ニューイヤーズ・イブ(2011年アメリカ)

New Year's Eve

ニュー・イヤーズ・イブ(大晦日)と言うか...
日本の場合は正月三が日って、ナンダカンダ言って、やっぱり特別な空気のある日だと思う。

海外よりも日本の方が、正月という時期を大事にしている感があって、
勿論、正月三が日だろうが、特に関係なく仕事の人も多いし、そういう場合は日常との違いを感じ取るというのは、
難しいと思うんだけど、やっぱり街を歩くと、特に派手にイベントがあるわけではないにしろ、何か違うと感じる。

アメリカでも、やはり年明けを祝う習慣はあるのですが、
日本と違って、とにかく派手というか、やはりイベント的な日という意識が強いのだろうなぁと感じます。
そういう特別な一日という感覚を、この映画は実に的確に表現できているのです。

年明けを祝う、世界を代表する大都市ニューヨークで、最も有名な行事と言えば、
やはりタイムズ・スクエアで大群衆が集って、新年を祝うという、街挙げてのイベントだろう。
毎年のように行われるこの光景は、いつも日本のニュースでも紹介される、もはや定番と言っていいだろう。

そんな大晦日の一日に着目した、群像劇というのは悪くない発想だとは思う。

本作の監督は2010年に『バレンタインデー』を世界的にヒットさせた、
ゲイリー・マーシャルなのですが、元々、この人は『プリティ・ウーマン』などのラブコメで腕をならした人で、
既に70歳台半ばを迎えた、ベテラン映画監督なのですが、僕の中ではそこまで器用な人というイメージはありません。

『プリティ・ウーマン』も決して悪い出来の映画ではないとは思いますが、
それにしても製作当時のバブリーかつトレンディーなものがオシャレとされていた傾向に後押しされて、
彼のフィルモグラフィーを代表する秀作として、今も尚、愛されている映画になっているのだろうと感じているのですが、
正直言って、『バレンタインデー』にしても本作にしても、このような群像劇はそこまで上手く描けないと思っています。

本作にしても、いざ観てみると、それなりに楽しめる作品ではあるのですが、
どこか映画の前半から、悪い意味で散漫なところが目立つせいか、かなり多くのエピソードをほぼ同時進行で
ストーリーを進めるのですが、それにしても僕の中ではどこか各エピソードに“入り込めなかった”としか言いようがない。

いろんなエピソードに手をつけ過ぎたというのもあるのですが、
それにしてもどれもしっかりと肉薄できたドラマが無くって、一番のメインと思われる、
ヒラリー・スワンク演じるタイムズ・スクエアのボール・ドロップに関するエピソードにしても、どこか中途半端。
そこに映画のラストは、半ば無理矢理に年明けの瞬間に一つに収束させようとするのだから、結構、無理がある。

いや、実際は無理があっても仕方ないし、
どうやっても、この手の群像劇は力技で収束させないと、映画がまとまらないのだけれども、
やはり過去の群像劇の秀作というのは、この収束させる点がとても上手く、観客に違和感を感じさせないんですよね。
そのために、どれか一つのエピソードには明らかに重きを置いていることが多いし、幾つもエピソードは作るけど、
上手い具合に作り手が収拾できる範囲で映画を展開させて、とっ散らかった状態にはしないんですよね。

残念ながら、本作でのゲイリー・マーシャルにはそれができていない。
映画自体がとても楽しい雰囲気で満ち溢れていて、大晦日特有の浮ついた空気感というものを、
見事に映像の中で表現できている点は、本作の大きな強みだとは思うのだけれども、それでもどこか物足りない。

やはり映画のラストに、大袈裟かもしれないが、ある種のカタルシスを感じさせるぐらいでないと、ダメだろう。

それぐらいに、本質的には群像劇とはとても難しいジャンルだと思うのですが、
本作でのゲイリー・マーシャルは全体的に手を広げ過ぎて、それぞれが中途半端になってしまった感じだ。
せっかくの豪華キャストが勢揃いした企画だっただけに、この出来はホントに勿体ないと思います。

