波の数だけ抱きしめて(1991年日本)

『私をスキーに連れてって』、『彼女が水着に着替えたら』と
隔年で立て続けにヒット作を発表していたホイチョイプロダクションによる第3弾。

今回は中山 美穂が出ているからこそ、観る気になったんだけれども(笑)、
正直言って、これは相変わらずのホイチョイプロダクション節で(笑)、映画として破綻しています。
好きな人にはたいへん申し訳ない言い方だけど...これは完全に映画としてはNGだろう。

まぁ『私をスキーに連れてって』の頃からそうだったけど...
やっぱりホイチョイプロダクションは映画を完全にオモチャにしてますね。
あくまでこれらはバブルの産物にしかすぎず、お金を贅沢に使えた時代の、究極の贅沢ですね。
資金力に乏しくなったら、こんな学芸会みたいな映画の企画は通らないでしょう。

映画は湘南でFMラジオ局を自作で開設しようと奮闘する大学生4人組が、
東京のビジネスマンの強力なプッシュに恵まれ、実際にスポンサーが付く様子を描いた青春映画。

チョット映画の話しから逸れるのですが、
何となく僕の中では、バブル期の湘南と言えば、チューブ≠フイメージ。
まぁ僕はビーイングの邦楽が好きだったので、チューブ≠ヘ今でも大好きなんだけど、
特に87年のヒットシングル、『サマードリーム』が好きで、今でも聴くたびに妙に懐かしい気持ちになります。

僕、この映画にはああいう感覚を思い起こさせて欲しかったというか、
映画を観ながら、少し楽曲とクロスオーヴァーしながら考えていたのですが、
最も致命的だったのは、映画の作りがイマイチだったせいか、雰囲気が盛り上がらないんですよね。

何が言いたいかというと、残念ながらこの映画からそんな観客を煽る力が無いということ。
やっぱりこういう映画は影響力を強く持ち続けて欲しいし、感覚までもが古びてしまっているのが残念ですね。

まぁ映画は回想形式をとっていますので、
物語のメインは1982年の大学生時代になっているのですが、
使われる音楽も工夫されており、80年代序盤に流行したAOR[アルバム・オリエンテッド・ロック]を中心に
映画の公開時期から10年ほどタイムスリップした選曲になっていて、考証はそれなりに行われている。
(おそらく映画の作り手はじめ、ホイチョイプロダクションも“この世代”が多かったのでしょうね)

申し訳ないのですが...
僕のお目当てだった中山 美穂もベストな状態ではない!(笑)
頑張って日焼けして出演したのは分かるけれども(笑)、もっと彼女を魅力的に撮って欲しい。
映画のクライマックスの“トンネル”の仕掛けも、僕にはあまり面白いものだったとは思えない。

話しの土台はそれなりにできていただけに、
おそらくもっと上手くやれば、もっと魅力的な内容にできたと思うんですよね。それが凄く勿体ないです。

「そんな文句言うなら、観るなってぇ!」というツッコミが聞こえてきそうですが(笑)、
僕は本作のようなホイチョイプロダクション映画って、日本映画界の良い教訓だったと思うんですよね。
『私をスキーに連れてって』の頃から思っておりますが、これはバブル期にしかできない映画です。
日本映画界が勢いを停滞させた90年代にかけて、象徴的な存在だったと思うんですよね。

当時、隆盛し始めていたトレンディ・ドラマのノリも残した雰囲気であり、
90年代の(フジ)テレビを支えたと言っても過言ではない、中山 美穂、織田 祐二、松下 由樹と
数多くのスターを引っ張り出したというだけで、ファンには必見の一作となるのかもしれませんね。

特にヒロイン(原田 知世)を変え、“映画の顔”のイメージを一新したことには
ある程度の目的があったように思えますが、ストーリー性にも若干の変化があるのにも注目したい。

安直な言い方ではありますが、この映画が一番、甘酸っぱいかも(笑)。
特に映画の冒頭でネタバレ状態ではあるのですが、中山 美穂の結末はある意味でショック(笑)。
不謹慎にも観ていて、「オイオイ、なんでこんなオッサンと・・・!」と思ってしまいましたもん(苦笑)。

一つ感じたのは、もう一つ変えた方が良かったところは、
ユーミンとのタイアップですね。さすがにもう『私をスキーに連れてって』の域は出ない。
本来的には映画を彩り、場合によっては映画を象徴する音楽を付けなければならないはずなのに、
むしろ劇中、人気曲として扱われていたTOTO≠フ『Rosanna』(ロザーナ)の方が印象に残るんですもの。
これは本作に提供したユーミンの楽曲の弱さが露呈した結果にように思えてならないんですよね。
(別にユーミンが一方的に悪いわけではないのだろうけど・・・)

ホイチョイプロダクションは未だにバブル経済期が忘れられないらしく、
07年に久しぶりに映画を製作したかと思いきや、『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』なんて、
輪にかけて酷い出来の映画を発表して、未だバブル期の感覚を再燃させようとする動きがあるようです。

いずれにしても、この時代だから許されたであろう映画であって、
もう二度とこういう映画が許される時代はやって来ないのではないか?と僕は思ってるのですがねぇ。
(まぁ僕のこの意見にも、全く根拠はないのだけれども・・・)

(上映時間103分)

私の採点★★☆☆☆☆☆☆☆☆〜2点

監督 馬場 康夫
製作 三ツ井 康
    相賀 昌宏
原作 ホイチョイプロダクション
脚本 一色 伸幸
撮影 長谷川 元吉
美術 山口 修
編集 冨田 功
音楽 松任谷 由美
出演 中山 美穂
    織田 祐二
    別所 哲也
    松下 由樹
    阪田 マサノブ
    勝村 政信