Gガール 破壊的な彼女(2006年アメリカ)

My Super Ex−Girlfriend

まぁあまり褒められた内容の映画ではないけれども・・・
気軽に観る分には、罪の無い類いの映画だと思うし、こういうのがある意味で“大人の映画”なのだろう(笑)。

予告編なんかで、本作の存在は知っていましたから、
勝手な僕の中での想像では、実は付き合っていたカノジョが超能力を持ったスーパーマンで、
カレシは戸惑いながらも、地球の危機を救って、地球の危機をおびやかす悪者たちと対決して、
見事に撃退して、めでたし、めでたし...みたいな映画かと思っていたのですが(笑)、
いざ本編を観てみたら、まったくそういう類いのストーリーではなかったのですね。

言ってしまえば、これは色恋沙汰のもつれが生んだ、トンデモない大騒動を描いた映画。
そんな男女の恋愛のもつれが、たくさんの人々を巻き込んだ大騒動に発展するのですから、
言葉悪く言えば、人騒がせな映画という感じで、随分とノーテンキな調子の映画だ。

監督はコメディ映画の経験は豊富なアイバン・ライトマンで、
徐々に創作ペースが落ちてきているような気がするのですが、本作は結構、多くの予算を投じていますね。

但し、チョット気になるのは、全体的に下ネタに走ってしまった傾向があって、
ギャグのネタとしては、なんだか安直な気がしますね。まぁこれだけ肉食系な女子が活躍する世界ですから、
女性の勢いが凄くって、男性もタジタジみたいな恋愛関係も一つのパターン化されてきましたが、
ここまで下ネタに固執して観客の笑いをとりにきているというのは、チョット残念ですね。

かつては『ゴーストバスターズ』、『ツインズ』、『デーヴ』などで
純粋に笑いをとってきたアイバン・ライトマンですから、もう少しいろんなネタで頑張って欲しかったなぁ。
彼の構成力からすれば、それがフツーにできたであろうと思えるだけに、この安直さが残念なんですね。

とは言え、発想自体はまずまず面白い映画だと思います。
サラリーマンのマットは地下鉄でキレイな女性をナンパしたら、チョットしたイザコザあって、なんとか食事に誘う。
そしたらアッサリ2人は結ばれて、想像以上に積極的な彼女に戸惑いながらも、今までモテなかったマットは
刺激的な彼女との恋愛に夢中になり、やがて彼女の正体は世間で英雄扱いされる“Gガール”であることを知る。

しかし、あまりに肉食系で嫉妬深い彼女の不審な様子を恐怖に感じたマットは、
職場の同僚ハンナに恋していることに気づき、別れを“Gガール”に打ち明けると、
“Gガール”は激怒し、マットとハンナに容赦なく襲いかかるようになり、マットは新たな作戦を企てます。

クライマックスは“Gガール”が過去にフッた相手で、
“Gガール”を襲撃し続けるベッドラム教授も加わって、大騒動に発展するのですが、
ラストのあり方は、ある意味で多くの観客の予想を裏切る感じで、ありそうで無かったラストだと思う。

『キル・ビル』で久々にブレイクしたユマ・サーマンが“Gガール”に扮しているのですが、
特に映画の前半を観る限り、「よくまぁ・・・ユマ・サーマンはこの役を引き受けたなぁ」と感心させられるほど、
キワどいギャグがあって、彼女のハリウッド女優として(?)の根性を感じさせる好演と言っていいと思いますね。
相手役となるマットを演じたのは、ルーク・ウィルソンで彼はいつも通り、持ち味を活かしています。

この映画の大きな特徴は、“Gガール”が必ずしも正義に基づいた行動をするというわけではなく、
自分がマットをモノにしたいと思った以上、トンデモないパワーで前へ突き進むわけで、
例えマットが冴えないサラリーマンだったとは言え、どんなに多くの人々が迷惑したって、
彼女の感情の赴くままに行動する感じで、この猪突猛進な感じは肉食系の女子を想起させられます。

ある意味で羨ましい状況ではあるのですが(笑)、
おそらくマットにとっては悩み以上の何物でもなく、あまりにパワフルな“Gガール”の行動に
完全にマイってしまったようで、“Gガール”の性格をよく反映した展開にはなっていると思いますね。

この映画で良かったところは、アイバン・ライトマンが“Gガール”を徹底して、
肉食系女子であるかのように描き込んでおり、この徹底した描写が映画のカラーを定着させている点ですね。

やはり映画はこれぐらい徹底した方が良いですね。
良い意味で、映画の説得力は増すように思いますし、映画に一貫性があって好感が持てます。
また、尺の長さも丁度良いですね。内容が内容なだけに、これ以上、長くなると冗長に感じられたでしょう。
この辺の感覚は、さすがにアイバン・ライトマン、ベテランなだけあって優れた感覚をしっかり持っていますね。

あまり僕の記憶にも強く残っていた作品ではなかったのですが、
日本でもヒッソリと劇場公開が終わってしまったせいか、あまり注目度が高くはないのが残念ですね。
個人的にはもう少し、日本でもヒットしても良かったと思うし、知名度が高くても良いような気がします。

それにしてもユマ・サーマンもスクリーン・デビューしてから、本作の時点で20年近く経っているのですが、
それだけのキャリアを持ちながらも、30代半ばにして、未だにこういう役柄のオファーが来るとは凄いですね。
それだけルックスも若さを保てているということなので、彼女の美に対するこだわりの功績なのかもしれません。

そんな彼女が嫉妬に狂って、死にもの狂いで裏切ったマットに復讐するわけで、
その復讐の内容が、エスカレートして、ハンナと一緒にいる部屋に向かって生きた鮫を投げ込んで、
水のない部屋の中で、大型の人食いザメが襲いかかってくるなんて、CGを駆使した迫力のシーンがあって、
なんかCGの使い方を間違っているような気もしましたが(笑)、この迫力には驚かされましたね。

どうでもいい話しではありますが...
ユマ・サーマンって、私生活では俳優のイーサン・ホークと結婚して家庭を築いていましたが、
イーサン・ホークの浮気が原因で(?)、2人は離婚してしまうのですが、当時の彼らの家庭で問題が浮き彫りに
なったとき、ユマ・サーマンの怒りって、思わず「こんな感じだったのかなぁ...」と思うと、チョット恐怖(笑)。

ところで“Gガール”の“G”って何の略なんだろ?

(上映時間96分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 アイバン・ライトマン
製作 アーノン・ミルチャン
    ギャヴィン・ポローン
脚本 ドン・ペイン
撮影 ドン・バージェス
編集 ウェンディ・グリーン・ブリックモント
    シェルドン・カーン
音楽 テディ・カステルッチ
出演 ユマ・サーマン
    ルーク・ウィルソン
    アンナ・ファリス
    レイン・ウィルソン
    エディ・イザード
    ワンダ・サイクス
    マーク・コンスエロス