病床に伏したデ・ニーロにしても、バイプレイヤーとして良い味を出す役どころだったと思うのですが、
あまり彼の人生の終末にフォーカスすることなく、訴求するものがないせいか、悪い意味で軽い。
映画自体をシリアスに重たくしたくないという作り手の意向は間違いなくあるとは思いますが、
大変申し訳ない言い方ですが、これぐらいの役であればデ・ニーロでなくとも良かった・・・とすら思えるところがツラい。

まぁ・・・それでも映画の雰囲気作りという観点では、見るべきものがあると思う。
エンド・クレジットのNGシーン集は不必要だが、それが無くとも撮影現場の楽しい空気が十分に伝わってくる。

ニューヨークのオシャレな空気感自体からして、そうなのですが、
チョットした“奇跡”を描くというスタンスにあって、ごく日常的な“奇跡”を描こうという姿勢が良い。
これが例えば大金持ちになるとか、世界的危機を救うとかではなく、あくまで愛というテーマを貫いた点は良い。
これは『バレンタインデー』と同様ですが、“バレンタインデー”と比較すると、大晦日や元旦となると、
どこか大きなテーマを扱いたくなる部分もあったとは思うのですが、そういう欲をかかなかったのは正解だと思う。

実際にニューヨーク中心部のタイムズスクエアでのカウントダウン・イベントで撮影を敢行し、
100万人もの大群衆をしっかりとカメラに収めて、迫力と感動を活写できたことは大きな収穫でしょう。
少なくとも僕は映画の中で、このようなシーンを臨場感ある映像で収めた映画は初めて観ました。

何故か、ジョン・ボン・ジョビが出演しているのですが、
こういう役ならば、いっそのこと本人役にしても良かったのではないかと思ってしまいますね(苦笑)。

観るだけで観客に幸せな気持ちにさせるという意味では、本作は優れていると思う。
これはゲイリー・マーシャルお得意の展開なので、さすがに安定感はあると思いますが、
前述したように多くの豪華キャストに見せ場を与えるためか、全てのエピソードに於いて中途半端になってしまい、
より映画が悪い意味で散漫になってしまったところ、そしてラストにインパクトを与えられなかったのは反省点だろう。

どうでもいいけど・・・
15歳でカウントダウン・イベントにボーイフレンドと参加させるのは早過ぎるとして、
サラ・ジェシカ・パーカー演じる母親が心配して、猛反対するというエピソードなのですが、
まぁ・・・親としての想いと考えれば、万国共通の妥当な心配だとは思うのだけれども、
結果的にプレーボーイに1年間お熱を上げて、シンデレラばりに会いに行くなんて、説得力ゼロだろ(笑)。

この辺の首をかしげざるをえない部分を残すのは、ある意味でゲイリー・マーシャルらしいかも。

(上映時間117分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ゲイリー・マーシャル
製作 マイク・カーツ
    ウェイン・ライス
    ゲイリー・マーシャル
脚本 キャサリン・ファゲイト
撮影 チャールズ・ミンスキー
編集 マイケル・トロニック
音楽 ジョン・デブニー
出演 ハル・ベリー
    ジェシカ・ビール
    ジョン・ボン・ジョビ
    アビゲイル・ブレスリン
    クリス・“リュダクリス”・ブリッジス
    ロバート・デ・ニーロ
    ジョシュ・デュアメル
    ザック・エフロン
    ヘクター・エリゾンド
    キャサリン・ハイグル
    アシュトン・カッチャー
    セス・マイヤーズ
    リア・ミシェル
    サラ・ジェシカ・パーカー
    ミシェル・ファイファー
    ヒラリー・スワンク
    ティル・シュヴァイガー
    ソフィア・ベルガラ
    ケーリー・エルウェス
    アリッサ・ミラノ
    コモン
    サラ・ポールソン
    カーラ・グギーノ
    ジェームズ・ベルーシ

2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(サラ・ジェシカ・パーカー) ノミネート
2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(ゲイリー・マーシャル) ノミネート
2011年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・アンサンブル・演技賞 ノミネート