最後の初恋(2008年アメリカ・オーストラリア合作)

Nights In Rodanthe

かつて、『コットンクラブ』、『運命の女』で2度にわたって共演している、
リチャード・ギアとダイアン・レインが、中年男女のロマンスを演じる恋愛映画。

ダイアン・レイン、正直言うと、年とったなぁ〜。
『運命の女』で久しぶりに話題となった後、彼女の映画出演が続いていますが、
容姿だけから言って申し訳ないのですが、さすがに年齢は隠せないかな・・・。
でも誤解しないでください、僕は彼女は自然体に理想的な年齢の重ね方をしていると思っていますので。

ただ、この映画で別に若々しく見せる必要はないのですよね。
リチャード・ギアにしても、中年男性というより、白髪頭でシワだらけの爺さんだし、
ダイアン・レインにしても、子育てに明け暮れ、顔の小ジワが隠せない中年の主婦といった感じ。

お互いに年齢を重ねてきたことを隠さず、現在の容姿を否定せずに受け入れ、
第二のロマンスを体現するといった志向で、映画の方向性としては悪くなかったと思いますね。

また、ロケーションも抜群に素晴らしく、ノースカロライナ州の海岸沿いに建つホテルは美しく、
周辺を装飾する砂浜や波、そして草木のコントラストがカメラに美しく収まっている。
主演2人の恋愛劇も、こういった背景があったからこそ、美しく成立したのかもしれません。

今や日本では高齢者社会の時代ですから、
本作のような枯れた魅力を出し始める年代のロマンスや、高齢者の恋愛を描いた映画というのも、
立派なマーケットとして成立していくような気がしますねぇ。事実、本作なんかはそんな感じですし。

とは言え、ダイアン・レインにはチョット可哀想なところがあって、
リチャード・ギアと一括りに扱われがちではありますが、実は彼女はリチャード・ギアより16歳も年下。
ほぼ同年代に売れ始めたスターですから、なんとなくお互い違和感はないのかもしれませんが、
さすがに16歳も年が離れていると、同世代とは言い難いものがありますね(苦笑)。

映画の出来としては、及第点レヴェルだと思う。
但し、あまり細かい部分にツッコミを入れられると苦しい映画なので、できるだけ寛容的に観てあげて欲しい。
えてして、この手の恋愛映画はご都合主義が介入してこないと、ストーリーを上手く進められないのですから。

ラストの海岸でヒロインが見る“奇跡”は、なんか取って付けたような感じだが、
それまでの一連の流れ、ストーリーテリングに関しては評価してあげてもいいと思う。
実直かつ誠実に物語を語ろうとする意図は感じられるし、映画の軸にブレがない。

さすがにノーメークではないとは思うが、
ここまで顔の小ジワを隠さずにカメラに映るなんて、ダイアン・レインもよく引き受けたなぁと感心する。
いや、別にこれは皮肉を言っているわけではなく、モデルとしてではなく女優を優先させたということ。
『運命の女』での名演にしてもそうなのですが、彼女の姿勢はもっと評価されてもいいと思いますね。

猛烈な台風の夜、叩きつけるような風雨に恐怖心を煽られ、
まるでお互い引き付けられたように結ばれる2人ですが、こういった姿が若者の専売特許ではなくなり、
中年を迎えたリチャード・ギアとダイアン・レインが堂々と演じられる時代になったというのが感慨深い(笑)。
やっぱり、そういう意味では本作って、立派な次世代型の恋愛映画ですよ。

注文を付けるとすれば、
リチャード・ギア演じるポールが有能な外科医という設定がどうしても必要だったのかという点だ。

映画の中盤あたりまでは、幾度となく外科医として勤務するポールの回想が紹介されるのですが、
これら回想シーンの全てが、ホントにこの映画にとって必要だったのかは疑問で仕方がなかったですね。
ハッキリ言って、割愛しようと思えばできたはずだし、回想に時間を費やすならば、
個人的にはポールに恋愛心くすぐられるヒロインの描写に、もっと時間を費やして欲しかったですね。

久しぶりに映画で観たスコット・グレンも、感動的な芝居ではありますが、
もう少し彼が演じるロバートが、失った妻を執刀したポールをどのようにして許していくかを、
繊細に描いて欲しかったですね。和解はしてないのかもしれないけど、このエピソードに一区切り付けるには、
あまりに無理矢理にエピソードを終了させてしまったような気がしますね。これでは尻切れトンボです。

というわけで、決して完璧な映画ではないし、
ある程度、恋愛映画に対して寛容的に観れる人でなければ、この映画は合わないだろう。
但し、今まで映画のコンセプトとして、スポットライトが当たることは希少だった中年男女の恋愛を、
堂々とまるで若者同士の恋愛であるかのように、真正面から描いたという点では評価に値します。
おそらくこれからも、本作のようなコンセプトの映画が何本か製作されることでしょう。

どうでもいい話しではありますが...
この邦題は何とかならないものでしょうかね。いくらなんでも“初恋”はないでしょ(笑)。
そりゃあ、まるで初恋のようなトキメキがあるほど、衝撃的な恋愛だという主張は分かるけどさ・・・。

(上映時間96分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ジョージ・C・ウルフ
製作 デニーズ・ディ・ノヴィ
原作 ニコラス・スパークス
脚本 アン・ピーコック
    ジョン・ロマーノ
撮影 アフォンソ・ビアト
編集 ブライアン・A・ケイツ
音楽 ジャニーン・テソリ
出演 ダイアン・レイン
    リチャード・ギア
    スコット・グレン
    ジェームズ・フランコ
    クリストファー・メローニ
    ヴィオラ・デイヴィス
    パブロ・シュレイバー
    メイ・ホイットマン