ニューイヤーズ・イブ(2011年アメリカ)

New Year's Eve

まぁ、ナンダカンダ言って...大晦日って1年では特別な日だと思います。
それは世界的にも同様で、日本のような正月休みがない国であっても、やっぱり特別な一日のようですね。

そこに目を付けた作品であって、大晦日に沸く大都市ニューヨークの中心部の“ボールドロップ”に集う、
複数名の男女のそれぞれのドラマを群像劇として描いた作品で、一時期流行ったタイプの作品ではありますね。

監督は『プリティ・ウーマン』のゲイリー・マーシャルですが、彼は本作の前に『バレンタインデー』を撮って、
世界的に高評価を得たこともあってか、言葉は悪いですが...それに味をしめて本作を撮ったような気がしてしまう。
と言うのも、結論から言えば、映画自体は物語は特段悪いとは思わないけど、個々のエピソードがバラバラな感じで
最終的に上手く交差させることが出来ず、どこか散漫な映画という印象になってしまったような気がしてならなかった。

正直言って、もう少しエピソードの数も絞って描いた方が良かったと思う。最後までまとまらない感じがツラい。

ミシェル・ファイファー演じるウブな中年女性のエピソードは印象に残りましたけど、彼女以外は起伏に乏しい。
何故かジョン・ボン・ジョビまで出演していて、彼は売れっ子の歌手という設定で恋人とケンカ中でしたけど、
もう少し彼にも見せ場を与えて欲しかった。もともと俳優活動はしてましたけど、彼でなくともいいような役どころで残念。

まぁ、群像劇なのでこういうことがあるのは予想はできたことなのですが・・・
さすがに金持ちのレコード会社の二世(息子)が、前年の大晦日に会った女性を忘れられずに「中身が大事」と言い、
1年前にたった1回しか会ったことがない女性を追い求めて、その女性との再会を目指してニューヨークへ向かい、
更に親への義務を果たした後にパーティーを抜け出すというエピソードの結末が、かなりの力技で違和感が拭えない。

もし、そうなのであれば相手の女性ももっと人間的な魅力をしっかりと描いて欲しかったなぁ。
日々の生活に一生懸命なのは分かるし、愛に溢れているのも分かるんだけど、異性として魅力的だとか
内面が素晴らしいとか、そこまでは映画を観ているだけでは分からず、彼が必死に走り回る理由がよく分からなかった。

母親としてだけではなく、一人の女性としての魅力をもっとしっかり描けていれば最後はキマったのでしょうけどね。

どうでもいい話しですが...ヒラリー・スワンクとハル・ベリーって、なんとなく似てますね(笑)。
ハル・ベリー演じる看護師のエピソードも、ベテランのデ・ニーロとの交流がクローズアップされますけど、
彼女のエピソードも最後にドレスアップして恋人とのWeb会議で会話するのが涙ぐましい姿ではあるのだけれども、
このWeb会議のやり取りがあまりに安っぽく観えちゃって、彼女のエピソード自体を勿体ない扱いにしてしまった。
ゲイリー・マーシャルって、もう少し気の利いた演出をしてくれるディレクターだと思っていたんだけど、本作は今一つ。

新年いち早く出産したカップルに賞金を出すという病院でのエピソードも、なんだか微妙ですよねぇ・・・。
まぁ、これも穏便に申告することで平和的に解決するという帰結ではあるんだけど、コメディとして見るには微妙。

とまぁ、これだけではなく本作は大晦日に集う幾つものエピソードを重層的に描いている。
群像劇なのだから、僕はこれらがもっと絡み合って最後に収束するものだと思っていたのですが、そうでもなかった。
単に場所としてタイムズ・スクエアのカウントダウン・イベントに集まるというだけで、話しとしては絡み合わないのもある。

作り手もあれやこれやと、方々に手を付け過ぎたせいで、なんだか映画が散漫に映ってしまったのも事実。
脚本自体に問題があったのかもしれないけど、これは見せ方、演出そのものが平坦過ぎて盛り上がらなかった感じ。
しかも、エピソードも無駄に多過ぎた。これでは焦点が定まらないし、単に場所として集まるだけ、というのもイマイチ。
そうなのであれば、タイムズ・スクエアという場所が何か不思議な力を持っているかのような演出的仕掛けが欲しい。

それが毎年やっている“ボールドロップ”だというのも無理があるし、そんな感じで描かれてはいない。
ゲイリー・マーシャルの監督作品の脇役としては常連のヘクター・エリゾンドが映画の中盤にやっと登場してきて、
この“ボールドロップ”の機械的なトラブルを直しに来る職人というのは良かったけど、彼もそこまで印象には残らない。

劇場公開当時そこそこ日本でも話題になっていた記憶があったので、個人的には期待していた作品でして、
ゲイリー・マーシャルの作品も大ハズレは少ない印象だったのですが、もっとしっかりと“魅せて”欲しかったなぁ。

大晦日に働いている人々がいる。働く人がいるおかげで、世の中は成り立っているのだ。
よく簡単に「お正月はみんな休めばいんだよ」と平和な立場から、勝手なことを言う人がいますけど、
現実に誰も働かない、特に私企業に所属する人が全員休んでしまったら、それは大変な社会になってしまいます。
インフラもそうですが、何も警察と消防だけが動けばいいという世の中では既にないですからね。シフト制であったり、
勤務形態は色々ですけど、いずれにしても正月に働く人がいるからこそ、安心して正月を過ごすことができている。

