ボディ・ターゲット(1993年アメリカ)

Nowhere To Run

どうでもいい話しなのですが、
本作と同じ93年にヴァン・ダム主演で『ハード・ターゲット』という作品が製作されましたので、
タイトルが似ていて、どっちがどっちだか分からなくなる時があります。

『氷の微笑』の脚本家としてその名を世に知らしめたジョー・エスターハスが
かつて『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』のメガホンをとったリチャード・マーカンドの原案に注目し、
一部、内容をアレンジすることにより映画化を実現させたアクション映画だ。

とは言え、いつものヴァン・ダム映画と微妙にテイストが異なり、
不動産会社の嫌がらせに悩む母子家庭の一家を助けるというエピソードが加えられています。

まぁただ・・・いつものヴァン・ダム映画にはさせないというビジョンが明確にあるかのように、
いつものヴァン・ダム映画と比べれば、アクション・シーン自体が少なく、全体的に大人しい。
過去に『ヒッチャー』を撮ったロバート・ハーモンが監督なだけあってか、
どちらかと言えば、アクションよりサスペンスに重点を置いた仕上がりになっていますね。

ただ個人的には駄作だとは思わない。
確かに流れ者と困窮する家族という設定、それに実力行使に出る不動産会社という設定はステレオタイプだ。
しかしながらクライマックスの平穏さには、それなりの良さがあると思う。
(まぁ・・・これはキーラン・カルキンという子役の名演があるのだけれども・・・)

ちなみに、ムーキーと呼ばれていた一家の長男を演じるキーラン・カルキンは
『ホーム・アローン』シリーズで一世を風靡したマコーレー・カルキンの実弟。

後の彼の活躍を考えれば、まぁ順当な芝居ではあるのですが、
それにしても芸達者な子役で、やはり抜群に目立っているのは確か。
表情豊かな演技で、ヴァン・ダム演じるサムとの心の交流も決して退屈なものにはなっていない。

ただ作り手が半ば確信犯的に『シェーン』を想起させるタッチにしているあたりは、賛否両論を生むだろう。
僕は映画を特徴づける手法としては、評価に値するのではないかと思うのですが、
こういうのがあざとく感じられる人には、嫌悪以外の何物でもないだろう。
この辺はもっと器用に描く余地はあったと思うので、作り手がどうとでも出来た気がしますね。

個人的にはロザンナ・アークエット演じるシングルマザーとのロマンスはいらなかったかなぁ。
まぁサムが一家を守る動機の一つには十分になる説得力を帯びてはいるのだけれども、
半ば彼女のお色気に頼ったセオリーの漂わし方が、少し安直なような気がしましたね。

こういうエピソードを作ってしまうと、意地悪い見方をすれば、
サムという屈強な謎の流れ者の力を利用しているようにも解釈できちゃって、嫌なんですよね。。。
まぁこういう考えがついちゃう、僕がひねくれ過ぎてるというのもありますけどね・・・。

アクション・シーンとしては、一番凄いのは、冒頭の護送車がクラッシュするシーンだろう。
あのシーンの迫力が凄すぎて、ハッキリ言って、後半のアクションが物足りないかな。
確かに乾いたようなアクションで、映画のリズムを乱さないように作り手が危惧しているのは分かるけど、
せめて冒頭のシーンの迫力に匹敵する迫力あるアクション・シーンが一つぐらいはあっても良かったと思う。
と言うのも、あくまでヴァン・ダム映画ですからね。どうしても、一つだけでいいから求めたくなります。

ただあまり過度に擁護する気はないけれども、
映画の基本路線としてシリアスさを重視したスタンスには好感が持てるし、
そういった映画にヴァン・ダムが積極的に参加したということにも好感が持てる。

そういう意味でも本作は意義のあった作品だったと思いますし、
ヴァン・ダムが役者として成長したいという願望の現われだと思いますね。

ところで何故にジョー・エスターハスがアクション映画をモチーフにしたのか、よく分からないですね。
よくよく考えてみれば、追われる身でありながらも、見知らぬ土地で他人の土地に侵入し、
勝手にキャンプして、潜伏生活を送り始めるという発想が凄いですね。

まぁそんなに出来の悪いシナリオではないのですが、
いざ映像化したら何ともトンチンカンなシーンが2、3出てくるのが妙ですね(笑)。

ただ悪役キャラクターの徹底した描き方は良いと思う。これは脚本の功績だろう。
ああいったやり過ぎとも解釈できる、徹底した悪役だからこそ、倒し甲斐があるってもんです。
シーン演出の良さもありますが、ジョス・アクランド演じる不動産会社の社長が実に上手く描かれている。
特に印象的なのは、ホラー映画ばりに描かれた地域住民への説明会のシーンで、
真下からライトを思いっきり当てられて、どう見たってアヤしい悪党のように描かれており、
ここまで徹底した造詣が為されていれば、さすがに説得力がある。

いつものヴァン・ダム映画のノリで観てしまうと、やや肩透かしを喰らうと思います。
本作の後にその傾向に顕著になっていく、ヴァン・ダムの「シリアスな映画出演計画」の一環だと思ってください。

物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、見方を変えれば、そんなに悪い出来の映画ではないと思います。

(上映時間94分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ロバート・ハーモン
製作 クレイグ・ボームガーテン
    ゲイリー・アデルソン
原案 ジョー・エスターハス
    リチャード・マーカンド
脚本 ジョー・エスターハス
    レスリー・ボーエム
    ランディ・フェルドマン
撮影 デビッド・グリブル
音楽 マーク・アイシャム
出演 ジャン=クロード・ヴァン・ダム
    ロザンナ・アークエット
    キーラン・カルキン
    テッド・レヴィン
    ティファニー・トーブマン
    エドワード・ブラッチフォード
    ジョス・アクランド