ナショナル・トレジャー(2004年アメリカ)

National Treasure

先代から追い求めている秘宝をめぐり、日々、冒険を続けるベンを主人公に、
幾重に積み重ねられた暗号を解読しながら秘宝の在り処に迫っていく姿を描いたアドベンチャー映画。

まぁディズニー映画らしい部分もあるにはるけど、
ジェリー・ブラッカイマーもそこそこ投資したせいか、まずまず見どころはある映画だとは思う。
少し尺が長過ぎる傾向にあるのが気になるけど、一応、最後までほど良いテンションが持続します。

最初に敢えて苦言を呈するならば、
やっぱりテンションに持続性はあると思うんだけど、終盤はもっとタイトにして欲しい。
映画の前置きとして、前半部分が必要だったというのは分かりますが、
終盤の謎解きを伴いながら、秘宝が隠されたスペースへと迫っていく姿を描く
映画の終盤の展開はもっとテンポ良く、スピード感をもって描いて欲しいなぁと思いましたね。

それでも、そういったモタつきが致命傷にはならず、
ほど良いテンションが持続したというのは、やはり作り手の上手さでしょうね。

監督は95年に『あなたが寝てる間に…』を撮ったジョン・タートルトーブで、
おそらく冒険活劇を撮ったのは、今回が初めてではなかろうかと思いますが、
観る前の僕の予想を遥かに上回る上手さだったと言ってもいいぐらいで、これは大きな収穫でした。

個人的にはもう少し悪役キャラクターに転じる
ショーン・ビーン演じる実業家イアンの存在を活かした方が良かったのではないかと思うのですが、
彼のラストでの描かれ方も、なんだか中途半端な感じで終わってしまうのが勿体ない感じがしますね。
(ひょっとしたら、あれが予想外に呆気ない感じで良いって言う人もいるかもしれないけど・・・)

日本では05年の春休み映画として拡大公開されていましたが、
僕がかつて観て興奮していた『インディ・ジョーンズ』シリーズなんかと比べると落ちる出来かも。

やっぱりこの辺は音楽も含めて、アドベンチャー性の違いですかね。

そりゃ比較対象が悪いとは言え、
個人的にはもうチョット、こういうイベント映画に頑張って欲しいところですね。
かつて、この手の映画はハリウッドの十八番でしたけど、明らかにここ数年は落ちてきていますからねぇ。

とは言え、当然、良い部分もありました。
特に国立公文書館から“アメリカ独立宣言書”を盗み出すシークエンスは見事に構成されており、
別に驚くほどのトリックではないが、一つ一つに仕掛けがあり、映画のテンポが実に良い。

レプリカの“くだり”や、ショッピングセンターに逃げ込むシーンなど、
時折、見せるコミカルな描写も上手く配分されており、映画のバランスも悪くない。

前述したように、ジョン・タートルトーブがここまで本格的な活劇を撮ったことはなかったので、
いきなりここまで出来るとなると、次回作にも思わず期待しちゃいますねぇ。

90年代はジェリー・ブラッカイマーのプロダクションで製作する映画が次々とヒットし、
多くの映画ファンから批判されたこともありましたけど、本作のようなタイプの映画のプロデューサーとしては
そこそこ上手く機能するのではないでしょうか。色々な意味で適材適所な使い方ができていますね。
おそらくそこまで予定はしていなかったでしょうが、ラストシーンではさり気なく続編への伏線も張られており、
意外にも計画的に映画が撮られているのではないかと思える部分があって、賢い映画だと思えちゃう(笑)。

同年、『トロイ』のヒロインに抜擢されたダイアン・クルーガーが本作にも出演していて大活躍。
この頃はハリウッド女優として、もっと大きくブレイクするのかと期待されていたと思うのですがねぇ。

本作でもその美貌は目立つのですが、ロマンス描写に説得力がないのも気になるかな。
まぁ彼女とニコラス・ケイジとのロマンスなんて、そもそもがにわかに信じ難いのですが(笑)、
なんだか知らないけど...唐突にキスシーンがあるので、2人の間にロマンスがあるのが明らかなのですが、
恋愛描写が決定的に上手くなかったのは、物足りない部分の一つかもしれませんね。

歴史の深さという意味では、ローマ史に代表される西欧史の方が深いから、
日本なんかでも西欧文化史の研究者の数の方がずっと多いのではないだろうかと思うのですが、
アメリカ史に改めてスポットライトを当てる作品として、丁度良い娯楽映画になるかもしれませんね。
過去にドラマ系統の映画では存在していましたが、本作のような娯楽映画では希少ですからね。

ミステリーの要素が強い映画ですから、
正直言って、映画の企画としてはギャンブルだったと思うんですよね。
当然、自国の歴史については特にアメリカの人々は興味関心が強いわけで、
本作のように“アメリカ独立宣言書”を盗まれないようにするため、盗むなんて発想自体がかなり突飛だ。
(思えば、この発想は『ダ・ヴィンチ・コード』みたいですね・・・)

まぁそんな難しさがあったにも関わらず、そこそこ上手くやってのけた作品だと思いますね。
無意味にやたらとCGを連発したり、派手な映像効果を採り入れた作品というわけでもなく、
純粋なアドベンチャーとしての活劇の面白さを追求した内容にはなっていると思いますね。

ちなみにカメラはキャレブ・デシャネルによるもの。
映画の中盤、時計台での流れなどでは、ロケーションの良さもあって、良いカメラです。
できることなら、もっとダイナミックなカメラワークとかもあった方が良かったとは思うのですがね。。。

(上映時間130分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ジョン・タートルトーブ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
    ジョン・タートルトーブ
原案 ジム・カウフ
    オーレン・アヴィヴ
    チャールズ・シーガース
脚本 コーマック・ウィバーリー
    マリアンヌ・ウィバーリー
    ジム・カウフ
撮影 キャレブ・デシャネル
編集 ウィリアム・ゴールデンバーグ
音楽 トレバー・ラビン
出演 ニコラス・ケイジ
    ダイアン・クルーガー
    ハーベイ・カイテル
    ジョン・ボイト
    ショーン・ビーン
    ジャスティン・バーサ
    クリストファー・プラマー
    オレッグ・タクタロフ
    デビッド・ダヤン・フィッシャー