ポワゾン(2001年アメリカ)

Original Sin

「金持ちな旦那でいいかな? ムフフ...」

「美人過ぎる妻でいいかしら? ウフフ...」

この台詞のやり取りさえなければ、この映画はおそらくもっと好印象で終われたでしょうね(苦笑)。
半ば、アンジェリーナ・ジョリー主演が成人映画指定のレイティングを受けたとのことで、
劇場公開当時から下世話な話題で盛り上がっていましたが、内容は正直、そうでもありません。
(っていうか、これで成人映画かよ?って感じなぐらい・・・)

まぁそれはさておき、キューバのコーヒー会社の経営者ルイスが、
文通相手であったジュリアと実際に対面したその日に結婚し、いつしか彼女の持つ魔性の魅力の虜になり、
最高の新婚生活を送るものの、実はジュリアにはトンデモない秘密があった・・・というお話し。

監督のマイケル・クリストファーは本作が監督デビュー作のようですが、
まるでオペラのような劇的なストーリーを、ものの見事にストレートに映像化しており、
ある意味でこれは堅実な映画作りと言っていいような気がするし、そんなに悪い出来だとは思わない。
映画のラストのドンデン返しも、多少の無理は感じるが、映画をブチ壊すほどであったかと聞かれると、
イカサマ・ポーカーの“くだり”を活かすなど、予定調和的なセオリーがあって、一概にそうとは言えないと思う。

が、この映画で一番、物足りなかった部分は、
本来的には重要であったはずである、ルイスがどうしてジュリアをパートナーとして愛するようになり、
その愛がより確かなものへと深まっていき、最終的には命を懸けるほどにまで至ったのか、
その愛の過程に於ける説得力に著しく欠ける点であり、これは本作にとって致命的であったということだ。

勿論、欲望的な部分が大きかったのかもしれませんが、
あくまで映画の最後を観て分かるに、ルイスはジュリアを守るためにと命をも差し出します。
僕はこの行為は欲望的な側面だけではカヴァーできない、究極の愛だったと思いますね。
そうであるからには、もっと男女の愛の深さについて、強く言及すべきだったと思いますね。
いくらなんでも、ルイスが命懸けなことに対して、「なんかウソくさいな・・・」と観客に疑義を与えてしまうのです。

但し、この映画の認められる部分は語り口の良さだろう。
2時間近く、コッテリとしたラブストーリーを見せられる割りには、サクサク、サクサク映画が進んでいく。

これは作り手のストーリーテリングの上手さだと思うし、
一つ一つのエピソードを軽視したわけでもなく、ダラダラ描くわけでもない。
従って仕上がりが冗長な感じにならず、軽率にならずと、バランス良い仕上がりになったという印象があります。
監督デビュー作とは言え、この辺はマイケル・クリストファーが上手く演出できたおかげだと思いますね。

アントニオ・バンデラスとアンジェリーナ・ジョリーの共演という
濃過ぎるハリウッド・スター2人の恋愛映画という設定が心配だったけれども(苦笑)、
作り手の上手さに助けられたかな、予想外にその濃さが嫌味になる感じはなく、むしろ丁度良かったのかも。

本作は69年のフランス映画『暗くなるまでこの恋を』のリメークらしく、
そのせいではないだろうが、本作でも随分と異国情緒を意識した作りにはなっていますね。
特に当時の風情・情景を忠実に再現したと思われる、キューバの建屋の造詣は素晴らしく、
これはそうとうに資金力が必要とされる企画であったであろうと、なんだか余計なことを考えてしまいます(苦笑)。
(実際の撮影はどうやら、メキシコで行われたみたいですね・・・)

どうでもいい話しでありますが...
一度も会ったことがない女性と数回、文通しただけで会ってすぐに結婚なんて、僕にはできないなぁ〜(笑)。

正に本作はそのリスクを描いているに等しいのですが、
一回も実際に会ったことがない女性と待ち合わせて、現れたのがアンジェリーナ・ジョリーだったら、
そりゃ誰だってビックリしますよね(笑)。しかし、世の中、そんなに甘い話しはないというのがセオリーですね。

そこで登場するのが、謎の探偵ダウンズという男なのですが、
この映画、勿体ないところが、このダウンズの使い方ですね。どうせなら、もっとしつこく描いて欲しかったなぁ。
いくらなんでも、このダウンズという男の末路は呆気なさ過ぎるかな。演じたトーマス・ジェーンは好演なのに。

とまぁ・・・やっぱり少しずつ、食い足りない部分が散見される作品で、勿体ないんだよなぁ〜。
もっともっとサスペンスフルに見せれていれば、映画はグッと面白くなっただろうし、スパイスも利いただろう。

結局、2人の愛の深まりが不明瞭だったおかげで、映画の前半が今一つノリ切れず、
2人のドラマをサスペンスフルに押し通すことができなくって、映画の後半がやはりノリ切れない。
結果として残ったのは、映画の前半も後半もそれぞれ均等に難点を克服できずに構成してしまったこと。
これで本作の良さがイマイチ、プッシュし切れずに映画が不完全燃焼で終わってしまいましたね。
オマケに成人映画のレイティングを受け、余計な期待を抱かせたことも実に罪深い(笑)。

あと、個人的にはこの映画はジュリアに独白させる形式をとる必要は無かったと思う。
確かに罪を告白するという意味では、よりルイスとジュリアの愛が罪深いものであったことを
強調できたのかもしれませんが、ラストのドンデン返しをよりチープにすることを助けてしまった感がある。

良い部分はあったおかげで、決して悪い出来の映画ではないだけに、
もう少しスマートに撮っていれば、もっと良い出来の作品に仕上がっていたであろうと思えるだけに勿体ない。

(上映時間116分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

日本公開時[R−18]

監督 マイケル・クリストファー
製作 デニーズ・ディ・ノヴィ
    ケート・グインズバーグ
    キャロル・リース
原作 ウィリアム・アイリッシュ
脚本 マイケル・クリストファー
撮影 ロドリコ・プリエト
音楽 テレンス・ブランチャート
出演 アントニオ・バンデラス
    アンジェリーナ・ジョリー
    ジョアン・プリングル
    アリソン・マッキー
    トーマス・ジェーン
    ジャック・トンプソン