ジュエルに気をつけろ!(2001年アメリカ)

One Night At McCool's

確かにリブ・タイラーって肉感的な女優さんだし、
90年代後半は『アルマゲドン』のヒロインとかに抜擢されていて、こういう映画のヒロインに起用することの
映画の作り手の意図はよく分かるんだけれども、それ以前に映画の出来がイマイチでしたねぇ。

「脚本を読んでいて夢中になったの。だって今まで、こんなシナリオ読んだことなかったんですもの」

劇場公開当時、インタビューでリブ・タイラーがこんな答えをしていた記憶があるのですが、
個人的には典型的な悪女映画というイメージを脱し切れなかった印象ですね。

しかも男性本位な見地が目立ち、ひょっとしたら女性には不評な内容かもしれません。。。

映画の基本スタイルは『羅生門』。
ジュエルというセクシーな女性の虜になった3人の男の証言を中心に、
映画のクライマックスに向かう前準備として、それまでの経緯をそれぞれの証言から描いていきます。
ですから、映画の冒頭、いきなりクライマックス当日の日という設定で映画は始まります。
いわゆるフラッシュ・バック形式なのですが、『羅生門』スタイルを採用しているため、
それぞれの証言内容の細部が、微妙に自分たちの都合の良いように書き換わっているのが面白い。

まぁ言ってしまえば、こういうシュールな部分で楽しめる人にはそこそこオススメ。
ですが、基本的にこの映画、ベースラインとなるはずのコメディ・パートがダメですね。
最初から最後までドタバタ劇が展開するのですが、その大部分が映画の流れに成り切れていない。

残りは、リブ・タイラーのお色気ということになりますが...
映画の序盤で無理矢理、ジュエルがランディに肉体関係を迫るシーンよりも、
ランディの親戚の弁護士カールが最初にランディとジュエルをバーベキューに誘ったエピソードで、
ジュエルがどんな服装を身にまとっていたかを必死に想像しながら、思い出すシーンのが面白かったかな。

まるでコスプレ・ショーかの如く、ほとんど下着姿で登場したり、ホットパンツ姿だったり、
映画の本筋とは一切関係ない部分で、とにかくカールの想像(妄想?)が時間稼ぎ(笑)。
だけど、これが本作の中で一番のリブ・タイラーの見せ場だったと言っても過言ではないと思えます。

監督はノルウェー出身のハラルド・ズワルト。
どうやら近年もコメディ映画を中心に活動しているようですが、もっともっと向上して欲しいところ。
言葉は悪いですが、やはりこのレヴェルで満足すべきではないですね。

単発的にはそれなりに良いシーンがあるのですが、
前述したように映画の流れが今一つ作り切れていないため、映画全体のことを考えて撮って欲しいですね。

ジョン・グッドマン演じる刑事の存在感に関しても、チョット中途半端なんですよねぇ。
そういう意味では、もっと各登場人物を機能的に描くべきで、活かし切れていないと思うんですよねぇ。
一方で弁護士カールを演じたポール・ライザーはMっ気たっぷりのオイシイ役柄で役得でしたね。

但し、結果的にもっと役得だったのは、チョイ役だったはずのマイケル・ダグラスでしたね。
やっぱりメイン・キャラクターになるべき人物の描き込みが甘いと、こうなってしまいますね。

まぁおそらくは、キャメロン・ディアスの『メリーに首ったけ』などの下ネタ満載コメディ映画の路線を
狙ったんだろうけれども、よくもまぁ・・・リブ・タイラーは本作への出演を決意したもんですね。
と言うのも、特に映画の前半なんかはかなりキツい下ネタの連続ですよ、この映画(笑)。
なんせ男性の願望丸出しな内容の映画で、彼女自身もかなり露出度の高いファッションを強いられましたから。

敢えて一つ言えば、やたらと窃盗時にDVDデッキにこだわるジュエルの発想は面白かった。
どうやら物質欲がかなり強いみたいで、そもそもがランディに取り入るのも彼が持ち家を所有していたから。
(そう考えると、ジュエルって凄い現実的な女性なのかもしれませんね・・・)

何故に本作の企画のプロデュースを兼務してまで、
マイケル・ダグラスが出演したのかはよく分かりませんが(笑)、カツラを着用した(?)頭髪が妙に印象的だ。
ヤケに小汚い会場でビンゴに必死になっている姿が似合っているフツーなオッサン姿が自然でしたね(笑)。
でも、マイケル・ダグラスもこういうさり気ない部分での役作りが上手いんですよねぇ。

さりとて、映画の出来があんまり良くないせいか、こういう上手さがあるのが余計に勿体ないかな。
映画にとって、キャスティングって結構重要なんですが、あくまで経済力の問題もあって、
どうしても上手くいかない場合がありますから、本作のように恵まれたキャスティングを実現しながらも、
結果的に残念な出来で終わってしまった映画というのは、ホントに勿体ないと思うんですよね。
(ましてやハラルド・ズワルトは本作で初めて規模の大きな映画を撮ったわけですよ・・・)

まぁリブ・タイラーが好きで好きでたまらないという人にはオススメできますし、
下ネタをメインとしたコメディ映画が好きという人にも、まずまずオススメできる内容かと思います。
(リブ・タイラーに魅力を感じないという人にはキツいかもしれないけど・・・)

しっかし、こういう映画を観ると改めて実感しますねぇ〜。
何がって...「オトコって、ホントに単純だなぁ〜」ってことですわ(←ちなみに自分含む)。

(上映時間92分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ハラルド・ズワルト
製作 マイケル・ダグラス
    アリソン・リオン・セーガン
脚本 スタン・セイデル
撮影 カール・ウォルター・リンデンローブ
音楽 マーク・シェイマン
出演 リブ・タイラー
    マット・ディロン
    ジョン・グッドマン
    ポール・ライザー
    マイケル・ダグラス
    アンドリュー・ダイス・クレイ
    レオ・ロッシ
    リチャード・ジェンキンス
    アンドレア・ベンドウォルド