。

(上映時間123分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ロン・ハワード
製作 ブライアン・グレイザー
原案 ローウェル・ガンツ
    ババルー・マンデル
    ロン・ハワード
脚本 ロン・ハワード
    ババルー・マンデル
撮影 ドナルド・M・マカルパイン
音楽 ランディ・ニューマン
出演 スティーブ・マーティン
    メアリー・スティーンバーゲン
    ダイアン・ウィースト
    リック・モラニス
    マーサ・プリンプトン
    トム・ハルス
    キアヌ・リーブス
    ジェーソン・ロバーズ
    ホアキン・フェニックス
    ハーレイ・ジェーン・コザック
    デニス・デューガン
    クリント・ハワード

1989年度アカデミー助演女優賞(ダイアン・ウィースト) ノミネート
1989年度アカデミー主題歌賞(ランディ・ニューマン) ノミネート