正月明けに日常を取り戻すに貢献している人たちもいるわけで、それらを止めてしまうと影響はデカいはずです。

そういう意味で本作はそんな大晦日に働いている人々にスポットライトを当てたのは良かったですね。
病院の看護師は少々ベタですけど、“ボールドロップ”を華やかに行うためにスタッフとして働く人たちをはじめとして、
そのイベントに関連して働く人々も描いている。イベントがあるということは、裏で働いている人が多くいるということ。

まぁ、日本は正月が大型連休になる人が多いので、大晦日はどこか浮かれている人が多いですよね。
元旦もめでたい日ですけど、確かに大晦日の方が浮かれた雰囲気があるかも。特に日本はそうかもしれないですね。

しかし、日本でもカウントダウン・イベントをやっているところもありますけど、
昨今はこういうイベントも中止・縮小化されていますので、年越しは家で過ごすという人の割合は大きいでしょうし、
外出先としても市街地のカウントダウン・イベントよりも、日本人は神社という人が多そうだから、こうはいかない(笑)。
“ボールドロップ”みたいなイベント、日本でやってるなんてのも見たことないですし、海外っぽい祝い方ですよね。

この映画の場合は、そういった浮かれた気分をベースにしながらも、働く人々にフォーカスを当てているので
それぞれにいろんなドラマがあるわけですが、中には無理に恋愛劇にしなくても良かったような気がする話しはある。
むしろそこから始まる友情が恋愛に発展するニュアンスを匂わせる程度の方が、人生賛歌として映えた気もするし。
そこはゲイリー・マーシャルが恋愛を描くことが得意だからこうなったのかもしれないけど、この手の群像劇から
ラブコメを展開する作品は数多くありますし、特徴的な映画にするためにはよく考えた方が良かった気もしますね。

欧米も正月連休があるというのはあまり聞いたことはありませんし、休みになるのは1月1日のみらしいです。
昨今の働き方改革でよく話題になりますけど、地味に日本は祝日が多いですから、欧米よりも休日が多いですしね。

とは言え、大晦日と元旦は欧米でも特別な日だからこそ、こういう映画の題材となるのでしょう。
だからこそ、他の作品と比較されて埋もれてしまうような内容にすることは避けて欲しかったなぁというのが本音。
クリスマスと年越しの瞬間を描いた映画というのは、ハリウッドでも過去に数多く作られていますからね。難しい題材だ。

ただでさえ、この手の群像劇は難しく、違和感なくそれぞれのエピソードを結び付けなければならず、
編集も難しいと思いますから、そもそも映画が目指す方向性として、恋愛エピソードを複数並べるのは難しかっただろう。

そのせいか、日本でも拡大公開されて大きな扱いを受けた作品ではありましたが、
残念ながらラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)にノミネートされるなど、そこそこの興行成績ではあったものの、
結果として高い評価を得ることはできずに終わってしまいました。正直、この散漫さを見るに不思議ではない結果です。

この散漫ささえどうにかなれば、映画のテンポも良くなっただろうし、印象は変わっていたでしょうね。
ゲイリー・マーシャルはこれまでの監督作品ではもっと上手く撮っていたのですが、本作は上手くいきませんでしたね。

紆余曲折を経ながらも、本作で描かれる人々は前向きな気持ちで新年を迎えようとしているのは印象的だ。
映画に込められたメッセージはとても前向きなものであるし、確かにこの映画を観て、元気をもらえるのも事実である。
やっぱりミシェル・ファイファー演じるウブな中年女性のエピソードが抜群に素晴らしく、これは本作の強みですね。

ただ...エンド・クレジット前に唐突に挟み込まれるNGシーンなんだけど、
中にはこのNGシーンを撮るために故意にNGを出したシーンもあるんだけど、これってホントに必要だったのかな?

(上映時間117分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ゲイリー・マーシャル
製作 マイク・カーツ
   ウェイン・ライス
   ゲイリー・マーシャル
脚本 キャサリン・ファゲイト
撮影 チャールズ・ミンスキー
編集 マイケル・トロニック
音楽 ジョン・デブニー
出演 ハル・ベリー
   ジェシカ・ビール
   ジョン・ボン・ジョビ
   アビゲイル・ブレスリン
   クリス・“リュダクリス”・ブリッジス
   ロバート・デ・ニーロ
   ジョシュ・デュアメル
   ザック・エフロン
   ヘクター・エリゾンド
   キャサリン・ハイグル
   アシュトン・カッチャー
   セス・マイヤーズ
   リア・ミシェル
   サラ・ジェシカ・パーカー
   ミシェル・ファイファー
   ヒラリー・スワンク
   ティル・シュヴァイガー
   ソフィア・ベルガラ
   ケーリー・エルウェス
   アリッサ・ミラノ
   マシュー・ブロデリック
   コモン
   サラ・ポールソン
   カーラ・グギーノ
   ジェームズ・ベルーシ

2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(サラ・ジェシカ・パーカー) ノミネート
2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(ゲイリー・マーシャル) ノミネート
2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・アンサンブル・演技賞 ノミネート